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33話 不明瞭な旅路

「そういえばソウマ、これ使ってください。わたすの忘れていました」


 ユフィナは色々と書き込まれた地図をわたしてきた。


「もしかしてこれって、魔王領の地図か?」


「はい、セレスタ様から預かっていたのですが、色々とあってすっかり忘れていました」


 地図には魔人たちの集落の情報が丁寧に書かれている。


 図書館にあった地図は結構前のものだったので、使い物にならなかったのだが、これは使えそうだ。


 地図を見比べると集落の位置が大きく変わっている。


 またセレスタの地図には集落の規模の大きさ、比較的安全なルート、野営に使えそうな場所まで記されている。


「すごいな! この地図、ありがとう」


「いえ、遅くなってごめんなさい」


 俺たちは地図の情報をもとに一番近くの集落に偵察に行ってみる。


 魔王領は緑であふれているため、隠れる場所も十分にある。


 昨日、すでに忍たちの家族は解放軍によって保護されたという情報が入っている。


 今日の早朝に軍事侵攻をすでに開始している。


 その後の情報は入ってきていない。


 成功したなら、魔人たちもこの機会を逃すはずがないので砦を攻めに行くと思うのだが……


 魔人たちは独自の情報網を持っているようで、世界情勢を把握している動きを見せる。


 どうやって情報を得ているのかは分からないが。


 ――俺たちは集落があるとされている場所に到着した。


「どうなのよ? 魔人はいる?」


 集落は塀に囲まれていた。


 魔力探知は魔人が相手だと、魔力探知をしたことがバレてしまうので、今は使えない。


 まず俺がスキルで階段を作り、集落の中を覗いたのだが……


「どうなってんだ? これは……」


「どうなんです? 魔人はいたんですか?」


「いや、それどころじゃ……ミトハちょっと見てみろ」


 俺は階段から降り、代わりにミトハが昇る。


「こ、これって……現代文明」


 この集落に魔人はいなかった。だが問題はそこじゃない。


 この集落には電気が通っている。街並みは日本と大して変わらない。


 街灯があり、おそらく水道も通っている。建物も見た感じ鉄骨。


 その後、俺とミトハは色々と説明するのだが、あんまり理解されない。


「そのデンキ?というものがすごいのは何となく分かりましたが、なにか問題があるのですか?」


 ユフィナはなにが問題なのかは分からない。


 俺もなんて説明していいのか分からないので、当然なのだが。


「つまり、技術レベルにこれだけの差があるのに今まで侵攻してきた魔人にはその片鱗(へんりん)すら感じなかった」


 エルナが言いたいことをまとめてくれた。


「そう! それだ! こんな技術力があるなら兵器でもなんでも作ればいいのに、魔人は木製の武器、使っても剣くらいだ」


 俺たちの作った銃より遥かに高威力のものだって作れるはずなんだ。


 なのに幹部ですらスキルだよりの戦闘方法だった。


 あの昔話が事実なら魔王は科学文明を知っている。


 ならなぜ、その知識を使って世界征服でも何でもしないんだ?


 魔王の目的は何なんだ?


「じゃあどうするんですか? 魔人がいないということは作戦は予定通り進んでるんですよね?」


「なにも変わらない、このまま城をめざす」


 結局こんなこと考えても仕方ない。魔王本人に聞くしか知る方法はない。


 街が発展していても、魔人自体が剣くらいしか使ってこないのなら、やることは変わらない。


 突然、拳銃をだしてくる可能性があることは頭に入れておくが。


 銃を生み出したことによって、この世界でもっとも先端の技術を持っている気になっていた。


 しかし、よく考えればアーティファクトだって魔王の技術なんだろう。


 魔王に対してはより慎重に動かなければならないだろう。


 だが目先の問題は魔王軍幹部だ。


 六人いるうち、現在二人倒して残り四人。


 四人のうち情報があるのは一人だけ。


 他の三人は能力はおろか名前、見た目すら情報がない。


 つまり、これまでの勇者は戦ったことすらないか、逃げる事すらできず殺されているということになる。


 唯一、名前と能力が分かっているのがソムニエル・アケディア。


 スキルは『無気力領域』。範囲内の自分以外の動きを遅くするというもの。


 時間を倍速にできる俺からしたらまったく怖くない相手である。


 ソムニエルに関してはこのメンバーなら負ける気がしない。


 残りの三人がどんな力を秘めているのか。


 もちろん倒せずに失敗した場合の戦略もすでに用意してきているが、それも殺されてしまっては意味がない。


 ――俺たちが魔王領に入って一週間がたった。


 いまだに情報の報告がないので作戦は上手くいっているのだろう。


 地図によると魔王城までは一か月ほどである。これは事前に入手していた地図の情報と一致。


 セレスタの地図はかなり正確で地図の通りに動いているのだが、今のところ何の問題も起こっていない。


 途中に何個か集落を発見したが、魔人の姿はほとんど見られなかった。


 どの集落も発展していたが、魔人がそれを使いこなせているようには見えなかった。


 普通に外で生活している。あの建物はなんのために、あるんだろうか。


 この一週間魔人にはまったく遭遇していないが、魔物は大量に生息しているので楽な道のりとは言えないのだが、想像していたより楽に進んでいる。


 このペースで行くと今日中には魔王領で最も大きな街に行けるだろう。


 もちろん滞在することはないが、街の偵察はする。


 その街の魔人が出払っていれば、俺たちの作戦は想定以上の効果を生み出していることになる。


 それから歩き続けること五時間。俺たちは街の付近に到着した。


 到着した瞬間、ミトハとユフィナが戦闘態勢に入った。


「ソウマ様、魔力探知されました。敵が来ます!」


 そうかそれで戦闘態勢に。


 すると急に影ができる。俺たちが上を見ると、巨大な岩が何個も飛んでくる。


 俺がスキルで岩の速度を落とす。最初は操作して形を変えようとしたのだが、魔法で生み出されたものだったため、形を変えることはできなかった。


 俺たちに当たりそうな岩をミトハがすべて切り払う。


 気づけば周りは岩だらけになり、生い茂っていた葉や木を押しつぶしていた。


 俺たちを囲むように岩は散らばり、リングが完成した。


「その赤い髪、勇者だな? やっと! やっと奪える」


 俺たちの前に一人の魔人が現れた。


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