表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
前世で仕えた竜神様に執着されているみたいです⁉︎  作者: 平本りこ
番外編 全てが終わり、始まった場所 ~けっこう昔。僕は生まれたてほやほやの火の神です~
25/25

5 そうして輪廻は巡る

 こうして僕は、高い峰に住まう火の神——高峰坐黒焔神たかみねにおわすくろほのかみという名をもらい、ヒネの子孫が暮らす里の守り神となった。


 竜神に命を救われたエイの子孫が代々、高峰坐黒焔神たかみねにおわすくろほのかみやしろを守り、僕を祀る役目を担っている。


 時が過ぎると、僕が里に姿を現したことは事実というよりも神話の一部として語り継がれるようになり、高峰坐黒焔神たかみねにおわすくろほのかみは親しみをもってみね様と呼びならわされるようになる。


 岩に覆われた小山の頂上。里を見下ろすことのできるこの場所に、その社はある。僕は今日も岩場に座して、里を見守っていた。


 神代かみよから時代が下るにつれて、神々の姿を目視できる人間は減少した。神としての力が強まれば、人の視界に入るように顕現することは容易になるだろうが、あいにく今の僕にはその力はない。


 高峰坐黒焔神たかみねにおわすくろほのかみの社に仕える神官たちも、僕の姿を一度や二度しか見たことがないようだ。しかも、あまりにも稀にしか見えないものだから、いずれの邂逅も「幻覚」「縁起の良い夢」ということにされてしまう。


 人々に必要とされて、僕は満たされていたけれど、消えない孤独を抱えてもいた。永劫の時を生きる火の神。それは永遠の独りを定められた存在であり……。


「あなたは……峰様ですか?」


 透き通るような声がした。振り返るとそこには、驚きに頬を強張らせた少女がいた。


「僕の姿が見えるのか」


 答えると彼女は、少しほっとしたように表情を緩め、微笑みながら僕の前に膝を突いた。


「ああ、やはり高峰坐黒焔神たかみねにおわすくろほのかみなのですね。私はヒナと申します。私の曾祖母は、あなた様により火事から救い出されました。その日から、我が家系はあなた様を祀り、宗家の末娘は代々巫女となる習わしとなりました。峰様、私は当代の巫女です。この身が朽ちるまで、お側でお仕えいたします」


 ふわり、と微風がヒナの髪を揺らした。どこかで嗅いだことのある、桜の花のような甘い香りがした。



<番外編 おわり>

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ