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ブラッド・フラワー  作者: 御稲荷 薫
ジョワブル王国/ペティット村編
67/67

67 虚無

「…全員、一致でいいな」

「…」


重力が通常の2倍も3倍ものしかかっているような空気の中、判決は言い渡された。


「主文。貴様のマスターの称号の剥奪、及びダンデリオンからの追放を命ず。世界の民を守るべき世界最高防衛機関の長が、国家の政治的機能を停止させ、ましてや王に手を上げるなど言語道断である」


アドマイラルの持つ判決文がクシャッと小さく音を立てた。

その手には怒りがこもっていた。


「とんだ恥をかかせてくれたものだ…デズモンド…!」

「その名を呼ぶなと…何度言えば分かる」


ユリの名を冠するマスター・"リリー"。彼女の裁判がたった今終わった。

だが、彼女をそう呼ぶ者はたかが知れている。もっと名の知れ渡った名があるからだ。


バン!!と強く机を叩きつけ、声を上げた者がいた。


「いずれこうなることは分かっていた…!アドマイラル…あんたにもあいつを受け入れた責任があることを分かってて欲しいものだが…?」

「責任は取る。しかし今は話を彼女から逸らしたくない。熱くならないでもらえるか?マスター・"ローズ"よ」

「…失敬」


クックックッ…!


「何が可笑しい!!!!」

「いやぁすまない。ここにはもう少し世話んなるつもりだったんだけどねぇ。この運命は変えられんようだ…」


アドマイラルの怒号を軽く跳ね除け、彼女は席を立った。


元マスター・"リリー"、またの名を Mrs.Who。


「あたしゃいつもの生活に戻させてもらうよ」


彼女が立ち去ろうとした瞬間、彼女の周りを他のマスター4人が包囲した。


「それを俺たちがみすみす逃すとでも…?」

「よせ」


そして彼女が不気味がられている一番の理由。


それは、この世の全ての人を見下すかのような、その嘲笑だ。


「ヒヒっ…!」

「見ろ、あれが噂の…」

「なんだ、まだほんのガキじゃねぇか」


煩い


「ただのガキじゃねぇぞ。国を一つ消しかけたバケモノだ」

「平気か?そのバケモノをうちに置いて」

「うち以外に行く当てなんてねぇよ」


黙って


「これから先兵士になるのか?」

「さぁ…だが俺はごめんだね。あのバケモノと一緒に仕事すんのは」

「俺もだ」

「同感」


静かにして…!


「おい、大丈夫か?」

「…頭が痛いです」

「もうすぐでアドマイラル殿の部屋に到着する。それまで我慢してくれ」


両手にサンフラワーの手枷を嵌めながら、あたしはこの機関で一番偉い人たちに裁かれに行く。


その道中で周りの視線が、心波が、あたしに向いているのが分かる。


ここがあたしの憧れてたダンデリオンであることに変わりない。


でも誰一人、あたしを歓迎しようとしてる人なんてここにはいない。


エレベーターに乗せられ、最上階に上った。


長い廊下を歩くと、目の前に大きなドアが立ちはだかった。


鈍い音を立てながら、付き添いの兵士がドアを3回叩く。


「アドマイラル殿!被告人が到着しました!」

「…入れ」


内側から声が聞こえると、重い扉と共に扉が開かれた。


大きな部屋だ。中は薄暗く、何人か人が座っているが、顔はよく見えない。


あたしは部屋の真ん中に置かれている椅子に座らされ、腕を背もたれの後ろで組まされた。


一緒に来た兵士2人に、あたしの向かいに立つ男は「下がれ」と命じた。


兵士が部屋から去ると、男は「では、始めようか」と声を上げた。


「私の名はグンシ。この世界最高防衛機関 ダンデリオンの総帥だ。君の名を教えてもらってもいいかい?」

「………アレン」

「アレン。君はまだ幼い。このような形で扱うのは非常に心が痛むが、国家が絡んだ事件だ。もう少し我慢してくれるかな」


あたしは何も答えなかった。もう、どうでもいい。


「簡潔に話す。先程、私と君の横側にいるマスター5人、そして特別にムーランを加えた7人で君の処罰について議論した。我々の私見として、君は力の使い方を学ぶべく、ジェネラルの監視下で5年間、ここで働いてもらうことで合致した」


すると、あたしの左側に座る男が「ハッ」と愚痴をこぼした。


「随分と甘い考えだ。国を滅ぼしかけた罪人がなんの罰も受けないなんてな」

「口を慎め馬鹿者が。今更異論か?」

「いや。我々の私見にこいつが甘えないように俺の感想を述べたまでです」

「皮肉屋ね。私そういう男大っ嫌い」

「あ゛!?」


左右で罵声が飛び交う中、バン!!とグンシが机を叩く音で部屋は再び沈黙に還った。


「静粛に」

「…申し訳ございません」


一息ついて、グンシは再びあたしに話しかけた。


「これを踏まえていくつか質問をさせてくれ。君に国家反逆の意思はあったのか?」

「……友達を助けようとしただけです」

「君はいつからその力を手に入れた?」

「……覚えてません」

「"記憶の忘却"…か。契約時の内容を一切忘れることで得る能力を強化するという」

「それがこの子の払った代償ってことですか?」

「いや、おそらくそれだけではない。だが内容を忘れている以上、本人がそれを思い出すこともないだろう」


これで証明されたな、とグンシがまとめる。


「彼女に国家反逆の意思はなく、幼さが故に起きてしまった悲劇だった。よって先程言い渡した私見を主文とし、5年間の労働を正式な判決とす。裁判は以上だ」


グンシは手をパンパン!と2度鳴らすと、あたしをここに連れてきた兵士が再び部屋の中に入った。後ろに組まされていたあたしの腕を解き始める。

久々に両手が自由になった。


「彼女を宿舎へ案内してやれ」

「ハッ!」


(ここで…5年……)


去り際、こんな会話が聞こえた。


「それより、奴はまだ見つからないのか」

「ええ、まだ捜索中とのことで」

「奴はまだここにいる。見つけ出し、必ず捕えるのだ…!」


・・・・


兵士たちに連れられ、あたしは少し外れた場所にあるおんぼろの小屋に案内された。


扉を開けると中には掃除道具やらが入っており、横に布団が一枚だけ敷かれていた。


「ここが今日からお前の家だ。そして監視用の"パロット"を一羽ここに配置する。こいつは喋る賢いオウムだからな、お前が何かしでかそうとすれば直ちに俺たちに報告する」


兵士さんがそう言うと、ピエッ!とパロットが両翼を広げて鳴いた。


「てことで明日から雑務だからな。ジェネラル殿が明朝お前を迎えに来られる。それまで備えておくんだな」

「…」

「分かったらなら返事をしろ!!!」


あたしは兵士に蹴り飛ばされた。

でも不思議と痛みを感じなかった。


「…どうでもいい………」

「あ゛ぁ!?」


今のあたしは、まさに「虚無」そのものだった。

多分、今蹴られているこの足が剣だったとしても何も感じずに死ねる自信がある。


(あぁ、あたし…………)


死んだ方がいいのかな


「楽しいよなぁ…人を弄ぶ時ほど楽しいことはない(‼︎)」

「あ゛ん?誰だ、一体何を見………」


彼女を目の当たりにして、兵士たちは絶句した。


金色が混じった腰まである長い白髪。

全てを凍らすかのような釣り上がった目。


兵士は声を絞り出すのが精一杯だった。


「おっ………お前は………!」

「話をしよう。できれば、穏便に済ませたいところだが…(‼︎)」

投稿頻度は落ちますが、2023年度もブラフラをよろしくお願いいたします。

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