エピローグ
勇者への処遇が決定して、厄介事も残りは僅かなものとなりました。
小心者の物語、最後までどうぞお楽しみくださいませ。
「さて、あとは洗脳魔法を受けたルガンダさんだな」
「あ、勇者に解除させるんじゃなかったの? 魔法を禁じちゃったけど」
「強制魔法でやらせたらいけるかもしれないけど、魔法を使えるようにするのはリスクが高いよ。普通ならどうにもできなくても、チートがあったらどうなるか分からないんだから」
「あ~・・確かにね・・・・」
「・・・・通常の魔法なら、効果が永続するという事はありえません。時間をおけば、洗脳魔法も解除されるんじゃないでしょうか?」
呆れ気味の声を上げるジェラルリードに、対応策を口にするリア。
「確かに。かけ直してるトコ見た事あるし、それで大丈夫なんじゃないかしら?」
「おいおい。それって、強制魔法も同じなんじゃないのか?」
「強制魔法は例外。契約系の魔法は魔法をかけられた方が死ぬまで継続するから」
「はい。奴隷契約の魔法が時間の経過では解除されないのと同じですよ。それだけに難易度が凄く高いんです」
俺の焦った言葉に、あっさりと答えてくれるジェラルリードとリア。
なるほど。確かに、奴隷契約の魔法が時間経過で解除されるんなら奴隷は皆解放されるわな。で、強制魔法は奴隷契約の魔法よりも細かい調整ができるだけに、使い手がいないくらいに難易度が高い、と。
「なるほどな。じゃ、明日の朝くらいまで一旦は様子見だな」
「勇者にあんたを殺せって命令受けてる子達は?」
「勇者に命令を撤回させるよ。魔法も使えない状況で歯向かえる気力も根性もないだろ」
「ま、それもそうね。完全にビビってるでしょうし」
「ああ。さて、それじゃ勇者を起こすか」
俺の言葉に、全員がセレア達とルーゲンブさん達が首肯するのを確認して、勇者を眠りの魔法から解放する。
「う・・・ひっ!? ひぃぃぃぃっ!?」
目を覚まして、俺の姿を見るなり這いずって部屋の隅まで逃げる勇者。
「さて、勇者くんよ? 自分の置かれた状況を教えておいてやる」
「や、やめて・・こ、殺さないで・・・・」
頭を抱えてブルブルと震える勇者。
完全に心が折れとるなぁ。まぁ、同情心はまったく湧いてこないけど。
「1つ。お前はもう魔法は使えない。使おうとすれば、初回は激痛だけで済むようにはしておいてやったけど、2回目には死ぬ。2つ。お前は今後、奴隷として生きていけ。それ以外の生活を望めば死ぬ」
「え・・・・」
俺の言葉に、愕然とした表情になる勇者。
「嘘だと思うんなら、魔法を使って何とかしてみろ。魔法さえ先に発動させりゃ、ここにいる全員を消し炭にするくらいわけないだろ?」
「う・・・」
「あと、対人の暴力は一切許可しない。人種族全てが対象だ。お前が奴隷になるまで、この人達の所有権はお前にあるけど、これまでみたいな扱いをしたら即死だと思え」
「そっ、そんな・・・」
「理解したら、俺を殺せって命令を取り消せ」
「く・・・な、舐めてんじゃギャァァァァァッ!?」
言葉の途中でいきなり絶叫を上げて転げ回る勇者。
やっぱり魔法を使おうとしたな。案の定だ。
「ウ・・・アァ・・・」
「ハッタリだとでも思ったか? バカか、お前。実力で圧倒できるのに、なんでハッタリなんぞかます必要があるんだ?」
「ァグゥ・・・」
「これからお前はリスタニカに行って、身売りをしろ。それで晴れて奴隷生活の始まりだ。リスタニカ以外で身売りをしたり、身売りをする為の行動以外の事をやっても死亡だ。奴隷に落ちるのが嫌だってのなら、好きに死んでくれ。そのくらいの自由は残ってるぞ」
「ぐぅ・・う、うぅ・・・うわぁあぁあぁぁぁぁっっ!? なっ、なんで!? せめて、好き勝手したっていいじゃねぇかっ!? こんないきなり見も知らないトコに連れてこられて、勇者だとか言われて、魔族を滅ぼせとか、それが使命だとか押し付けられてっ!! それで、なんで俺がこんな目に遭わなきゃなんねぇんだよぉぉぉぉっ!!」
泣きじゃくり地面を叩きつけながら言う勇者。
「はぁ? 何を寝言をほざいてやがる。これがこの世界のルールだろ? お前が好き勝手やっても許されてたのは、お前がこの世界のルールに従ったからだ。それが自分にとって不都合な状況になったからっていきなり被害者面かよ?」
「俺だってこんな世界に来たくて来たんじゃねぇっ!!」
「ざけんなっ!!!」
勇者に詰めより、髪を鷲掴みにして顔を上げさせる。
「よく見てみろ!! テメェが虐げてきた人を!! どんな目に遭わせた!? どんな屈辱を味わわせた!? それを進んでやってきたのはテメェ自身だろうがっ!!」
「うぐ・・・」
「クソガキがっ!!」
床に叩き付けるように勇者を離して立ち上がる。
「・・・・・お前、今すぐこの人達を解放しろ」
「「「「え!?」」」」
女性エルフ達が驚きの声を上げる。
「考えてみりゃ、奴隷のままにしとく必要なんかない」
「ちょ、ちょっと。いきなり解放されても、この子達に行き場所なんてあるの?」
「人間族は奴隷に一切の所有権を認めておらんのだろう? 無一文ではその後が困るのではないか?」
「金ならある。まだ100万エニー以上の余裕はあるんだ。ここから離れる時が危ないってのなら、治安のいいトコまで俺達についてくりゃいい。あんた達の故郷は?」
「え、あ・・・私達は皆、ここから南の方の森の集落が故郷になります」
「なんならそこまで連れていってやるよ」
「よろしいのですか? ご主人様」
「いい。ホントはそこまで責任を負うつもりはなかったけど、このクソガキの態度で考えが変わった」
「まっ、待ってくれよっ!? 魔法が使えないのに、奴隷もいなけりゃ俺はどうやって」
「知るか。せいぜいくたばらないように頑張るんだな」
「ふっ、ふざけッ」
俺が睨み付けられて、言葉を途切れさせる勇者。
どこまでもふざけたクソガキだ。自分の行動を省みる事もなけりゃ、自分が悪いとも欠片も思っちゃいない。自分だけが可愛いクソッタレ野郎だ。せいぜい苦しんで後悔すればいい。
「あんた達はどうしたい? 奴隷から解放されるのが嫌だってなら、そこは強制できないけど」
女性エルフたちに向き直って問いかけると、眠っている2人以外の6人は揃って首を振る。
「か、解放は、夢でした。本当に、ほんと・・うに・・・・」
「・・・もう・・・耐えなくて・・・いいん、ですか?・・・私達、もう・・・・」
涙を溢れさせて解放を望む言葉を紡ぐ女性エルフ達。
「なんとなく、タカシ様はこうするんじゃないかなって思ってました」
「そうですね。ご主人様ですから」
「いきなりおもいきりがよくなるもんね~、主さまは」
呆れ半分、嬉しさ半分といった感じに言うリアと、至極当然の成り行きと言わんばかりに頷きながら言うセレアとシャーン。
「ま、このクソガキの側に置いとくよりかはずっと納得できるわ。ホントに、人生舐め過ぎじゃないのかしら、このクソガキは」
勇者に軽蔑の視線を投げ掛けながら言うジェラルリードに、首肯するシャーネ。
「ありがと。また俺の我儘に付き合わせちまうな」
「いいえ。ご主人様のお気持ちは理解しているつもりですから」
柔らかい笑顔を浮かべて言うセレアと、笑顔で頷くリア達。
「ありがとな。さて、彼女達を解放しろ。拒否するんなら、今度は地獄を見せてやるぞ。≪雷撃≫」
勇者の頭の脇に雷撃を撃ってみせると、ビクッと体を震わせて俺を見上げてくる勇者。
「まぁ、拒否して死んでくれてもお前からは解放できるし、その後に俺が買い取って解放しても結果は変わらないんだ。抵抗したいんなら好きにしろ」
「うぐ・・・悪魔か、テメェ・・・・・」
「外道にどう思われようが構わねぇよ。3つ数え終わるまでに解放しろ。1つ」
「う・・・」
「2つ。み」
「かっ、解放するっ!! 全員、もう自由にするっ!!」
勇者の言葉が言い切られると同時に、勇者から女性エルフ達それぞれに光の線が現れたと思ったら、真ん中でそれが切れて切れ端が宙に消えていった。
「へぇ。こんな風になるのか・・・」
その光景に見惚れていると、セレアが俺に駆け寄り、抱きついてくる。
「っとと。セレア?」
「私は絶対に解放なんてされたくありません。死ぬまでセレアのご主人様でいてください」
「え? あぁ、心配させてごめん」
優しくセレアを抱き締め返しながら言う。
「単純にさっきの光景に見入ってただけだよ。前に約束したろ? 死ぬまでずっと一緒だ」
「はいっ!!」
嬉しそうな顔で俺を抱き締める腕に力を籠めるセレア。
どうやら、俺が見入ってたのを解放を考えてるって誤解させたらしい。こういう所にはセレアは弱気なんだよなぁ。俺が死ぬ程に惚れ込んでるのには自信を持ってほしいもんなんだけど。
「もっと自信持ってくれよ。俺はセレアを手放したりできないって。もうセレア無しじゃ生きてけないくらいに、セレアに惚れ込んでるんだからさ」
「は、ははははっ、はいっ!!」
俺の言葉に、ボッと顔を真っ赤にして耳をピンッと立てた後にぺたんと完全に垂れさせながら返事をするセレア。
うわぁ・・・ホントにトコトン可っ愛いなぁっ、もうっ! 相変わらずいい匂いだし、可愛さは留まるトコを知らないし、こいつはいつか絶対に俺を萌え死にさせるぞっ!!
「・・・・本当に、どうやったらセレアさんみたいにタカシ様をデレデレにできるんでしょうか・・・一緒にいる時間なら私が2番目に長いのに、セレアさんには本気で敵う気がしないですよぅ・・・」
「これからよ、これからっ! って言うか、あんたにだってタカシは充分にデレデレじゃないのよ」
「うん。リアさんにも敵う気がしないもん」
「よねぇ・・・あたしなんか、大体が出遅れちゃってるし・・・」
「そうですかぁ? シャーネさんがタカシ様に甘えてる時はセレアさんの時並みにタカシ様の顔、緩んでると思いますけど」
「こ、こらこら。変なトコで張り合うんじゃない。死ぬ程照れくさいっての」
「・・・あとでいっぱい構ってもらえますか?」
「う、うんうん。満足してくれるまでずっとな」
「主さま、あたしもぉ」
「あたしもよっ!」
「あっ、あたしも構ってほしいですっ!!」
「おう。勿論だ」
「あ、あの、その・・・ご主人様。わ、私もたくさん甘えさせていただきたい、です」
「うん。さっさと全部片付けて、みんなでゆっくりしような」
真っ赤な顔のままで照れながらも俺を見上げて言うセレアに、頭を撫でながら答える。
いやもう、ホントにいつか絶対に萌え死にする。俺なんぞにここまでこんな可愛い事を言ってくれるとか、絶対に元の世界じゃ有り得なかったもんなぁ。マジでここに召喚されてきてよかった!! 最初に放逐されたのにも感謝だっ! 復讐は絶対にするけどなっ!!
「なんで・・・・なんでこいつだけが・・・・なんで・・・・くそぉぉぉぉっ!!」
吠えて、そのまま外へ走り去っていく勇者。
うむ。思わんトコで差を見せつける事になったな。自分の奴隷は解放される事に喜びの涙まで流すのに、セレア達はこんなにまで俺と一緒にいる事を望んでくれてる。どんなバカでも、この差は無視できんわな。
「え、と・・・あの・・・・」
青髪女性エルフが遠慮がちに声を上げる。
「ん? どうかした?」
「い、いえ、その・・・・」
「あ、解放しようとは考えてくださってた事はありますよ? でも、私達がお願いして、ずっと側に置いてもらってるんです」
疑問を察したリアが、質問の前に答えを口にする。
まぁ、自分達を解放しようって奴が、その奴隷を解放してないってのは疑問ではあるわな。今じゃ、セレア達に限っては解放した方が幸せになれるとは考えてないけど。ここまで想われててそんな事を考えるのは、ある意味じゃこいつらの気持ちに対する裏切りだ。
「やっぱり、主様は解放しようって考えてた事あったんですね」
「ん、まぁな。奴隷からの解放が嫌なわけないって思ってたし」
「あたしも絶対にヤダですよぉ? 主さまと一緒にいられなくなっちゃうもん」
「私達の事も解放しようなんて考えてませんよね? 絶対にイヤですよ?」
「分かってるよ。さすがにそこまで鈍感じゃない。まぁ、俺が先に死んだら解放するけど」
「「え?」」
「俺が死んだ後に、他の誰かの奴隷になるなんて絶対に嫌だからな。リアは確実に俺よりも長生きするんだし」
「あ、そっか」
「・・・・いや、待てよ? なぁ、ジェラルリード?」
「はい?」
「不老不死の法ってジェラルリードの時代に考えられたんだよな? 他に、寿命を伸ばす方法とかないのか?」
「へ? いやまぁ、あったけど。あたしの時代には300年生きてた魔法使いとかもいたし」
「それ、覚えてる?」
「ま、まさか、寿命伸ばす気なの!? 存在変換の魔法は準備も大変なのよ!? 儀式魔法だから、いろんな素材も集めなきゃなんないし!!」
「それなら、誰にも寂しい想いをさせなくて済みそうだろ?」
「タカシ様・・・」
「・・・うわぁ・・・・この子、マジだわ・・・まぁ、あんたなら魔法を失敗する事もないでしょうけど。あの禁呪ですら成功させてるんだし」
涙目になって俺を見つめるリアと、脱力気味に頬を緩ませながら言うジェラルリード。
「危ない方法じゃない、ですよね?」
目に貯まった涙を拭いながら、心配そうな顔で言うリア。
「大丈夫でしょ。四属性複合魔法を普通に扱えてるんだし、複合魔法を使えない人間族が使ってた儀式魔法だしね」
「よしっ。んじゃ、この人達を送ってった後はその魔法に必要な物探すとするか」
「「「「はいっ」」」」「オッケー」
セレア達の返事の声が重なる。
「あ。ジェラルリードさん」
「ん? 何?」
「その魔法は他の人に使うと難易度が上がって危険になったりはしますか?」
「まぁ、多少は難易度は上がるでしょうけど、危険ってレベルにはならないわよ。何回か術者本人以外にも使ってるトコも見た事あるし。だから、寿命伸ばすんなら、当然あたしのも伸ばすわよ?」
「へ?」
「当然でしょうが。今のままだったら、リアが独占できるようになっちゃうんだから」
「私もお願いします。ご主人様」
「あたしもぉ」
「あたしもお願いしますっ」
「ん、んん。いいのか? 俺と違って、身内がどんどん先に死んでくトコを見なきゃなんなくなるんだぞ?」
「私にはもう家族はいません。両親は随分前に亡くなっていますから。それに、ご主人様よりも先には死にたくありません」
「え?」
「ご主人様にもお寂しい想いをしていただきたくありませんから。私は死ぬのもご主人様と一緒がいいです」
「うんです。主さまがいなくなるのも、主さまを置いて死んじゃうのもヤです」
「・・・そっか。うん、分かった」
「よ、良いのか? 存在変換の魔法は神の意向に背く禁忌の技の1つなのだぞ? タカシ殿は異世界の者だから抵抗はないのかもしれんが」
「神様の意向よりも、主様との時間の方が大切です。別に罰が下されるわけでもありませんし」
「あたしに限っては今更な話だしね。人間族から真祖吸血鬼に、それからまた人間族に戻ってきてるし」
シャーネとジェラルリードの言葉に頷くセレアとシャーン。そして、俺に飛びついてくるリア。
「ありがとうございます、タカシ様・・・・私なんかの為に・・・」
「バカ言え。俺の為だ。俺がリアをずっと独占し続ける為なんだからな。俺が死んだ後とはいえ、リアが他の奴とくっつくトコなんて想像もしたくねぇし、かと言ってずっと1人でいろなんて言えないし言いたくないし。コレが最善の方法だろ?」
「はっ、はははは、はいっ!! タカシ様にずっとずっと独占していてほしいですっ!!!!」
耳まで真っ赤になりながら、俺をぎゅっと抱き締めて言うリア。
あれ? もしかして、俺、今、なんかスッゲェ恥ずかしい事言いませんでしたか? か、顔が熱くなってきてんですけど。いやまぁ、さっきからずっとそうなんですが。
それから、ルーゲンブさん達にはルガンダさんの監視をお願いする為に、女性エルフ達は故郷までの道程を俺達と同行する為に、この館で一緒に一夜を明かす事になった。
無論、寝る場所はバラバラだ。俺達のイチャイチャタイムを邪魔されるのは御免蒙る。意外に早く勇者騒動が片付いたとはいえ、だからこそ何の憂いもなく存分にイチャつけるのだ。お邪魔虫はマジでいらない。風呂の時間も俺達が1番長くなるからと、他の人達に先に入ってもらった。これで風呂でもゆっくりイチャイチャできるってもんだ。
で、露天風呂で開戦。2回戦目の後、湯船に浸かりながらセレアとリアはそれぞれ腕を取って、ジェラルリードは膝の上に座って、シャーネとシャーンは後ろから抱きついてきての密着状態で小休止。
幸せ絶頂の瞬間ってのがどんどん増えてる気がする。いや、気のせいじゃなくて、確実に。
「それにしてもさぁ」
「ん?」
「国王と大臣への復讐がドンドン先延ばしになっていってない? あの子達を送って、儀式魔法の素材集めしてってやってたら、向こうは忘れちゃう気がするんだけど」
「忘れてもらわないと困るぞ」
「は?」
俺の言葉に、キョトンとするセレア達。
「そもそも、王都を出たのだって俺が一気に昇級しちまったから、王宮の連中に万一にも目を付けられないようにする為だったんだし」
「でも、タカシ様の事を完全に忘れられてしまっていいんですか? 後悔も反省もさせられないかと思うんですけど・・・」
「後悔も反省もしてほしくない。嫌がらせとはいえ、国のトップにやるとなったら反撃が怖すぎるからな。意味不明にイラつかされて、最終的に禿げてくれりゃそれで充分だ」
「そういえば、実行する人が特定できないようなアイテムがいいと仰っていましたよね」
「あ、そういえば・・・え? じゃあ、あんた、マジで単なる嫌がらせだけでいーわけ?」
「? そうだぞ? 事が大きくなったら後が怖いし」
「うわぁ・・・勇者すら1人で圧倒するくらいに強くて、真祖吸血鬼よりも魔法に長けてるってメチャクチャなくせして弱気なのは全然変わってないし・・・」
「あのなぁ・・・いくら個人として強くても、集団を相手にしたら分が悪いに決まってるだろ? 前にも言ったけど、平和平穏、無事無難。目立たず静かにひっそりとが俺の正義なんだよ」
「ホンットに変わんないわねぇ・・・」
呆れたように言うジェラルリード。でも、下から俺を見上げる顔は嬉しそうに見える。
「ご主人様は確固たるご自分をお持ちですから、大きく変わられる事はないかと思いますよ。初めてお会いした頃からずっとお優しくて、大切な方の為なら危険を犯される事も厭われず、どなたが相手であっても控え目で謙虚で、それでいて懐も大きい素敵なご主人様ですから」
誇らしげに言うセレア。
「あ、でも」
「ん?」
言葉を続けるセレアに顔を向けると、唇を塞がれた。
「初めてお会いした頃よりも、もっとお優しくなってらっしゃると思います」
心底幸せそうな笑顔で言うセレアに、顔がおもいきり熱くなる。
「ん、んん。なんて言うか、え~・・・嬉しい、よ」
「はいっ」
ぎゅっと俺の腕を抱き締めて体を擦り寄せてくるセレア。耳がぺたんと垂れきって、メチャクチャ嬉しそうに頬を緩ませてくれている。
だ、ダメだ。のぼせる・・・マジで可愛気が日増しどころが、時間増しで増えてってんじゃないのか? 頭がショートして何も気の利いたセリフが出てこねぇ・・・・我ながら情けない・・・
しかし、録に気の利いたセリフも返してやれないのに、何故にこんなに嬉しそうにしてくれるんだろ?俺としては、ちょっとは気の利いたセリフの1つくらい返してやれるようになりたいもんなのになぁ。
そんな頭がショートしてるトコに、今度はリアが唇を塞いできた。
「タカシ様は変わられませんけど、私は物凄く我儘になっちゃってます」
「ふぇ?」
可愛く膨れるリアに、思わず限りなく間の抜けた声が出てしまう。
「もっともっとタカシ様に構ってほしいです。これからもずっと、一生タカシ様と一緒にいて、いつか、その・・・タ、タカシ様の子どもが欲しい、なんて、思ってます」
真っ赤になりながら言うリアに、さらに全身が熱くなってしまう。
「あぁ~っ! それ、あたしが主さまに最初に言ったのにぃっ」
「わっ、私もごっ、ご主人様との、こっ、子どもが欲しいですっ」
「あのっ、あっ、あたしもですよ!?」
「ちょっ!? あんた達、どさくさにズルくない!? そんなの、あたしだって欲しいに決まってんじゃないの!!」
「お、おう。うん。その、なんだ・・・俺も、欲しい、よ」
俺の何とも気の利かない言葉に、セレア達は一斉に俺をおもいきり抱き締めてきて、小休止は終了。再度の開戦となった。
いや、もうホントに幸せって言葉が生温く感じられるくらいに幸せ過ぎるんですが。
ホントにこの世界に来て良かったっ!! 国王と大臣への復讐が旅の最大の目標だったけど、セレア達を幸せにするのが人生で最大最終の目標だなっ!!
ん? 初代の勇者に比べて目標のスケールが小さ過ぎやしないかって? いいんだよ。世界征服なんか性に合わないし、できる気もしない。そもそも、俺は勇者じゃなかったんだしなっ! チキンでヘタレ小市民な俺には充分過ぎるくらいにデッカイ目標だぞ!! 何せ、こんないい女を幸せにしたいんだからなっ!!
小心者の物語は今回を持って終幕でございます。
処女作という事で、何かと手探りだった為、いろいろと至らない部分もあったかと思いますが、最後までお読みいただいた皆様にはただただ感謝です。
また、感想をくださった方々、ご指摘をくださった方々にはさらに感謝です。
未熟を自覚してはおりますが、いただいた感想・ご指摘を生かして、また投稿したいと思っております。その時には、読者の皆々様にはまたお付き合いいただければ幸いです。
最後までお付き合いいただきまして、本当にありがとうございます。
読者の皆様の健康とご多幸を、そして次回作での再会を願って、本作の後書きの結びとさせていただきます。




