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魔族との邂逅

リブラレールへと出発した主人公一行は、幾度となく話題には出ていた魔族と邂逅致します。しかし、その出会いは思わぬ形でのものとなるようでございます。


第四章 第一部<魔族との邂逅>、どうぞ最後までお楽しみにくださいませ。

翌早朝、俺達はルウィーナスをリブラレールへと向かって出発。

リアが言うには、リブラレールは魔族との小競り合いが絶えない地域な為に、街の間の距離が他の街と比べるとかなり長く、7日はかかるとの事。そんな紛争地帯だから、王都周辺並みにモンスターの駆除はされていて、街に近付くにつれてモンスターとの遭遇はほぼ無くなるらしい。小競り合いをするにもモンスターは邪魔だという事なんだろう。でも、その代わりに魔族のゲリラ部隊に襲われる事があるとか。


ゲリラとかマジで勘弁してほしい。人を殺さないといけないような機会はなかったから、これまではそれだけは避けてこれたけど、いきなり襲われたら殺るしかなくなりそうで本気で嫌だ。何せ、相手は殺す気でくるんだろうし、やたらと強いという噂の魔族なのだから。


「ご主人様?」

声を掛けられて我に返ると、セレアが心配そうな顔で俺を見上げている。

「何かご不安がおありでしょうか?」

「あ、いや。ちょっと考え事をな。」

「らしくないくらいに難しい顔しちゃって・・・何を考えてたのよ?」

「ん・・・ホラ、さっき魔族が襲ってくるかも~って話してたろ?やっぱり殺さなきゃなんないような場面も出てくるんだろうなぁって考えると憂鬱でさ・・・」

「あ・・・そうですね・・・ご主人様は今までモンスター以外との戦闘は・・・」

「なるほど・・・魔族も分類しちゃえば人種族だもんね。」

「ああ。俺のいた世界じゃ、人殺しは最大の禁忌(タブー)の1つだ。かと言って、そんな平和ボケした事もいってられなくなるかもしれないだろ?魔族は種族として強いってんだから。」

「大丈夫だと思うですよ?」

「へ?」

あっけらかんとして言うシャーンの言葉に、思わず間の抜けた声をあげてしまう。対して、セレア達は首肯していたりする。

「そうですね。いくら魔族が相手とはいえ、ご主人様でしたら殺さずに無力化するのは然程難しくはないかと思われます。それに、余程の数と出くわさない限りには私達だけでも充分に対処できそうな気がします。」

「はい。タカシ様と一緒にいるようになってから、不思議と以前よりも強くなっているように感じられますから。」

「うん。羽根弾丸(フェザーブレッド)の威力は確実に上がってるから、それは間違いないと思う。なんでかは分かんないけど。」

「そなの?タカシの為に張り切ってるとかだけじゃなくて?」

「はい。私の魔力操作力は確実に上がっています。タカシ様と出会う前よりも、街道での連戦後の余力がありますから。」

「私も、以前よりも素早く動けています。ご主人様とお会いする前は、どう頑張ってもモンスターから見失われるような事はできませんでしたから。」

ジェラルリードの問いに、セレアとリアはどこか誇らしげに答える。


そう言えば、巨大蟻(ジャイアントアント)の巣の時に、セレアもリアもそんな事を言ってた気がするけど、あれってマジだったのか。てっきり意気込みの問題かとばっかり思ってたけど、もしかして仲間に対して発動するようなチート能力でもあるんだろうか?ピオ○ムとかバイキ○トみたいな感じで。


「ふぅん・・・・もしかして、それってタカシが側にいないといつも通りに戻ってたりする?」

「分かんないです。(あるじ)さまからあんまり離れたトコで戦った事ないから。」

「そうですね。ご主人様のお側から離れる事はありませんので。」

「ま、そりゃそっか。タカシの<ちーと>が働いてるのかなぁとか思ったんだけど。検証のしようもないか。」

「そうだな。どれくらいの距離を取らなきゃなんないのかも分からないし、検証の為に危険を犯すのは馬鹿らしいしな。」

俺は言いながら肩をすくめる。

「はい。ご主人様のお側を離れるなんて、ご主人様が心配でほんの僅かな時間でも耐えられません。」

「タカシ様がお強いのは分かっていますけど、それでも心配で不安で堪らなくなりそうですし、何より寂しくて死んじゃいます。」

至極真剣な顔で言うセレアとリアの言葉に、首肯するシャーネとシャーン。

「あ、あんた達ねぇ・・・タカシの言ってる<危険>ってのは、あんた達の身の危険の事を言ってんのよ?」

俺の気持ちを代弁してくれるジェラルリード。


あくまで俺の心配ですか?ちょっとは自分の身の安全を考えてほしいんだけどなぁ。


「勿論、それは分かっています。しかし、検証するとなれば、私達が単独で行うわけにもいきません。それは余りにも危険が大き過ぎますから。」

「でも、そうなると、今度はタカシ様のお側の戦力が下がります。そうなると、やっぱり危険じゃないですか。」

「そうね。(あるじ)様との約束をちゃんと守る為にはあたし達の戦力は削れないけど、そうなると(あるじ)様の方が危なくなるもんね。」

「かと言って、私達の方の戦力を削る事をご主人様がお許しになるとも思えません。ですから、ご主人様の身が心配になる状況になると思われます。」

「あぁ・・・なるほどねぇ・・・・確かに、検証するってなったらそういう風にしかならないだろうし、そうなったら確かにタカシの身が心配にはなるか。」

納得した様子で頷くジェラルリード。


うわぁ・・・完璧に俺の言動パターン把握された上で心配されてたよ・・・・しかしまぁ、ちゃんと自分達の身の安全を考えてくれてるんなら、無駄に心配はしなくてもいいか。





それから、リブラレールへと向かう俺達の道程は順調そのもの。モンスターは大量に湧いて出てくるけど、ジェラルリードちゃんとリアの遠隔魔法で大概は遭遇前に殲滅されるし、遭遇してもセレアやシャーネとシャーンが瞬殺。


お、俺の出番がマジで欠片もないぞ・・・・いやでも、オーガとかの本来なら強敵な筈のモンスターまで瞬殺してるんだから、何かのチートが発動してるって考えた方が自然な気がする。まぁ、それなら、間接的にとはいえ、一応俺も働いてる事にはなるよな。うん。そう考えとこう。全く自覚無しな分、退屈に感じてしまう気がするけど、それは気のせいだって事で。





順調な旅路が6日続き、予定では明日にはリブラレールという所で、野宿の準備をして皆で夕食にする。

「もうすぐリブラレールだな。」

「はいっ。やっと正式にタカシ様のものになれますっ。」

表情を輝かせて言いながら、肩を寄せるリア。

「うわ。嬉しそうねぇ。別に何にも変わりゃしないでしょうに。」

「まぁ、俺達の関係としてはな。」

「でも、やっぱり気分は違ってきますよぉ。私だけずっと正式契約ができていなかったんですから。」

「シャーンが(あるじ)様に告白しちゃった時のリアさん、メチャクチャ怖かったもんねぇ・・・」

「うん。怖かった。」

「あはは。あたしも思わず逃げちゃったわよ。あの時はまだ真祖吸血鬼(ハイ・デイライトウォーカー)だったってのにね?」

「し、仕方ないじゃないですかぁ。シャーネさん達がタカシ様に好意を持ってるのは察しが付いてましたけど、2番奴隷だけは絶対に譲れないんですから。」

シャーネ達の言葉を茶化すジェラルリードちゃんに、頬を赤くして言うリア。

「でも、それだけ順番にこだわってるんなら、1番奴隷に成り代わりたいとかって考えたりしないの?リアもだけど、シャーネとシャーンも。」

「「「無理」です。」」

リア、シャーネ、シャーンの声が重なる。

「そ、即答ね・・・」

「勿論です。これだけは誰が相手であっても、お譲りする事はできません。」

サラリと言うセレア。

「まぁ、セレアからしたらそうだろうけど。」

「悔しいですけど、全く敵う気がしません。タカシ様はセレアさんにはトコトン弱いですし、セレアさんもタカシ様への理解が深すぎます。」

「うん。心でも読めるのかってくらいに、(あるじ)様がやろうとしてる事の先取りしたり、気を利かせたりしてるし。しかも、それがずっとだし。あたしなんか、全身全霊で注意を払っててやっと対抗できるかなってくらいなのに。」

「それに、(あるじ)さま、セレアさんにはデレデレし過ぎぃ。特に、頭撫でてる時なんか撫でられてるセレアさんとおんなじくらいに嬉しそうにしてるし。」

「あ、それはタカシ様と初めて出会った頃からずっとそうです。むしろ、どんどん加速してますよ。」

か、顔に出てましたか?確かに、耳を垂れさせたりパタパタしてたりするトコにはヤられっ放しですが。

「あぁ・・・そゆこと・・・・」

納得したように脱力するジェラルリード。

「・・・うん。確かに、敵う気がしないわね。この子の気の利かせ具合は絶対に異常だし。どんだけタカシの事ばっか見てたらそうなれんのよってくらいだし。タカシのデレ具合は間違いなくセレアに対してが1番だし。」

「そ、そうでしょうか?わ、私は普通のつもりなんですけれど・・・」

頬を緩ませながら、チラッと俺を見て赤くなるセレア。


耳が半垂れ状態なのもまた可愛いんだよなぁ。何より、セレアの照れた顔とのマッチ具合が破壊力倍増させてんだよなぁ。可愛過ぎるから、頭撫でまくってやる。

って、これか。デレデレし過ぎってのは。まぁ、自覚しところで改める気もないし、必要性も感じないけど。それがリア達の不満になってるんなら考えなきゃだけど、なんか諦めてくれてるっぽいし。


頭を撫でられてさらに赤くなりながらも、嬉しそうに笑って肩を寄せてくるセレア。

「えと・・・ご主人様?」

「ん?」

「あの・・・ジェラルリードさんが仰っている事は、その・・・・」

「リア達にも充分以上にデレてるとは思うけど、まぁ、セレアに対しては別格な気もする。耳とか尻尾とか、リア達には真似できないトコでまで可愛さ振り撒きまくってるからなぁ。」

セレアは倒れるんじゃないかと思う程に真っ赤になり、俯いてしまう。

「あ、ありがとうございます・・・狼人族に生まれてきて良かったです・・・」

「耳と尻尾がポイントなわけ?」

「いや、そこだけってわけじゃなくて、セレアの照れた顔とか嬉しそうにしてくれてる顔とかとのマッチ具合がな。反則だろ、もぉこれは。」

俺の言葉にますます赤くなるセレア。

「え、えと、その・・・嬉しい、です。ありがとうございます。」

「ジェラルリードさぁん、そんな所をツッコまないでくださいよぉ。」

不満顔で抗議の声を上げるリアに、シャーネとシャーンは首を縦に振りまくる。

「あ~、ごめんごめん。余計な事言ったわ。そこだけなワケないもんね。」

リアの抗議に脱力した声で謝るジェラルリード。


そこで、急にセレアの表情が真剣なものに変わる。それを見て、リア達の表情も引き締まり、自然な姿勢のままにそれぞれ武器を手に取る。


敵か?ったく、空気読めよなぁ・・・


「何かが近付いてきています。数は5ですが、嗅いだ事の無い臭いです。」

「この辺りに出るモンスターの大半とは遭遇済みな筈です。初めての臭いという事なら、恐らくは魔族かと思います。」

セレアの報告にリアが予測を口にする。

「魔族なら、いつもの手は使えないわね。相手が襲うつもりで来てるんなら、こっちが気付いてる事を相手に悟らせるのは警戒心を上げるだけになっちゃうし、たまたま近くを通っていくだけなら、このままやり過ごした方が賢いんだから。」

「はい。遠隔魔法での攻撃だと、どの程度の痛手を与えられたのか分かりにくいですから。」

「? 数が増えました。しかし、これは・・・・」

「どした?」

「はい。後から増えた臭いは人間族のもので、臭いで数が捉えられません。かなりの数のようです。」

「へ?じゃあ、それって人間族が魔族を追い回してるような感じの状況ってトコか?」

「恐らく、ですが。」

「それが近付いてきてるって事は、もしかして巻き込まれるかしら?」

「最悪、そうなったら挟み撃ちにしちゃえばいーんじゃない?人数は大した事ないんだし。」

「多勢に無勢ってのは好きじゃないんだけどなぁ・・・」

「ふふ。甘いわねぇ。まぁ、タカシらしいけど。」

ジェラルリードの言葉に、苦笑いを浮かべる俺。

そこに、少し離れた所からの爆音が耳に届いてくる。結構派手に追撃してるらしい。

「ありゃぁ・・・こりゃ、ホントに巻き込まれそうね。」

「はい。確実に近付いてきています。」

「仕方ないか。戦闘準備といきますかね。」

「「「「はいっ。」」」」

セレア達の返事の声が重なり、ジェラルリードも軽く頷いて、それぞれ立ち上がる。


それからすぐに、近くの木々の間から、複数の人影が飛び出してくる。

「くっ!?伏兵っ!?」

飛び出してきた人影の先頭に立つ女性が絶望感を滲ませた声を上げて身構える。


おいおい・・・ゲリラとは聞いてたけど、全員女性とか魔族はどんだけ戦力が不足してるんだ?しかも、既にボロボロじゃないか。


「あ~、勘違いすんな。あんたらを追ってる連中とは別口だ。行くんならさっさと行ってくれ。戦わなくて済むんなら、それに越した事はないんでね。」

「は?」

警戒心全開の身構えた銀髪女性魔族は、俺の言葉に間の抜けた声を上げて怪訝な顔をする。

「勿論、やるんなら応戦はするぞ。無抵抗主義ってわけじゃないからな。で?どうする?」

「・・・変な人間族だな・・・・」

しょ、初対面の魔族にまで言われた。くそぅ・・・ジェラルリード!テメ、笑ってんじゃねぇぞっ!

「挟撃は望むものではない。が、背を向けた瞬間に」

銀髪女性魔族の言葉の途中で、後ろの2人が倒れてしまう。

「シェイラ!ルーイ!」

他の2人が慌てて倒れた2人を抱き起こす。

「ご、ごめん・・・もう・・・走れそうに、ないや・・・」

「くそ・・・人間族に、あんなバケモノがいるなんて・・・」

「だね・・・置いていって。もう、足手まといにしかなれないから。」

「馬鹿を言うな!!シェイラ!!」

シェイラと呼ばれた茶髪ショート魔族女性の言葉に、銀髪魔族女性が怒声を上げる。

「でも、どうしようも、ないじゃん・・・」

「く・・・」

シェイラさんとやらの言葉に、銀髪女性魔族は苦虫を噛み潰したような顔になって言葉に詰まる。


どうやら、この人達の置かれた状況は相当に悪いらしい。しっかし、何よ?このテンプレ展開。仲間を簡単に見捨てるような分かりやすい敵役ならこのまま見捨てても何とも思わないけど、この人達はどうやらそういう感じでもないみたいだし。完全に敵を助ける流れになってませんか?いやまぁ、元々魔族と敵対するつもりなんかなかったんだけど。


「ハァ・・・ジェラルリード。前に遺跡で使った結界って今も使える?」

「へ?あ、うん。イケるけど。」

「んじゃ、銀髪のお姉さんに質問。」

「は?」

「仲間を見捨ててこのまま行くか、仲間とこのまま追ってきてる奴らと戦うか、俺達に危害を加えないと約束して手を借りるか、すぐに決めてくれ。追手がここまで来るのも時間の問題だろうから、余計な質問は後回しだ。」

「なっ・・・」

驚愕の表情で固まる銀髪女性魔族。対して、シャーネ達は少しばかり驚いて入るようだけど、声を上げたりはしていない。セレアとリアは何故か納得した顔してるけど、何故に?

「追手が来たら、さすがにどうしようもなくなるぞ。これからリブラレールに向かうってのに、面倒事の種を撒き散らすつもりはないからな。」

そう。傷付いた相手を見捨てるのは寝覚めが悪いけど、街の人間であろう追手の連中と事を構えてまでは手助けをしてやれない。この国が魔族と敵対してるってのなら、そんな事をしたら最悪の場合はお尋ね者なんだから。

「・・・・分かっ、た・・・危害は加えないと約束する。」

「レーシャ!?」

銀髪女性魔族の返答に、倒れた女性魔族を抱き起こしていた内の1人が抗議の声を上げる。


まぁ、白紙の小切手を切れって言われてるようなもんだからなぁ。しかしまぁ、ここは早めの対処が必要だからな。悪いけど、無視して話を先に進めさせてもらおう。

主人公は元から魔族に対しての悪印象というものは持っておりませんでした。それ故に、問答無用で傷付いた女性を見捨てるような行為には出られなかったのでございます。

主人公の魔族に対する提案に対して、セレア達が異論を唱えなかったのには理由がございます。それは非常に単純なものなのですが、それは次回で明らかになる予定にございます。


それでは、<小心者の物語>第四章 第一部、今回のお楽しみはここまでにございます。

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