古代遺跡 ヴェルデ・パレス ~激闘編~
今回は激しい闘いが行われます。
皆様の期待を裏切る事間違いナシの、第三章 第二十六部<古代遺跡 ヴェルデ・パレス ~激闘編~>是非最後までお付き合いくださいませ。
翌早朝、目を覚ますと、いつも通りにセレアが唇を塞いで舌を絡ませてきた。
「おはようございます。ご主人様。」
続いて、リアも唇を塞いでくる。
「おはようございます。タカシ様。」
「おはよ。セレア。リア。」
2人にそれぞれキスを返して体を起こすと、シャーンが後ろから抱きついてきた。
「主さま、あたしもいいです?」
俺に顔を並べて言うシャーンにもそのままキスをする。
「おはよ。シャーン。」
シャーンは赤くなりながらも嬉しそうに笑って、俺の唇を塞いでくる。
「おはよございますっ。主さまっ。」
朝の挨拶をしながら、そのままギュゥ~っと俺を抱き締めるシャーン。
いや、あのね?君も胸が大きいから、朝からそれはいろいろヤバイんだよ?セレアとキスしてる時点で、もう完全に起床してるからね?
そこに、ムスッとしながら、セレアとリアも俺に抱きついてくる。
「シャーンさんは甘え上手で羨ましいです。」
セレアの言葉に無言で首肯するリア。
いや、セレア、それを君が言うか?甘えん坊モード全開時のセレアに敵う相手はいないと思うぞ?黙って頷いてるリアも、大概俺を脳殺しまくってるのには自覚が無いのか?
「あぅぅ~・・・あ、主様ぁ・・・・」
抱きつく隙間が無くなり、涙目で俺の手を握るシャーネ。
1番の甘え下手はシャーネに間違いないな。お姉ちゃんだけに甘えられる事はあっても、甘える事があまりなかったんだろう。昨日も何かと出遅れてたし。
いや、だからって可愛さの破壊力は他の3人に引けを取ってないんだけどね?照れながらも全力で甘えてくるトコとか、セレア級の凶悪さな可愛さしてるし。こうやって手を握ってくるとか、可愛気がありまくりで溢れ返ってて、思わずニヤけてしまう。
そこに、セレアが少しだけ体をずらして隙間を作ってあげてくれて、シャーネはその隙間にくっついてくる。
しかし、セレアのこういう細かい気配りは、もうホントに健気で可愛過ぎるっ!何回惚れ直させたら気が済むんだっ!?
「あ、ありがとう。セレアさん。」
「いいえ。ご主人様もシャーネさんがこうして甘えている方が嬉しいかと思いますから。」
セレアのあまりに健気でいじらしい言葉に、思わずギュッと抱き締めて、唇を塞いでしまう。セレアはとろんとした顔になって、そのまま舌を絡ませてくる。
「セレアは健気でいじらし過ぎ。もっと我儘になっていいんだぞ?」
「いいえ。これが私の我儘なんです。」
言いながら、俺の腕に頬を擦り寄せる。
「私もたくさん構ってもらいながら、もっとご主人様に喜んでいただきたいんです。私がどれだけの幸せをご主人様にいただいているかを、何万分の一かだけでもお伝えしたいですから。」
セレアの言葉に俺の顔が急激に熱くなる。
なんでこいつはこんなに可愛いんだ!?
「・・・やっぱりセレアさんには敵いそうにないですよねぇ・・・」
「セレアさんが主さまの事、スッゴく好きなのスッゴく分かっちゃうね・・・」
「勿論です。私がご主人様の1番奴隷で、この世界で誰よりもご主人様をお慕いして愛していますから。」
自信満々にサラッと言い切るセレア。
も、ヤメテ。顔が燃える・・・ニヤケ面が止まんねぇぇぇぇぇぇぇっ!!!
「あぅぅ・・本気で敵う気がしないけど、あたしも大好きなんですよぉ?主様ぁ。」
言いながら、俺にキスをするシャーネ。
「ん、んん。い、いや、もう、何て言うか、朝から茹で上がるから。」
久しぶりに完全にテンパりながら、シャーネの唇を塞ぐ。
耐性ができてきてると思ってたけど、無理だ。頭が完全に熱暴走して、何にも気の利いたセリフが浮かばん。
そんな甘々な朝の時間を朝食まで過ごしてから、宿を出る。今回は自制し切れた自分を褒めてやりたい。まぁ、そうしないと、出発に差し障るから、自制しざるを得なかっただけだけど。
んで、食糧と水を揃えてから街を出発したんだけど、宿を出る時から、セレアが超ご機嫌な様子で俺にずっと寄り添っている。何故にこんなに上機嫌?チラッと俺を見上げる度に、嬉しそうにしないの。死ぬ程照れくさいっ。
その後、街をそれなりに離れてからジェラルリードちゃんを呼ぶ事にした。
遠話の腕輪で呼び掛けると、すぐに影から転位して出てくるジェラルリードちゃん。昨日、1人だけ避難した事をツッコんでみたけど、サラッと流されてしまった。やっぱり敵いそうにない。
まぁ、それはともかく、この魔法ってマジで便利だな。俺も使えないもんだろうか?
「ところでさ、この魔法ってやっぱり人間族には無理?」
「このって、影を使った転位魔法?無理無理。人間族は当然、エルフの保持魔力量でも大した距離は転位できないし、無理したら即魔力欠乏状態であの世行きよ。」
「ハァ。やっぱりかぁ。」
「・・・・ま、うまくいけば、転移魔法が使えるような人間族に会えるかも、だけどね?」
「へ?マジ?そんな奴いるのか?」
「プッ。あはははははっ。いるワケないでしょぉ。もう、ホントに素直なんだから。」
にゃ、にゃろう・・・
「さ、行きましょ。目的地はヴェルデ・パレスよ。」
ジェラルリードちゃんの言葉に、一同歩き始める。
「ヴェルデ・パレスですか?あそこは確か・・」
「そ。守護者と罠が多くて、その分、古代のお宝がよく見つかってたトコよ。」
「見つかってたって事は、今はほとんど狩り尽くされて見つからないって事か?」
「正確には、冒険者が進める範囲ではってのが頭に付くわね。守護者が結構強力だから、腰抜けの冒険者じゃそんなに奥まで進んでないでしょうし、多分まだそれなりに残ってるんじゃない?1、2を争うくらいに価値があるのは、間違いなくコレとソレだけど。」
そう言って、ジェラルリードちゃんは俺と自分が嵌めている遠話の腕輪に視線を送る。
「これ、そこで見つけたのか。でも、大昔って言ってなかったけ?」
「よく覚えてるわね~。そうよ。大体1000年くらい前だったかしら?人間族があの遺跡をまだ見つけてなかった頃にね。」
「へぇ。」
「やっぱり遠話の腕輪は古代の秘宝だったんですね。そうじゃないかと思ってたんですけど。」
「そうなのか?」
「はい。大昔に見つけたと仰っていたのに、今も正常に稼働しているんですから。アイテムに魔法を宿す事自体はそんなに難しい事じゃありませんけど、稼働可能期間と回数を伸ばせば伸ばす程に難易度は跳ね上がっていくんです。現在の技術ではまず無理ですね。」
「へぇ~。よかったのか?そんなレアそうな物を。」
「いーのよ。1人で持ってたって使い道もないし。デザインが気に入ってたから着けてただけでね。」
「同族との連絡手段にとかってのはなかったのか?」
「無い無い。真祖吸血鬼なんて、無駄に気位が高くて傲慢なのばっかだもん。少なくとも、あたしが知ってる奴らは。あんまり生意気言われると、捻り潰したくなっちゃうしね。」
「・・・・・もしかして、ジェラルリードちゃんって真祖吸血鬼の中でもかなり強い方だったりする?」
「でしょうね。あたしより強いって言うか、相手になりそうなのとはこの1500年くらいは会った事ないし。実際、何人か洒落程度の力で相手してやったら、数分も持たないで塵になってたし。イヤよねぇ。自分を過大評価して、相手の実力も見抜けない馬鹿って。面倒臭いったらないんだから。」
「マジか。そんな奴が自分の物語を広める為なんて理由で、ちょこちょこと人間族にちょっかいかけてんの?ほとんど災害ぢゃねぇか。」
「いいじゃない。殺されるワケじゃないんだし。他の真祖吸血鬼と遭遇してたら、ほぼ間違いなく餌にされておしまいよ?」
「むぅ・・・そう言われると、そうかもしれないけど・・・・理由が理由だけになんか釈然としないモノが・・・」
「物語を広める為って、どういう意味ですか?」
シャーネが首を傾げて聞いてくる。
「あ。そっか。新人ちゃん達は知らないか。実はね・・・・タカシ。説明よろしく。」
「テ、テメェ・・・メンドくさくなったな・・」
「いいから。ホラ。」
ジェラルリードちゃんに促されて、タメ息を1つついてから、簡単にジェラルリードちゃんとの出会った頃の話をする。聞いてる内に、シャーネとシャーンはポカンとした表情になっていき、最後にはシャーネが頭を抱えていた。
「・・・主様が規格外だって言われてるホントの理由が分かった気がします・・・」
何かを諦めたような口調で言うシャーネ。
そっちか!?物語を広める為に暴れてたジェラルリードちゃんも大概だと思うんですけどね!?
「いくらジェラルリードさんから、悪意とか邪悪さが感じられなかったからって・・・」
「でしょ~?やっぱりこいつって普通じゃないわよね~♪ホラホラ♪」
「ぐ・・・でも、どうあれ、ツッコミどころ満載の口上だったのには違いないぞっ。あの時は気を遣って言わなかったけどなっ。まず」
「ちょっ!?今、ソレ言うの!?最後まで気を遣いなさいよっ!!」
「やかましいわっ!やられっ放しでいられるかってのっ!」
それからしばらく、ギャーギャーとお互いにお互いのダメ出しの応酬を繰り広げた。なかなかの激闘になったけど、結果は俺の惨敗。やっぱりこいつには敵わないらしい。
「ふ、ふふふ。あたしに勝とうなんて、2500年は早いのよっ!」
勝ち誇るジェラルリードちゃん。その顔はとても満足気で、言い合いの最中も何故か凄く楽しげだった。
「覚えてろよ・・・次はまた泣かしちゃる・・」
「・・・ふふ。そうねぇ。楽しみにしておくわ。」
フイッと顔を前へ向けて言うジェラルリードちゃん。
「まぁ、いつになるやらって感じだけどね~?」
それから、ジェラルリードちゃんは肩越しに少しだけ振り向きながら、笑って言ってきた。
「? どうかしたか?」
「ん?なにが?」
「いや、何がってワケでもないんだけど・・・」
「なぁに~?変な子ねぇ。」
そう言ってケタケタと笑うジェラルリードちゃん。
何か違和感があったような気がしたんだけど・・・気のせいか?
「こんなに可愛い子達と仲良くしてるのに、あたしにまで手、出すつもりぃ?こ~のスケベ~。」
「なっ!?」
「まぁ?どうしてもって言うんなら、考えてあげなくはないけどぉ?」
メチャクチャ楽しそうに言うジェラルリードちゃん。
「面白がってんじゃねぇよっ!大概余裕ナシなんだぞっ!?」
俺の言葉に爆笑するジェラルリードちゃん。涙が出るくらいに笑い、息が切れている。
「あ~あ~もう、サイッコー。やっぱあんたは面白いわ。」
目に溜まった涙を拭きながら言うジェラルリードちゃん。
こんにゃろう・・・心底楽しそうだな、おい。やっぱりさっきの違和感は気のせいか。
「! 敵が近付いています。」
セレアが真剣な声を上げる。
「さすが狼人族。索敵力はあたしよりも上ね。どっち?」
「右前方の森の中です。恐らく、オーガだと思います。数は約6匹です。」
「おっけー。」
セレアが示した方向に視線を向けると、その紅い瞳が微かに光を帯びる。
「アレね。≪滅びの風に巻かれて、塵と化せ。≫」
ジェラルリードちゃんの力ある言葉の後、かなり離れた森の奥で風が吹き荒れる音がする。
「え・・・?に、臭いが消えました・・・」
唖然として言うセレアの言葉に、リア達もギョッとする。
「マジか・・・視認する前に退治とか、どんだけだよ・・・・」
「言ったでしょ?あんた達を危険な目には遭わせないって。まぁ、出てくる前にってのはセレアが先に見つけてくれたおかげだけどね。ありがと。遺跡まで、風上の索敵は期待するわよ?」
「あ、は、はいっ。」
「まだ見えてもいないモンスターを残さず倒してしまうなんて・・・あの。どうやったのか、教えていただけませんか?」
「見えたわよ?オーガが6匹、こっちに向かってきてたのが。」
「「「「「え?」」」」」
俺達全員の間の抜けた声が綺麗にハモって、疑問の声を上げる。
「そうねぇ。何枚も鏡を合わせていったら、いくつ障害物があってもその奥の物を見る事ってできるでしょ?そんな感じで光の鏡を連ねていって、まずは映したい場所を映すの。で、そこを目標に魔法を打つのよ。目標付近で発動するように魔想域を完成させれば、途中の障害物に遮られる事も無いわね。ただ、見る場所と魔法の発動場所が遠くになればなる程に難易度は跳ね上がっていくから、徐々に距離を伸ばしてく方が無難かしらね。」
「そ、それだけの魔法をあんな一瞬で・・・」
「リアにもできるわよ。まぁ、こんな一瞬でってのは無理だろうけど、エルフなら今回の距離くらいまでは余裕でしょ。」
「その遠くの場所を見るのも魔法なのか?攻撃のと違って何も言ってないけど。」
「あぁ。それは真祖吸血鬼の固有能力よ。」
「固有能力?」
「そ。例えば、有翼族は羽根を魔力で強化して飛ばして攻撃できるけど、魔力を込めた言葉は必要無いでしょ?」
「あ、うん。」
羽根弾丸の原理ってそうなってたのか。スゲェって思ってただけで、あんまり深く考えてなかった。
「で、エルフは保持魔力量が多くて、魔力操作にも長けてるし、狼人族は動きが圧倒的に速い。他の獣人族と共通してる部分だと、爪の出し入れが自由にできるってトコもそうね。」
「つまり、種族としての特徴みたいなもんか。」
「そういう感じかな。んで、真祖吸血鬼は魔力を込めた言葉ナシで魔法を発動できるってのが固有能力の1つとしてあるのよ。」
「へぇ~。」
「ただ、魔力を込めた言葉ナシだと、やっぱり精度は落ちるのよ。だから、あたしは攻撃魔法を使う時は言葉アリで使う方が多いかしらね。」
「ほぉ~。」
「・・・・なんでそんなに目を輝かせて聞いてんの?」
「だって、凄いじゃん。なんかカッコイイし。」
「ご主人様の世界には魔法が無いそうなので、魔法そのものが憧れだったそうです。」
「なるほどね・・・子どもか、あんたは。」
セレアのフォローの言葉を受けて、納得しながらもやや呆れ口調で言うジェラルリードちゃん。
「ほっとけ。俺の世界の奴らなら、絶対に誰でもテンション上がりまくりだっての。」
「ふぅ~ん?」
疑わしげな目を向けられたけど、そこはスルー。大いに偏見が混じってるのを自覚してる分、ツッコまれたらまた負けてしまうからだ。
まぁ、それはともかく、この感じなら、遺跡までは限りなく順調に進みそうだな。俺の出番は全く無さそうだけど。
はい、すみません。激闘は激闘でも、主人公とジェラルリードちゃんとのただの口喧嘩でした。前書きの通りにご期待を裏切れたでしょうか?
ちなみに、離れた場所を見る魔法は、勿論、ただの鏡の反射の原理だけではありません。実際の大きさまで対象の物体を拡大しています。でないと、離れ過ぎた物は豆粒みたいにしか見えませんからね。
では、これにて第三章 第二十六部の幕を下ろさせていただきます。最後までお付き合いいただいた皆様に感謝です。また次もお付き合いいただければ幸いです。




