古代遺跡 ヴェルデ・パレス ~顔合わせ編~
ジェラルリードちゃんと双子の顔合わせが実施されます。この世界で真祖吸血鬼という存在との遭遇は確実な死と言われている程に、恐ろしいものなのですが・・・
第三章 第二十四部<古代遺跡 ヴェルデ・パレス ~顔合わせ編~>是非最後までお付き合いくださいませ。
それからほんの少しして、ジェラルリードちゃんはまた上を向いて俺の方を見上げてきた。
「あ、それで、新人ちゃん達は?」
「あぁ。シャーネ達は隣の部屋だよ。」
ジェラルリードちゃんの様子が普段通りに戻った事を感じて、抱き締めていた腕を解く。
「へ?なんで?」
「ヤりまくってるトコで休めるわけないだろ。こっちも向こうも気まずいっての。」
「あら?手は出してないんだ?」
「出すか。何をするにしても、俺は強制するのもされるのも嫌いなんだよ。」
「そっかそっか。」
明るい声で頷くジェラルリードちゃん。
「んじゃ、とりあえず、2人を紹介するか。リア。呼んできてもらっていいか?」
「はいっ。」
リアは嬉しそうに返事をすると、そのまま双子を呼びに出ていった。その後ろ姿を恨めしそうに見つめるセレア。
「ご主人様。私も何かさせてください。」
上目使いで拗ねたように言うセレア。
おいおい。頼み事まで取り合いの対象ですか?
「セレアはこうしててくれるのが仕事。」
宥める為に似合わないセリフを口にしながらセレアの肩を抱き寄せると、セレアは一気に表情を輝かせて頭を俺の肩に乗せ、ベッタリとくっついてくる。
「はいっ。」
「・・・・あんた達ねぇ・・・外野を無視すんのも大概にしなさいよ。」
ジト目でジェラルリードちゃんが言ってきた。
すんません。もうこれが日常なんで勘弁してください。
そこにリアがシャーネ達を連れて戻ってきた。
「あぁっ!?セレアさん!?狡いですよぉっ!」
言うが早いか、俺に飛び付いて腕に抱きつくリア。
「おはようございます。主様。お待たせしました。」
リアの行動は平然と流して言うシャーネ。
「・・・ツッコミ無しなのね。まさか、これが日常化してるわけ?」
「あ、いやまぁ。」
「・・・バカップル、いえ、色ボケトリオ、かしら?」
呆れた口調で言うジェラルリードちゃん。
「大いにほっといてくれ。嬉しいからいいんだよ。」
俺の言葉に、セレアとリアはそれぞれさらに体を寄せてくる。
これを喜ばずに、一体何を喜べと?
「はいはい。それより、新人ちゃん達が硬直しちゃってるわよ?」
言われて、シャーネ達に視線を向けると、ジェラルリードちゃんに視線が向けられた状態で完全に固まってしまっていた。
あらら。インパクトが強過ぎたかな?紅い瞳に青白い肌、んでもって、長くて尖った耳に長い牙とくれば、嫌でも分かるもんなぁ。でも、今回は窓のカーテンを閉めて日光を遮断してる。ただの吸血鬼だと誤解してたら、真祖吸血鬼であるジェラルリードちゃんには失礼な話だろうし、さらに衝撃的な事を言わなきゃならないんだけど。
「シャーネ。シャーン。紹介するよ。真祖吸血鬼のジェラルリードちゃん。」
「ハ、真祖吸血鬼・・・え?ちゃ、ちゃん?」
顔を引き攣らせながら困惑の声を上げるシャーネ。声が掠れてる辺り、やっぱり相当に怖いらしい。
「今度、一緒に遺跡に潜る事になったから、とりあえず今日は顔合わせだけな。ビックリするだろうと思ったから。」
「真祖吸血鬼との遭遇をビックリの一言で済ませてあげないでよ。さすがに可哀想よ?あ、よろしくね~。」
ヒラヒラと手を振って、シャーネ達に笑いかけるジェラルリードちゃん。でも、笑うと牙がハッキリ覗くから逆効果だったらしい。シャーネもシャーンも血の気が引いて、顔色が真っ白になっている。
「金髪の方が双子の姉のシャーネ。青髪の方が妹のシャーンだよ。ホラ。そう怯えなくても大丈夫だよ。害意があるようには見えないだろ?と言うか、あったら膝の上に座って大人しくしてないって。」
「一般的には恐ろしい存在として語られている真祖吸血鬼ですが、ジェラルリードさんはご主人様のご友人です。安心してください。」
俺の言葉に援護をかけてくれるセレア。しかし、どうやら、その言葉は混乱に拍車をかけたらしい。シャーネが頭を抱えて蹲ってしまって、聞き取れないけど何やらブツブツ言ってる。
「え、と・・・主さまのお友達、です?」
シャーンが恐る恐る声を上げる。
「ん。まぁ、そうね。」
それに照れくさそうに同意を示すジェラルリードちゃんを見て、シャーンはホッと胸を撫で下ろす。
「お姉ちゃん。主さまのお友達だって。怖い人じゃないよ。」
蹲るシャーネの肩を軽く揺すりながら言うシャーン。
いや、人じゃないけどな?と言うか、それだけで安心できるって凄いな。最初のセレア達の反応と言い、さっきのシャーネとシャーン自身の反応と言い、相当に怖い存在の筈なんだけど。
「・・・ね?この子に何かした?普通、いくら友達って言われてもあんなにすぐには信じらんないと思うんだけど。」
「何かって何を?と言うか、何故にその原因を俺に限定する?」
「だって、あんたの変なトコって感染するみたいだし。」
「テメ。人を病原菌みたいに・・・」
キョトンとした顔で俺達を見るシャーン。
「ん?どうした?」
「あ、ううッ、えと。いいえ。ただ、主さまのお友達なら怖い人も嫌な人もいないかなって思ってた、ですけど、間違い、です?」
ポカンとなってしまう俺とジェラルリードちゃん。
「いいえっ。その通りですっ。ご主人様が懇意にされる方は優しく暖かい方達ばかりですっ。よくご理解されてますねっ。シャーンさんっ。」
嬉しそうに誇らしそうな声で全面肯定するセレア。
いやいやいや。どれだけ俺に人を見る目があると思われてるんだ。
「そ、それはなんとなく分かりますけど、でも、なんて言うかッ!なんと申し上げたらよいのかっ。」
また口調を正すシャーネ。
シャーンもだけど、いいって言ってんのに、頑固な奴らだ。と言うか、それは分かるのか。シャーネも。どういう理屈だ?それは。
「・・・やっぱり、何かしたでしょ?リアとセレアはもう分かってたけど、この子達からの信頼も半端無いじゃない。」
「いや、信頼ってんなら、無理に口調を堅くする必要もなくないか?」
「守りたいものがあると、やっぱり必要以上に気を張ってしまうんじゃないでしょうか?シャーネさんも最近は表情に張り詰めたものは無くなってますけど、普通に考えれば、タカシ様のご機嫌を損ねてシャーンさんに万一にも矛先が向かってしまったらと考えてしまうものだと思いますし。」
「そうですね。自分自身の事だけではないとなりますと、慎重に慎重を重ねるかと思われます。特に、シャーネさんは妹想いのお姉さんですから。」
「あんた、自己評価が低いんじゃない?あんたの友達だから大丈夫なんて考え方、信頼してなきゃ出てくる筈ないでしょーが。」
セレアとリアのフォローに加えて、ジェラルリードちゃんの意見がズバッと刺さる。
いやまぁ、最初の頃よりかはリラックスしてくれてるかなぁとは思ってたよ?でも、言われてみれば確かに、そいつの友達なら悪い奴じゃないだろうなんてのは、それなり以上に信頼してる相手でもなけりゃ有り得ないか。でも、なんかそう考えると妙にテレくさいっす。
「ん、んん。まぁ、それはそうとして、一応、確認させてくれ。遺跡に潜るのをついてくるか?今回はジェラルリードちゃんと一緒だから普段の依頼よりも安全なくらいだと思うけど、怖かったら今回は留守番してくれてていい。屋内じゃ羽根弾丸の使い勝手も悪いだろうからな。」
「えと、行っちゃダメ、です?」
「シャーンッ!?」
俺とのやり取りはほとんどシャーネがしてるのに、珍しくシャーンが先に声を上げて、それに慌てるシャーネ。
あのスクラヴォーヌにいた分、遺跡の怖さは余計にあるだろう。だから、断る機会を与えようと思ってたのに、行きたいとも取れるシャーンの発言にはそりゃ慌てるだろう。シャーネなら、自分は行くからシャーンは留守番させてほしいとか言いそうだし。
「いや、ダメな事はないけど・・・行きたいのか?」
「はい、です。」
「あ~。もう喋りやすいように喋ってくれ。シャーンが堅苦しい喋り方が苦手なのは分かってるから。それで怒ったりもしないし。」
シャーンは少し困ったように、俺とシャーネを交互に見る。これは、シャーネにもキツく言い付けられてるって感じかな。
「シャーネ。約束するよ。それでシャーネには勿論、シャーン自身にも不利益な事は絶対にない。だから、シャーンの好きにさせてやってくれないか?」
「あ、う・・・は、はい。」
目を白黒させながらも首肯するシャーネ。
「いいの?お姉ちゃん。」
「・・・ハァ。主様がここまで仰ってくださってるんだから、甘えさせていただきなさい。でも、礼儀は忘れちゃダメよ?ここに着くまでだってこんなに良くしてくださってて、戦闘でだって何回も守っていただいてるんだから。何より、今あたし達が一緒にいられてるのは、主様のおかげなんだから。いい?」
「うんっ。」
嬉しそうに笑うシャーン。何気に、こんな風に笑ってるトコは初めて見たかもしんない。
「おぉ。シャーネの素の口調、初めて聞けたな。」
俺の言葉にシャーネはバッと口を押さえる。
「早いトコ、そんな風に崩してくれりゃ俺も嬉しいんだけど。その喋り方の方が好きだぞ。俺は。」
エルフよりは短いけど、それでも人間族よりは長い尖った耳まで真っ赤にして、シャーネは俯いてしまう。
「ま、無理に崩す必要もないけどさ。んで?シャーン。行きたいのか?ジェラルリードちゃんがいるから安全とはいえ、街でゆっくりしてる方が絶対に安全だぞ?」
俺の言葉にシャーンは首を振る。
「ついていきたいです。あたしも主さまを守るんです。」
「へ?」
シャーンの口から出た意外過ぎる言葉に、思わず間の抜けた声が漏れてしまった。
「ダメ?主さま。」
俯きながら胸の前で両手の指先だけを合わせて、上目使いで俺を見つめて問いかけてくるシャーン。
うわぁ。この子もやっぱ可愛い、って言うか、愛らしいな。いやいやいやっ!そうでなくてっ!
「ホンットに分かってるか?遺跡の中だから、飛んでどうこうってのはできないんだぞ?」
「うん。あたし、飛ばなくても戦えるです。」
「ま、まぁ、シャーンがいいんなら構わないんだけど・・・いいのか?シャーネ・・」
「え?あ、は、はいっ。邪魔にならないようにしますっ。」
まだ真っ赤になったまま、何故か慌てて首肯するシャーネ。
「邪魔にならないようにって、シャーネも来るのか?あ、シャーンが来るんなら来ざるを得ないか。いいのか?シャーン。シャーネも少なからず危ないトコに行く事になっちまうぞ?」
「うん。お姉ちゃんも主様の事守りたいって前に言ってたから。」
「シャッ、シャーン~ッ!?」
さらに赤くなりながら、大慌てでシャーンの口を塞ぐシャーネ。
「ちっ、違うんですっ!!あ!?いえ、違わないけどっ!でもあのそのっ!!そっ、そういう意味じゃなくって!!!」
うわぁ。全力でパニックだなぁ。
「分かった分かった。聞いてない事にするから。だから、手、離してやって。窒息するぞ。」
「あっ!?」
シャーネはまた慌てて、シャーンの口を塞いでいた手を離す。
「ぷはっ。うぅ~。お姉ちゃん、酷いよぉ。」
「どっちがよ!?」
うん。今のはシャーンが悪いと思う。この子は無邪気で悪気もない分、どストレートに急所をエグってるもんなぁ。
「・・・・・・女ったらし。」
肩越しにこっちをジト目で見ながら、ボソッと謂れの無い中傷の言葉を投げてくるジェラルリードちゃん。
誰が女ったらしだ、誰が。そんな事を言われるのは、イケメンでモテまくってるようなモテヒエラルキーの頂点にいるような連中だけだぞ。
でもまぁ、セレアとリアが想いを寄せてくれてる時点で、昔の俺なら間違いなく、相手に破局の呪いを全身全霊でぶつけまくって、リア充爆発しろって心の中で絶叫しまくってる。さらに、その場から走り去ってるまである。さらに、こんな可愛い双子の姉妹に守りたいなんて言われてるのを見たら、魔王以上の負の空気を撒き散らしてるだろう。
うん。確かに、タラシと言われても仕方がないかもしんない。
「え、え~と、それじゃ、シャーネとシャーンも来るって事で。その遺跡までは3日くらいなんだっけ?」
「話、逸らしたわね?まぁ、いいわ。そうよ。大体3日ってトコ。あと、遺跡の中はかなり広いから、半日近くかかるかも。」
ツッコミを入れつつも、話を先に進めてくれるジェラルリードちゃんに、一筋の汗が流れつつもホッとする俺。
「遺跡の中はそんなに広いのか?」
「広いのもあるけど、罠を解除しながら進まなきゃならないから、時間が掛かるのよ。メンドくさいのが多い筈だし。」
「そうか。罠もあるのか。それって見分けがつくのか?」
「まぁ、大体は。真祖吸血鬼の力を舐めるんじゃないわよ?」
得意気に胸を張って言うジェラルリードちゃん。
「頼もしい。んじゃ、そこは任せた。」
「うん。で、いつ出発にする?」
「そうだなぁ・・・シャーネ。シャーン。疲れは今日1日ゆっくりすれば取れそうか?」
「「はいっ。」」
「今日からでも大丈夫なくらいなの。」
「マジか。シャーンはタフだなぁ。」
俺の言葉に照れ笑いをするシャーン。
可っ愛いな、おい。口調を崩してから、一気に愛嬌が溢れ出してないか?んで、シャーネ。そんなハラハラしたような顔をしなくても大丈夫だから。
「シャーネも、無理してないか?ジェラルリードちゃんも急がなくていいって言ってくれてるから、しっかり休んでからでも問題無いんだぞ?」
「は、はいっ。え、と・・・・問題、ありま、せん。」
恐る恐るといった感じで、少し砕けた言葉で返答するシャーネ。
おぉ。ついに崩す気になったか。シャーンだけが崩してると目立つとか考えたかな?
「よし。んじゃ、明日の早朝に出発って事でどう?」
「いいわよ。でも、セレアとリアには聞かなくていいの?」
「私達は辛ければ辛いと、必ずお伝えする事をご主人様とお約束してますから。」
「はい。むしろ、ご主人様が仰ってくださらなさそうですから、そっちの方が心配です。」
「あぁ。確かに。女の子の前では無駄にカッコつけそうだもんね。こいつ。」
図星を突かれて、フイッと目を逸らす俺。
「いや、でも、マジで疲れは溜まってないし。疲れてたら、ひたすらイチャついてる余裕も無いし。」
「カッコつけるのは否定できないわけね。」
ジェラルリードちゃんのツッコミで言葉に詰まる俺。
ドちくしょう・・・痛いトコばっか突いてきやがって。マジでこいつには敵わん・・・
双子が主人公に寄せる、意外過ぎる程な信頼の大きさに顔合わせは無事に終了しました。その信頼の大きさの理由は、作中でシャーネがシャーンに口調を崩す際に言い聞かせていた通りのものになります。
ただ、それ以外にも理由はあるのですが、主人公は当然気付いていません。読者の皆様はお気付きですよね。その理由が原因となって、次回、真祖吸血鬼ですら恐れをなすような事態が・・・
では、これにて第三章 第二十四部の幕を下ろさせていただきます。最後までお付き合いいただいた皆様に感謝です。また次もお付き合いいただければ幸いです。




