新しい奴隷捜し ~後編~
新しい奴隷捜し中に、主人公を知る人物が登場。世の中は意外に狭いものですが、それは異世界でも同じようです。
第三章 第十九部<新しい奴隷捜し ~後編~>是非最後までお付き合いくださいませ。
3日連続朝までコースの後の目覚めから、起き抜けから連戦コースに入った。
セレアとリアが言うには、宿に泊まって次の日に依頼や出発の予定が無いとなると、我慢ができなくなるそうだ。さらに、セレアが恥ずかしがりながらも、許されるなら1日中抱かれていたい、なんて強烈に可愛い事を言ってくるわ、リアも顔を真っ赤にしながら激しく同意するわで、もう連戦が激戦続きですよ。よく俺の事を規格外って言うけど、君達のエロさと可愛さと愛しさの方が完全に規格外だからね?
そのおかげで、今日の奴隷商会巡り再開は昨日よりも遅くなってしまった。しかしまぁ、最後の1つだし、別に問題は無い。リアの期限まではまだまだ余裕があるし、リブラレールまでの道程も半分近くまでは来てるからな。
そして、街の奥にある最後の奴隷商会に到着。確かに、建物が大きい。これまでの奴隷商会の倍はありそうだ。
「いらっしゃいませ。ようこそ、ジライ商会へ。」
冒険者証を見せる前から、丁寧に出迎えてくれる若い茶髪男性。
って、今、ジライ商会って言ったか?まさか、王都のジライ商会と同じ系列とか?
「あ、どうも。新しい奴隷を捜しているんですが、拝見させていただけますか?」
「勿論でございます。どうぞ、中へ。ご案内させていただきます。」
茶髪男性に連れられて、応接間に通される。
「では、紹介係の者が来るまで、どうぞお掛けになってお待ちください。」
「はい。ありがとうございます。」
俺達がソファーに掛けてから、茶髪男性は一礼をして退出していった。やっぱり、冒険者証を見せなくても丁寧な対応だ。
「ご主人様。先程、ジライ商会と言っていましたよね?」
セレアは少し驚いた顔のままで問いかけてきた。
「だよな。」
「? ジライ商会がどうかしたんですか?」
「セレアを買ったのが王都にあったジライ商会なんだよ。同じ名前の奴隷商会なんてあるのか?」
「い、いいえ。商会名は大体がオーナーの名前になっていますし、今まで私は同じ名前の奴隷商会は聞いた覚えがないです。」
リアも少し驚いた顔をして答える。
「って事は、やっぱり同じ系列なのかな。それなら、規模が違うってのも納得できるけど。」
「そうですね。複数の街に拠点を構えているのですから。」
そこに、顔に爪痕を残した50代くらいのなんだか雰囲気のある男性が入ってきて、向かい合わせにソファーに座る。
「お待たせ致しました。私は当商会のオーナーのジライと申します。」
「どうも。タカシ リュウガサキと言います。」
「おぉ。やはりタカシ様でしたか。貴殿の事は、デューイから報告を受けておりましてな。容姿の特徴とお連れの奴隷から、そうではないかと思っておりましたぞ。」
マジか。どんな報告を受けてるんだ?まだ冒険者証も出してないのに、わざわざ商会主が出てくるなんて嫌な予感しかしないんですが。
「その節はうちのデューイが失礼致しました。ほんの僅かな期間に銀級まで昇級されていた偉業に気付かず、鉄級と思い込んでしまっていたとか。」
やっぱり・・デューイさん、馬鹿正直にそんな事を報告する必要ないのに・・・
「い、いえ。私が口にしなかった事ですから。」
「恐れ入ります。ところで、タカシ様の現在の階級はどのようになられておいででしょうか?デューイめはタカシ様がこちらにおいでになられる事があれば、もう白金級としてお迎えするべきだなどと申しておりましてな。失礼ながら、私も貴殿には興味があったのですよ。」
うわぁ・・・デューイさんの勘スゲェ・・・・と言うか、あの人はあの時点でなんでそこまで俺の評価を高くしてたんだよ。
「いえ、その、なんと言いますか・・・」
冒険者証を出すと、ジライさんの表情が驚愕に染まる。
「なんと・・まさか・・・ふむぅ・・・・いや、これは恐れ入りました。デューイの目は確かだったという事ですな。ほんの30日少々で、銀から白金に昇級される方など、私が現役の頃から現在に至るまでお目に掛かった事も耳にした事もございませんぞ。いやはや、まだまだお若いのに、末恐ろしい。これは私も全力で媚を売らねばなりませんな。」
やたらと愉快そうに、とんでもない事を言うジライさん。勘弁してくれ。どっちかって言うと、俺は媚を売って生きてきた方なのに。
「い、いえ。私など、極端な幸運に恵まれているだけの成り上がり者です。実力だけなら、疾うに墓の下かモンスターの胃袋の中ですよ。」
「ははははは。なるほど。デューイの言う通り、大変謙虚な方であられるのですな。素晴らしい。真の強者は驕らず語らず、ただ語られるのみという事ですな。まるで、昔語りの気高き騎士のようなお心構え、このジライ、感服致しました。」
事実を言っただけなのに、なんかとんでもなく恐ろしいくらいに高い評価が出てますけど!?完全に誤解ですよ!?チート能力のおかげと、ジェラルリードちゃんの悪戯の結果なだけですよ!?
「では、このジライ商会の総力を以て、タカシ様のご期待にお応えできるように努めさせていただきましょう。どうぞ、ご希望の奴隷をお申し付けくだされ。」
うわぁ・・・ジライさんの目がこの上無くマジだ・・・・これはどう言ったところで、評価を改めてもらえそうにない。こうなったら、誤解を解くのは諦めて、記憶を抹消してさっきまでの話はなかった事にしよう。恥ずかし過ぎて、物凄く帰りたいけど。
「え、え~と、では、お言葉に甘えさせていただいて、私の要望をお伝えします。まず、女性である事。よく変わっていると言われますが、私はこの子達を非常に大切にしています。なので、男性の奴隷を入れて、この子達がその人にくだらない真似をされると限りなく不愉快ですから。あと、女性であっても、この子達を蔑ろに扱うような人は遠慮させていただきます。私はそういう人には優しくないですから。」
「なるほど。タカシ様はご自身の持ち物に愛着を持たれるのですな。」
をや?昨日までの商会主さん達はここでかなり慌てて中座して、お茶の用意をセレアとリアの分も追加しに行ってたっぽいんだけどな。
「ええ。そう捉えていただいて構いません。珍しいでしょう?」
「確かに珍しいですが、そう変わった事でもございません。」
を?もしかして、ジライさんは差別意識が薄い方の人なのか?
「武器や防具にこだわりと愛着を持つ事は、冒険者ならばよくある話ですからな。そちらに置かれている奴隷の身なりを見れば、如何に愛着を持って手入れされているかはお察しできます。」
あ、違った。この人、奴隷を完全に物として認識してるんだ。だから、獣人とか亜人とかの括りが関係ないだけだ。まぁ、ある意味では差別意識が薄いって言えるのかもしれないけど。
「ですので、その点についてはご安心を。当商会の奴隷には売り出す前の調教を徹底しております。どのようなお考えをお持ちの方にも不愉快な思いは決してさせないよう、立ち居振舞いに関しても調教を完了させた物以外はお出ししておりません。その分、他の奴隷商会よりも値が高くついている物もございますが。」
うわぉ。調教って言ったよ。
思わず、セレアに目を向けてしまうと、セレアは微かに頭を上下させて首肯する。マジで教育は厳しいみたい。
「他には何かご要望はございますかな?」
「あ、いえ。それ以外には特に求める事はありません。あとは直接拝見して、私が大切にできそうだと思うかどうかなので。」
「なるほど。そうなりますと、1番間違いが無いのは全女奴隷をご覧いただく事となりますが、かなりの数がありますので、相当にお時間を頂戴する事となってしまいます。タカシ様のご都合はいかがでしょうか?」
「私の方は大丈夫ですが、そちらのご都合は?正直なところを言いますと、あまり妥協するつもりは無いので、最終的にただそちらにお手間と時間を潰させるだけになってしまうかもしれないのですが。」
「勿論でございます。お客様に妥協などさせては、ジライ商会としての矜持に傷が付きます。お気に召さなかった際には、どうぞご遠慮なくお申し出くださいませ。」
「ありがとうございます。そう言っていただけると助かります。」
「とんでもございません。では、長丁場となりますので、まずはお茶の用意をさせていただきましょう。」
ジライさんが手を叩くと、翼を持った2人の若い女性が入ってくる。
「「失礼致します。」」
一礼をして、青髪の方の女性は俺とジライさんに、金髪の方がセレアとリアにお茶を煎れてくれる。
羽根が生えてる・・・こんな種族もいるのか。初めて見た。白い羽根が、まるで天使みたいだ。それに、顔がそっくり。これは確実に双子だろう。
しかも、いたよ。おい。セレアとリアに並ぶ超絶に可愛い子が。それも、2人も。
ジライ商会って一体どうなってるんだ?セレアといい、この2人といい、なんでお茶汲みに来た子がとんでも美人ばっかなわけ?出てくる順番がおかしくね?
「おや?ご紹介を始める前でしたが、この有翼族がお気に召しましたかな?」
完全に見惚れてしまっていた俺は、ジライさんの声で我に返る。
「あ、え、ええ。」
有翼族って言うのか。
「いやはや、タカシ様は眼力も素晴らしい。有翼族はこの辺りでは珍しいのですが、早々と目を付けられるとは。デューイから、奴隷の知識をお持ちではなかったにも関わらず、最初の奴隷として汎用性のある狼人族を選ばれるというご慧眼も備えられた方だと聞いてはおりましたが、全くその通りでございますなぁ。いや、全く素晴らしい。」
何故かまた評価が上がった!?見惚れてたのは、単に見た目でだけなんですけど!?
セレアとリアをそれぞれチラリと見てみると、2人の目が俺の方を見てうっとりとしていたりする。どうやら、こっちにも何か誤解を与えてるっぽい。
と言うか、狼人族は汎用性があるのか。それでセレアに興味を示した事にデューイさんはあんな反応をしてたわけね。有翼族にも何かそういった感じで選ぶに足る理由があるんだろう。しかし、セレアの時も今回も、そんな事は全然考えてないんだけどなぁ。
「では、この2名は控えさせておきましょう。せっかくの機会ですので、是非とも他の物もご覧いただきたいのですが、よろしいでしょうかな?」
「あ、はい。お願いします。」
「ありがとうございます。それでは、ご紹介を始めさせていただきましょう。お前達はこのまま部屋の隅で待機するように。」
「「はい。旦那様。」」
有翼族の2人の返事が重なって、部屋の隅に移動していく。その際、2人は固く手を繋いでいるのが目に入った。
やっぱり双子なのかな?とすれば、やっぱり離れたくないだろうなぁ。あの雰囲気だと、今生の別れを覚悟してるって感じだけど。
それから、最初の有翼族の2人も含めて、総勢88人の紹介を受けた。
人間族から亜人族に獣人族と、若くて綺麗な、もしくは可愛い子がいっぱいいたけど、やっぱり最初の2人以上に興味を引かれた人はいなかった。ついでに言えば、並ぶ人も。
やっぱり出てくる順番がおかしいって。それとも、俺の美的感覚とこの世界の基準が大きく違うんだろうか?まぁ、差別意識が美的感覚を歪めまくってる可能性は否定できないけど。
「では、こちらの2名が最終候補ですな。どちらに致しますかな?勿論、2名共と豪儀な選択をしてくださるのも、当方としては嬉しい限りな話ではございますが。」
言って笑い声を上げるジライさん。多分、冗談のつもりなんだろう。何せ、この2人は1人で65万エニーという結構な値段になっているからだ。
「そうですね。決める前に1つだけ、この2人に確認したい事があるんですが、直接聞いてみても構いませんか?」
「はい。何なりとお聞きくだされ。タカシ様からご質問があるそうだ。くれぐれも粗相のないように。いいな?」
「「はい。旦那様。」」
2人は静かに笑って答えたけど、どこか悲しそうに見える。これは聞くまでもなく、ビンゴかな?
「それじゃ、聞かせてもらうよ。正直に答えてくれ。例え、どんな答えでも俺は気分を害したりしないし、ジライさんにもそれを咎める事がないように俺から頼むから。」
「「は、はい。」」
困惑した表情で首肯する2人。
なんか、最初の頃のセレアを思い出す反応だなぁ。セレアも俺が何かを言う度に目を白黒させてたっけ。今じゃ驚く事の方が少なくなってるけど。
「2人は双子?」
「「はい。」」
何故そんな事を聞くのか分からないといった表情の2人。
「じゃあ、離れたくないないよな?」
俺の言葉に、金髪の方、シャーネって言ってた、が涙目になってしまい、青髪の方、シャーンって言ってた、は俯いてしまう。
「は・・・は、い・・・」
シャーネが涙声で答えを返してくれた。これで決まりだ。
「よし。それなら、ジライさん。2人共いただきますよ。」
ポカンとなるジライさんに、白金貨1枚と大金貨3枚差し出す。シャーネとシャーンも目を丸くして俺を見ている。
「よ、よろしいので?」
「ええ。姉妹が生き別れになるよりは、一緒にいた方が心配事も減るでしょう?」
「あ、いえ。そうではなく、タカシ様にとっては何もメリットがございませんぞ?」
まぁ、そう言われるだろうとは思ってた。
「いえいえ。いずれ必ず私の利点になりますから。」
予想していた事だから、あえて意味深に聞こえるセリフを返す。意味深な言い方をすると、実際には何も考えてなくても<いずれ分かる。>とか言えばそれ以上の追求はしにくくなるし、相手が勝手にいろいろ想像して煙に巻けたりする事が非常に多いのだ。我ながらやり方がコスい!
「ふむぅ・・・タカシ様には何か深いお考えがあるのでしょうな。私などには想像もつきませんが・・」
ホラ。勝手に深読みしてくれた。離れ離れになるのは可哀想だってくらいにしか考えてないのにな。
「いずれ分かりますよ。きっと。」
「はい。では、奴隷契約を行わせていただきましょう。」
「お願いします。」
俺がそう答えると、リアが複雑そうな顔をするから頭を撫でてやる。
正式な契約ができてない事なんて気にしなくていいのに。でも、ちょっと先を急ごうかな。後から入った方が先に正式契約してるってなってたら、心中穏やかじゃないかもだし。
そんな事を考えながら、シャーネとシャーンとの奴隷契約を結んで、ジライさんに見送られながら商会を後にした。外はもう暗くなり始めている。しかし、シャーネとシャーンも、セレアの時と同じく靴がないみたいだし、それだけは先に買ってあげないと。裸足の痛さは、この世界に来たばかりの頃に体験してる。これだけはさっさと解消させておきたい。なんだか、物凄く惨めな気分になったもんなぁ。
しかし、やっぱり女の子相手に初めっから呼び捨てのタメ口は、俺にはハードルが高い。主に、精神的な何かがゴリゴリ削られてる気がする。そうしておかないと、彼女達の為にならないって話だから頑張ってみてるけどさ。
遠方との通信手段が一般的ではないこの世界ですが、ジライさんは情報を商売の要と考えて、遠話の魔法を使える人間を雇ってまで情報収集に注力。ニーズに応える事で、自分の商会を大きくしてきたのです。この世界においては、先進的な考え方と言えるでしょう。
さて、主人公の予想を覆して現れた双子ですが、セレアとリアに出会った時に比べると主人公の反応が薄いです。これは、シャーネとシャーンの外見が2人に劣るという事では決してありません。ただ、セレアは主人公にとって初めての強烈な美人で、リアは初めてのエルフだったというだけの事なんです。
では、これにて第三章 第十九部の幕を下ろさせていただきます。最後までお付き合いいただいた皆様に感謝です。また次もお付き合いいただければ幸いです。




