魔術師ギルドの魔法講習 ~講習開始編~
今回、主人公が自爆します。
第三章 第十一部<魔術師ギルドの魔法講習 ~講習開始編~>是非最後までお付き合いくださいませ。
目を覚ますと、セレアもリアもまだ俺の腕に抱きついて密着したままだった。
「おはようございます。ご主人様。」
セレアが俺の首に腕を回して舌を絡めてくる。目覚めの刺激にはちょっと強過ぎ。別の部分も起きるぞ。
「おはようございます。タカシ様。」
セレアの唇が離れると、リアも首に腕を回して唇に吸い付いてくる。はい、完全に別の部分も起きました。
「おはよう。セレア。リア。」
セレア、リアと順番に軽く口づけをして、体を弄る。2人が嬉しそうに上と下に分かれて、お返しにくる。
起き抜けから2回戦目までをベットで、風呂場で4回戦目まで繰り広げてしまった。セレアとリアも大概タフだね。嬉しい限りです。
風呂を上がって、服を着てからソファーで並んで座る。2人ともベッタリくっついてきていて至福の状態だが、一応、やっておきたい事がいくつかあるから、一旦は自制しなくては。外はもう夕焼けに染まっているのだ。
「セレア。リア。これから少し出掛けるよ。」
「「はい。」」
「どのようなご予定ですか?ご主人様。」
「まずは、武器を新調しよう。ジェラルリードちゃんは本気の害意がなかったからよかったけど、次に会う奴がそうだとは限らない。そんな時に、リアの魔法以外に対抗手段がないって状況はマズイだろ?」
「そうですね。真祖やそのレベルの敵と遭遇する事なんて滅多にあることじゃないですけど、万一の場合には私の魔法だけでは対抗のしようがなさそうですから。ジェラルリードさんと会って、次元の違いを痛感しました。」
「私もそういう相手に無力なままではいたくありません。できれば、私も対抗手段が欲しいです。それが高価なものだという事は分かっていますが、お願いします。」
珍しくセレアが自分から自分の装備を強請ってきた。ジェラルリードちゃんの時に対抗手段が無かった事が相当に応えたらしい。もし、ジェラルリードちゃんが害意を持っていたなら、俺も同じような心境になっていただろう。守りたいものがあるのに、それを可能にするだけの力も手段もないなんて辛過ぎる。真面目なセレアなら尚更だろう。
「勿論。セレアには一生守ってもらうって約束したからな。」
「はいっ。ありがとうございますっ。」
頭を撫でながら言う俺に、セレアは嬉しそうな顔で耳をぴこぴこ動かす。
し、新技がきたっ!?実は狙ってやってんじゃないのか!?可愛過ぎるぅぅぅっ!!
デレデレなのを自覚しながらセレアの頭を撫で続けていたら、反対側から服の裾をクイクイと引っ張られた。そっちに顔を向けると、
「私も、タカシ様の事、一生お守りしますよ?私にも約束させてください。」
リアが少し膨れた顔で俺の顔を見上げて、拗ねたように言ってきた。
何この子!?する事も言う事も可愛過ぎるぅぅぅぅぅっ!!!
「う、うん。約束、してくれるか?途中で死んだりしないで、一生側にいて守ってくれるって。」
「はいっ。約束しますっ。」
心底嬉しそうな顔で、返事と同時に抱きついてくるリア。対抗するように、セレアまで抱きついてきた。
いかん、このままでは自制できなくなる。
最近は活躍してなかった鋼の理性と強靭な自制心をフル稼働して、宿を出た。自分で自分を思いきり褒め称えてあげたい。
セレアの凶悪過ぎる2つの感触に理性を吹き飛ばそうとするいい匂い、リアの柔らかい双丘の感触に折れそうなくらいの華奢な体。これらに耐え切れる奴がいるなら耐え切ってみろと言いたい。まぁ、他の奴には試させる気は微塵もないが。
そして、まずは魔武器屋で魔法の武器を購入。資金は潤沢過ぎるくらいに潤沢だから、店で最高の品を出してもらった。俺は柄に魔水晶が埋め込まれた魔力銀のバスタードソード《145500エニー》、セレアは柄に魔水晶が埋め込まれた魔力銀のショートソード《139600エニー》、リアはサイズが剣の物よりも大きい魔水晶が先端に取り付けられた魔力銀の杖《259000エニー》で、合計544100エニー。エラーデさんの所で買った武器の内、俺の剣《4250エニー》とリアの杖《11700エニー》はそれぞれの金額で下取りしてもらった。残念だけど、杖は2本もあっても使い道がないし、俺の剣も戦棍と合わせて3本になると、さすがに邪魔すぎるからだ。これで残金は2475347エニー。
セレア、そして特にリアは、あまりの金額に硬直していた。でも、魔水晶は武器に埋め込むと、魔法を使う際の使用魔力量を軽減してくれたり魔武器としての効果を上げる性質を持つという事らしいから、同じ魔力銀の武器を選ぶなら質の良い物を選ぶのは当然だろう。
何より、資金が潤沢な今っ、浮かれまくった俺には何を言っても無駄なのだっ。
ファンタジーの王道っ!魔力銀、ついにキタァァァァァァァァァッ!!!!
アダマンタイトに続いて、憧れの金属、魔力銀!!!!これに浮かれず、何に浮かれる!?
ちなみに、魔武器屋のおっちゃんに聞いた話によると、魔武器と呼ばれる魔法の武器には全て魔力銀が使われているとか。まぁ、あくまで売られている物に限っての話らしいけど。
当然の如く存在してくれてるらしいオリハルコンや、初耳ファンタジー金属の神鐡、緋色金、やっぱりいるらしいけど絶対に遭遇したくない最強種、竜の牙など、素材自体はいろいろとあるらしいけど、どれもこれも普通はまず手に入らないとか。さらに、仮に手に入ったとしても、武器に精製できる職人もまずいないらしい。素材自体がレア過ぎて、それを武器に精製する技術が伝わってないとの事。
しかし、それはドワーフなら何とかなるんじゃないかと思ってる。鍛治と言えば、やっぱりドワーフだろ?まぁ、こっちも幻の種族とか言われてるみたいだけど。それに、憧れは憧れだけど、そんな伝説級の物が易々と見つかる筈もない。見つかったらラッキーって事で。
「ご、ご主人様。本当によろしかったんですか?こんなにとんでもなく高価な物を・・・」
「す、少し目眩がします・・・」
「いいのいいの♪まだまだ資金は潤沢だし、無駄遣いしてるわけでもないんだからさ♪♪」
堅い声の2人に浮かれまくった声で返す俺。
魔力銀装備が手に入った上に、オリハルコンの話まで聞けて、俺のテンションは絶好調。もう抑える気にすらならない。
「・・・嬉しそうですね~。王都で武器を買われた時もそうでしたけど。」
リアが不思議そうに聞いてくる。
「うん。アダマンタイトとか魔力銀とかオリハルコンとかってなかったからさ。俺にとってはお伽噺の中の憧れの金属みたいな感じなんだよ。」
「あぁ。なるほど。」
「それは確かに嬉しいですね。憧れが現実になるんですから。」
街中なので、俺が異世界人だという事は口にできない。どこで誰に聞かれて面倒な事になるか分からないからだ。しかし、2人ともそれを察して口にせずに、それでも俺の気持ちを分かってくれるのが凄く嬉しい。本当にいい子達に慕われているもんだ。
それから、魔術師ギルドにも足を伸ばした。魔武器屋のおっちゃんと少し話し込んでしまったから、周囲はもう薄闇に包まれ始めている。まだ魔法の講習ってやってくれるんだろうか?
魔術師ギルドの建物に入って、カウンターに向かう。
「すみません。まだ魔法の講習ってやってもらえますか?」
「冒険者か?あんた。」
受付の金髪碧眼ロン毛イケメン青年が随分デカい態度で問いかけてきた。冒険者ギルドの受付と違って教育がなってない。こっちの質問に答えてから、自分の質問をするのが礼儀だと思うんだが。でもまぁ、こっちは教えてもらう立場なので素直に答えておく事にする。
しかし、やはりイケメンには礼儀が欠けている。イケメンが滅べば、今よりも世界が平和になるのは間違いなさそうだ。モブ男万歳!
「ええ。そうです。」
セレアとリアを一瞥すると、鼻を鳴らして
「帰れ帰れ。もう夜になるってのに、鉄程度の冒険者相手に時間割いてされるかよ。」
言いながら、手をシッシッと振ってきた。
また、鉄級と勘違いされてる。採掘場のイケメンといい、俺はそんなに弱そうですか?それなら、変に騒がれてしまっているのもすぐに治まるかも。いや、むしろ噂の本人とは認識されずにスルーされる筈っ。現に、この金髪イケメンは気付いてないっぽいしっ!
まぁ、この態度はムカつくが、時間外ってのなら仕方がない。
「そうですか。残念です。では、時間を改めて出直します。」
「お~。そうしろ。」
踵を返そうとして振り返ると、怒り心頭といった様子で体を震わせるセレアが視界に入った。嫌な予感がして、リアの方をチラリと見てみると、正に、怒髪天を衝くといった感じで杖を握り締めていたりする。
マズイ。非っ常にマズイ。確かに金髪イケメンの態度は悪いが、それを正させるような行為は俺に対する注目をさらに上げかねない。だから、採掘場のイケメンに対してのようなブチギレはマズイのだ。
「お、落ち着け?セレア。リア。時間外に来たこっちにも落ち度はあるんだから。な?」
「しかし、ご主人様を」
「よく分かってんじゃないか。馬鹿っぽい頭にも常識ってのは詰まってェェッッッ!?」
セレアの言葉を遮った金髪イケメンのセリフが言い切られる前に、右側から飛んできたドロップキックに金髪イケメンが吹っ飛ばされ、壁に激突する。
「もっ、申し訳ございませんっっ!!うちには真性の馬鹿が非常に多く、度重なる無礼を働いた事をどのようにお詫び申し上げればよいものかっっ!!!!誠にっ、誠に申し訳ございませんっっっっ!!!!!」
いきなりな現象にポカンとなってしまっている俺達に、金髪イケメンを蹴り飛ばした単眼鏡の女性が乱れたロングヘアーの赤髪もそのままに、カウンターで自分の顔を押し潰さんばかりの勢いで頭を下げてきた。
「あ、い、いえ。時間外とは知らず、押し掛けたこちらにも落ち度はありますから。ど、どうか頭を上げてください。」
「おっ、恐れ入りますっ。寛大なお心に痛み入りますっ。」
赤髪女性が頭を恐る恐る上げる。
あ、この人、魔術師ギルドのギルド長さんだ。昨日、門の所まで飛んできてたんだよな。魔術師ギルドのギルド長だって言うのに、メチャクチャ若いのにビックリしたからよく覚えてる。多分、俺と同い年くらいだ。
しかし、真性の馬鹿って・・・なかなか言うなぁ。しかも、ドロップキックとは。美人さんなのに、結構過激な人である。
「あの、それで、本日はどのようなご用件でお越しいただいたのでしょうか?時間外と仰っておられましたが、その・・・・非常に申し上げにくいのですが、我がギルドの各業務に時間指定の業務というものはございません。内容によっては、受付可能な者が不在の為にご対応できかねるものはございますが・・・」
「あ、そうなんですか?魔法の講習をお願いしたくて伺わせていただいたんですが・・・」
俺の返答に、赤髪ギルド長、レンシディオさんの額に青筋が浮かぶ。
「さ、左様でございましたかぁ。しょ、少々お待ちいただいてもよろしいでしょうか?」
「は、はい。」
怒りを噛み殺したレンシディオさんの笑顔にビビりながら首肯する。こ、怖過ぎる・・・
レンシディオさんは、ようやくフラフラと立ち上がった金髪イケメンに凄い勢いで詰め寄り、両手で胸ぐらを掴んで持ち上げる。腕力スゲェ・・ギルド長、魔法使いじゃないのか?
「貴方、一遍死んでみる?真祖吸血鬼を無傷で撃退された方になんて口を叩いてるわけ?リスタニカ魔術師ギルドを壊滅させる気?タカシ様が寛大なお心の持ち主でなかったら、全員あの世行きだったわよ?しかも、魔法の講習が時間外でできない?いつからそんな運用になったのかしら?ギルド長である私にも話を通さずにそんな事を決められる程に貴方は偉い人だったのかしらぁぁぁ?」
地獄の底から響いてきているような声音で言うレンシディオさん。金髪イケメンは息が詰まって苦しいのか、微かな呻き声を上げている。顔中が真っ赤になり、ちょっと青くなり始めてたりもする。窒息してんじゃないか?
しかし、人聞きの悪い事を言わないでいただきたい。ギルドを壊滅だとか全員あの世行きだとか・・・どれだけ危険人物だと思われてるんだ。目立たず、静かに、平和平穏、無事無難が信条な人畜無害のモブ男その1なのに。
くそ。それもこれも全部、ジェラルリードちゃんの悪戯のせいだ。今度会った時に、セリフに思いっきりダメ出ししてイジメてやる。
「ねぇ?聞いてる?自分が何を仕出かしたのか、分かってるの?」
「あ、あのぉ?そろそろ手を離してあげないと、その人死んじゃうような気が・・・」
恐る恐る声を掛けると
「あら?」
ドサッと金髪イケメンを地面に落とす。落ちた時に、なんかゴンッって凄い音がした。これは死んだか?
「失礼致しました。つい、怒りに我を忘れてしまって。」
言いながら、こっちに戻ってくるレンシディオさん。途中で「グェッ」という声が聞こえたから、金髪イケメンを踏んできたんだろう。生きてるみたいで何よりだ。
「魔法の講習でございましたね。かしこまりました。講習を受けられるのはそちらの獣人の奴隷でしょうか?」
あ、そっか。セレアも受けようと思えば受けられるのか。
「セレアも一緒に受ける?治癒魔法は使えるって言ってたけど。」
セレアは少し考えた後に、
「狼人族は、種族として保持魔力量が少ないので、補助程度のものしか扱えるようにはなれません。もし、それでもよろしければ、少しでも力を付けさせていただきたいです。」
ハッキリとそう答えた。まるで、自分が力を付けたいが為だけに言っているように聞こえるセリフだが、その言葉の裏にある、俺を守る為の力は少しでも多く必要だという気持ちが滲み出してきている。
可愛い奴め。宿に帰ったら、また徹底的に可愛がってやる。
「うん。それじゃ、俺とセレアの2人をお願いします。」
「かしこまりました。では、僭越ながら、私、レンシディオが指導させていただきますので、よろしくお願い致します。」
ギルド長直々の指導!?それって、かなり破格な待遇ではなかろうか?普通、組織の長がそんな事はしないような気がするんだけど。
「よろしいんですか?ギルド長ともなればお忙しい身でしょうに。特に、私は魔法は何一つ使えない完全なド素人ですよ?」
「勿論です。万が一にもまた無礼があっては私のギルド長としての面目が立ちませんし、度重なる無礼のお詫びに、これくらいはさせていただかないと私の気が済みません。ましてや、タカシ様は部下への指導の至らない私の状況にまで気に掛けてくださるような思慮深く、お心遣いの細やかな御仁。そのような方こそ、魔法は使われるべきですから。」
なんか、段々とレンシディオさんの口調が熱くなってきてる。これはかなり本気語りっぽいぞ。
「多少の才に溺れ、他者を見下し愚弄する輩など本来は我がギルドには必要がございません。魔術、魔法の真髄は、世界の叡智の結晶にして、闇の深淵。思慮に欠ける輩には到底及ぶものではないと、私は考えておりますから。愚者の浅慮による悲劇は過去に何度も起きています。約50年前のヴェスタリカ魔術師ギルドでは永遠の命の法などどいう幻想に取り憑かれた愚か者たちがその実験を行い、一体何人の無辜の民が犠牲になった事か。魔術、魔法を扱う者に必要なのは、その才能よりもその心、精神なのです。副ギルド長はどうも異なる考えのようですが・・・」
一頻り語った後、ハッと我に返るレンシディオさん。
「も、申し訳ございません。長々とくだらない話を・・・」
「いえ。レンシディオギルド長のお考えは素晴らしいと思います。力を振るう時には振るう人に相応の覚悟と責任が必要です。力は扱う人によって、人を殺す力にも守る力にもなるものですから。」
1回言ってみたかったセリフベスト10に入るセリフを口にしてみた。うん。やっぱり恥ずかしい。
「その通りですっ。力は、所詮ただの力っ。要は扱う者次第なんですっ。」
ギルド内のこちらに注目している魔法使いの面々に向き直るレンシディオさん。
「皆さんっ。お聞きになりましたかっ?真祖吸血鬼を撃退される程の実力者であり、最高位である白金級の冒険者であられるタカシ様のお考えをっ。真の強者とは、このようなお考えを持ち、無闇に力を誇示したりせず、相手を思える余裕を持つタカシ様のような方の事を言うのですっ。」
レンシディオさんの言葉が終わると同時に、魔術師ギルド内が大きな拍手に包まれる。
イヤァァァァァァァァァァッ!!!ヤメテェェェェェェッッ!!!!恥ずかし過ぎて死ねるぅぅぅぅぅぅっ!!!!!!セレアもリアも、さも当然みたいな顔で誇らしげに胸を張らないで!?ただの言ってみたかっただけのセリフなのにぃぃぃぃぃぃぃっ!!!!
・・・・・ミスった・・まさか、こんな事になるなんて・・・注目されるのヤダよぅ・・・もう帰りたいよぅ・・・・
「あ、また話が逸れてしまいましたね。申し訳ございません。では、指導を始めさせていただきますので、こちらにどうぞ。」
こちらに向き直り、満面の笑みで言うレンシディオさん。
やっぱり帰るわけにはいかなさそうだ。こうなったら、さっさと覚えるものを覚えて、さっさと帰ろう!
魔力銀製装備を手に入れて、主人公は浮かれ過ぎていたようです。自ら目立つ方向に動いてしまいました。浮かれ過ぎは禁物というお話でした(笑)
では、これにて<小心者の物語>一旦の閉幕とさせていただきます。最後までお付き合いいただいた皆様に感謝です。また次もお付き合いいただければ幸いです。




