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魔石の街 リスタニカ

新章突入で、舞台は新しい街へと移ります。


第三章 第一部<魔石の街 リスタニカ>、是非最後までお付き合いくださいませ。

王都を出発して、3日目の夕方。俺達は無事に次の街、リスタニカに到着した。セレアが言うには、この街は魔石の採掘が盛んで、王国流通量の3分の1がここで採れるんだとか。それで付いた街の別名が魔石の街。なんかカッコいい。


ん?道中?大したことはなかったよ?

街から1日近く離れた辺りから、ゴブリンにコボルト、オーガ、オークとRPG定番のモンスターがちょこちょこ出てきたけど、数が少ないから基本的に瞬殺。あ、でもデッカイ蟷螂と蜂のモンスターが出てきた時はビビった。

蟷螂のモンスター、大蟷螂(ヒュージ・マンティス)は街道脇の森から飛んできたらしく、いきなり上から降ってきたんだよな。でも、また俺の勘が働いてくれて上からの一撃はあっさり回避。セレアが鎌と背中の羽根が素材になるっていうから、2つの鎌を根元から斬り落として、柔らかい腹を斬り裂いてトドメ。素材をほぼ完全な形で回収に成功。巨大女王蟻(ジャイアントクイーンアント)の時もそうだったけど、前触れに気付いたわけでもなく連続で危険が回避できてるってのは、もしかしたらコレも何かのチートなのかもな。理屈がよく分からないから、過信はしないけど。

んで、蜂。こいつらはマジで厄介だった。体のサイズがゴブリンくらいもあるのに、ブンブンと飛び回って剣が届かない所から毒針を撃ちまくってきやがった。いやまぁ、数が少ないから全員回避は余裕だったんだけどね。リアが炎の魔法で一気に焼き払ってくれたから、戦闘時間自体も大したものにはならなかったし。

しかし、今はリアがいるからいいけど、早めに魔法は覚えないとマズイかなぁとは思った。リアがいなけりゃ、今回の蜂のモンスター、毒蜂(ポイズンビー)はかなり厄介だっただろうからな。



まぁ、そんな感じで道中は大したことは起きなかったわけだけど、問題は街に着いてから起きた。パーティー登録をしていなかったせいで、リアは主人不明の奴隷という扱いになり、身元確認の為の詳細な事情聴取をされたのだ。逃亡奴隷には先がないせいで、周りを巻き添えにするようなムチャクチャをやらかす奴がいるからだという。そんな事があるんなら、こんな警戒をするより奴隷の扱いを改善しろよと思うが、言ってどうにかなるものでも無し。俺とセレアは先に入れると言われたが、リアだけを放っておくわけにもいかないから大人しく待つ事にした。



んで、街の中に入れたのは日が完全に暮れてからだった。俺のリアに関する証言を冒険者ギルドへ連絡して、魔法による遠話で王都の冒険者ギルドからその裏付けを取れたから良かったものの、そうでなかったらリアが入れないトコだった。早い内にパーティー登録はしてしまっておこう。

「すみません。タカシ様。私のせいで・・」

シュンとなってしまっているリア。

「リアのせいじゃないよ。パーティー登録の事をすっかり忘れてた俺が悪いんだ。王都ではあっさり入れてたからうっかりしてた。ごめんな。ヤな思いさせて。」

「いいえっ。タカシ様が謝る事なんて何もないですっ。」

「ありがと。とりあえず、この先の為にもパーティー登録だけは先にすませておこっか。」

「「はい。」」

2人の返事が重なり、冒険者ギルドへ向かう。


歩き始めると、セレアは、立ち位置が僅かに後ろ気味ではあるものの俺の右隣へ。リアも若干後ろ気味ではあるものの左隣へ移動してくる。セレアは前から隣に来る事はあったけど、この街が見えてきた辺りから、何故かリアも隣に並んでくるようになった。しかも、その前から明らかに立ち位置が近くなってる。

王都を出た頃くらいまでは、後ろに控えるような立ち位置で、後ろを向かないと全く視界に入らなかったし、手を伸ばしたらやっと届くかなって距離感だったのが、気が付いたら歩く時に手が当たるくらいの距離に。完全に並んで歩かないのは主人と奴隷の立場上の問題からなんだろうけど、この構図は一体何なんだ?妙にドギマギするんですが。まぁ、少しは気を許してくれたって事かな。最初はとんでもない誤解をさせてたせいで態度も堅かったけど、ちょっとフランクになった気がするし。


そんな事を考えている内に、門番の兵士に教えれらたリスタニカの冒険者ギルドに到着。ここのギルドも夜間営業は実施しているらしい。お疲れ様です。

「こんばんは。本日はどのようなご用件ですか?」

「パーティー登録をお願いします。こっちのエルフの子を追加で。」

言いながら、冒険者証をカウンターに出してリアを隣に立たせる。

「かしこまりました。では、登録料80エニーをお願いします。」

なぬ?80エニー?王都のギルドよりも高いのか。しかし、ボッタくってるって感じはしない。街によって違うものなんだろう。素直に払ってパーティー登録を済ませる。

「はい。完了しました。依頼も見ていかれますか?」

「いや、それは明日でいいです。今日はもう休みますから。」

「かしこまりました。では、またよろしくお願いします。」

あっさりとパーティー登録が終わり、とりあえず、ギルドを出る。


「さて、宿を探すか。ここにも風呂付きの宿があればいいんだけどなぁ。」

「は、はい。そうですね。」

セレアが少し赤くなり、もじもじしながら上目使いで期待を込めた視線を向けてくる。い、いやまぁ、そゆことを考えてなかったって言ったら嘘になりますけどね?そんな目で見ないで。暴走するよ?

「明日は依頼を受けるんですよね?タカシ様?」

セレアの逆サイドから物凄くトゲのある声が刺さってくる。

「お、おう。そのつもりだ。資金はまだ充分にあるけど、少しだけこの街に滞在しようかなって思ってるし。」

「じゃあ、しっかりとお休みくださいね?お体に障りますから。」

思いっきり釘を刺された。

うわぁい。頭の中の邪念が完全にバレてるよ~。道中もセレアの頭を撫でたり、セレアに肩を寄せられたりしてるトコいっぱい見てるもんなぁ。相当に鬱陶しかったに違いない。きっと前までの俺ならキレて暴れてるような状態だったもんね。ごめんなさい。自重しようにも、セレアが可愛いからできないんです。セレアが可愛過ぎるのが悪い。だからね?セレア?恨みがましい目でリアを見ないの。どうせ俺は自重できないから。



そして、屋台が出ている所を見つけて、セレアとリアの分も串焼きを買いつつ、宿の情報を入手。風呂付きの宿って言った時のリアの視線が痛かった。いや、そういうのを抜きにしても風呂には入りたいのよ?セレアが嬉しそうに尻尾を振ってくれていたから、間違いなく自重できないけど。



で、屋台のおっちゃんに教えられた宿、満月亭に到着。個室毎に風呂が付いていて、さらに食事付きという結構な高級宿らしい。実際、外観はかなり豪華だ。

ちなみに、ここまでの道程は、字が読めない俺1人の頃と違って、セレアが俺の事情を知ってくれているから、セレアが誘導してくれてあっさりと到着。俺が字を読めない事をリアに悟らせないように上手くやってくれた辺りに、セレアの気配りの細かさを感じられて素直に嬉しい。


受付に行くと、筋骨隆々の白髪初老男性がにこやかに迎えてくれる。受付が厳つ過ぎやしませんかね?

「ようこそ。満月亭へ。一泊朝夕の食事付きで300エニーとなります。ご入浴と室内の灯りがご入り用の際にはご自身で魔石に魔力を注いでいただくか、ご依頼いただく事になります。ご依頼の場合は1回100エニーとなっております。ご一泊でよろしいでしょうか?」

お?ここは銀月亭と違って連泊予約ができるのか?

「とりあえず2泊、2部屋お願いできますか?」

初老男性が怪訝な顔をする。ここでもか。なら、セレアとリアが不快な思いをしないように釘を刺しておかないとな。

「獣人と亜人の奴隷に部屋を宛がわれ!?」

俺が少し目付きを鋭くすると、初老男性はセリフを中断させて額に一気に汗を浮かべる。

「変わってると言われますが、俺は俺のものに愛着を持って割と大切にする質なんですよ。」

「は、はい。」

絞り出すような声で返答する初老男性。

「それを、他人に蔑ろにされるような事があったりしたら、非常に気分が悪くなります。意味はお分かりいただけますか?」

「はっ、はいっ。さ、差し出がましい事を申し上げまして、誠に申し訳ございませんでしたっ。」

深々と頭を下げる初老男性。気のせいか、体がちょっと震えてる。そこまでビビらなくても。貴方の方がよっぽど厳ついから、内心ビビってるのは俺の方なんですけど。

「いえ。ご理解いただければ充分です。」

初老男性はこちらを伺うようにゆっくりと頭を上げるので、揉め事の種になっても困るから営業スマイルを浮かべておく。初老男性は胸を撫で下ろして

「大変失礼致しました。では、お部屋までご案内致します。」

そう言って、俺達を部屋の前まで案内して、鍵を渡して受付に戻っていった。

「タカシ様は凄く雰囲気が変わられるんですね・・・」

「あ、ごめん。怖がらせたか?」

「あ、いっ、いいえっ。そういう意味ではないんですけど・・・普段は優しくて柔らかい雰囲気なのに、意外、と言うか・・それも、完全にセレアさんの為、ですよね?獣人の奴隷の扱いは酷いですから・・」

「セレアの為ってわけでもないよ。あの言い方だと、亜人族であるエルフの扱いも大概っぽいし。俺は俺の気に入らないものに対しては心が狭いんだよ。」

「タカシ様・・・ありがとうございます。私は正式な奴隷でもないのに・・・」

「正式ではなくても暫定的であっても、今はリアも俺のものだろ?小さい事、気にすんなって。」

俯いてしまったリアの頭を撫でると、リアはバッと頭を上げて顔を真っ赤にしながらグッと俺に詰め寄る。ちょっ!?控えめだけど、柔らかいものが肘に当たってるんですけど!?近い近い近い近い!!!

「い、いいいい、今っ、あ、頭っ、なっ撫でてくれましたか!?!?」

「お、おう。なんかつい・・・」

リアは両手で顔を挟んで、耳まで真っ赤になりながらまた俯いてしまう。

え?何?この反応。どう見ても照れて喜んでませんか?

「あ、あの、その・・・ど、奴隷の身で、あ、厚かましいお願いなんですけど・・・その、も、もしよかったら、も、もう1回・・・」

もじもじしながら、か細い声で言うリア。何、この子。こんなに可愛かったっけ?

「う、うん。まぁ、撫でるくらいいくらでも。」

言ってリアの頭を撫でる。長くて尖った耳が真っ赤になりながら、ピクピクと動いている。

「ご、ご主人様。」

セレアが逆サイドから俺の服の裾を控えめに引っ張る。

「その・・・わ、私も撫でて、ほしい、です。」

こちらも真っ赤になりながら、上目使いで言ってくる。もしかして、対抗してる?メチャクチャ可愛いんですが。

「お、おう。」

もう片方の手でセレアの頭を撫でると、耳が完全に垂れて尻尾が大きく左右に揺れる。


何、これ?まさかのハーレムフラグ立ってる?いやいやいやいや、ないって。それは無い。セレアだけでも俺には有り得ないような相手。元の世界でこんな関係になれてたら、俺は次の日にはトラックに跳ねられて死んでる。それか、植木鉢が脳天直撃コース。それが、いくらなんでもリアみたいな美人、いや、今はなんか鬼のように可愛い子に変身してるけど、とにかくそんな子にまでとか有り得ない。

うん、これはアレだな。セレアに想いを寄せられてるせいで、過去最高にまで自惚れが増長しまくっているに違いない。頭を撫でられて喜ぶって事は、兄貴みたいに頼りにされてるって感じだ、多分。リアも奴隷の身である以上は辛い思いを強いられてきたんだろうし。そう考えたら納得。どうも俺のセレアやリアに対する扱いは、奴隷としては破格みたいだもんな。頼りにもしたくなるってもんだろう。


「ほ、ほら。キリが無いからそろそろ飯食って休もう?撫でるくらい、またいつでもできるからさ。」

2人揃って満足する気配を見せないから、仕方なく中断を宣言して手を離す。セレアはいつもの事としても、リア。君まで不満そうな物足りなさそうな顔をするんじゃない。セレアと同じリアクションを取ってると勘違いするぞ?

「「はい。」」

2人重なった返事は、珍しく限りなく不満そうなものだった。セレアはこの後にひたすらイチャつくってのに。


俺とセレア、リアにそれぞれ分かれて部屋に入り、俺はセレアをいきなりお姫さま抱っこで抱え上げる。

「ご、ご主人様?」

戸惑うセレアの唇を塞ぐ。

「夕食前だけど、我慢限界。襲っていい?」

俺の言葉にセレアは赤くなりながらも表情を明るくして、首に腕を回して抱き付く。

「はいっ。たくさん可愛がってくださいっ。」

そう答えて、唇を吸ってきた。




結局、夕食前に2回戦、夕食後には部屋に備え付けの風呂でイチャつきまくって1回戦。風呂の準備は、まず俺が水の魔石に触ったら、凄い勢いで水が出て一気に浴槽が満タンに。もう1つの発熱の魔石を触ったら、ものの数分で水が暖まってお湯になった。魔石って便利♪

んで、ベットに移ってからさらに2回戦と、ここまでの道中に我慢していた分も合わせて大噴出した。セレアも前よりもさらに積極的で、甘えん坊モードも全開。終始、全力で体を密着させて擦り寄ってきていた。悶え死にそうになるくらいに綺麗で可愛くて、さらに、妖艶さまで手に入れたみたいで、ますます自重できる気がしない。する気もないんですけどねっ。





そして、翌早朝。目を覚ますと

「おはようございます。ご主人様。」

朝の挨拶とともに、口づけをするセレア。寝覚めから俺をのぼせさせる気ですか?

「おはよ。セレア。」

口づけと共に抱き締めると、ぎゅっと抱き締め返される。これ、宿に泊まった時の日課になりそうだな。なんてバカップル。

「少しの間、この街に滞在されるというお話でしたが、本日は何かご予定はありますか?」

「とりあえずは依頼だな。資金に余裕を持ちたい。複眼の宝玉が売れりゃよかったんだけど。」

「本来は加工に時間のかかる物ですし、まだ王都から近いですから、話題になるかもしれない事は避けた方が良いという事ですね。」

「そ。無駄に目立つ事は避けたい。」

「・・・・・しかし、ご主人様のお強さでは目立つのは避けられないような気がします。依頼の遂行を私にお任せしてもらえれば、そんな事もないかと思いますが。」

「ヤダよ、そんなの。それなら、多少目立っても構わない。」

「ご主人様・・・」

唇を塞ぎ舌を絡ませながら、俺を思いきり抱き締めてくる。俺も抱き締め返しながら、セレアの舌を吸い味わう。って、いかん。コレ、スイッチが入る。自重しないと。



無理でした。だって、セレアの目が潤んで、ねだるみたいに見つめてくるんだぞ?耐えられる筈がない。むしろ、1回で終わらせた事を褒めたいくらいだ。

しかし、セレアが凄く積極的になってる気がする。昨日もそうだったけど、直接的にねだってくるようになっているのだ。嬉しい限りだけど、ダメ人間街道への扉が大きく開いたような気もしなくはない。自重する気は、やっぱりないけど。あ、これ、もうダメ人間だわ。



その後、朝食を取ってから、またセレアにリアを呼んできてもらう。リアは呼びに行ったセレアと一緒に戻ってきた。もう準備は済んでいたらしい。待たせてごめんね。

「今日はギルドで依頼を受けにいこうと思ってる。大丈夫そうか?」

「「はい。」」

「んじゃ、行くとするか。2人とも、くれぐれも無理はしないようにな。」

「「はいっ。」」

2人のいい返事を受けて、冒険者ギルドへと足を向けた。


宿を出ると、やっぱり2人はそれぞれ俺の両側に並んできた。セレアはさっきの余韻のせいか腕を絡めてきている。まぁ、街中なら危険な事もないからかもしれないけど。

「お邪魔では、ありませんか?」

「全然。むしろ、嬉しいよ。」

セレアは少し不安げに聞いてきたが、俺の言葉で一気に嬉しそうな表情に変わり、少し強く腕を抱き締めて肩に頭を寄せてくる。いや、本気で嬉しいんだけどね?相変わらずムチャクチャいい匂いはするし。でも、柔らかい感触とのコンボはヤバイ。主に理性的な意味で。

「・・・街中だけにしてくださいね。そういうのは。」

トゲだらけのリアの声が刺さる。

「勿論です。ご主人様を危険に晒すなんて有り得ません。」

それに対して、自信たっぷりに答えるセレア。いや、リアが言ってるのはそういう意味じゃないと思うよ?自重しろって意味だと思うよ?させる気はないから言わないけど。だって嬉しいし。耐えてください。ごめんなさい。

リアの態度の変化を自惚れの一言で済ませてしまっているのは、決してリアが好みのタイプではないからという事ではありません。むしろ、好みのタイプです。ですが、リアの最初の態度がかなり堅かった事から、好かれているとは思っていない為、感じたまま素直に受け取る事ができないでいるのです。


では、これにて第三章 第一部の幕を下ろさせていただきます。最後までお付き合いいただいた皆様に感謝です。また次もお付き合いいただければ幸いです。

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