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9話 作戦名は「男のロマン」

 影丸さんから貰った巻物に記憶されていた術は『紫電』と言う名前の術だった。

 この術は体を雷化させる術で移動速度と攻撃力を爆発的に上昇させる……らしい。

 頭では理解しているのだが、上手く術が発動しない。転写の術で覚えた後、影丸さんに見てもらいながら練習を繰り返したのだが、結局部分的にしか雷化出来なかった。

 影丸さんは笑いながら精進しろなんて言っていたが正直使いこなせる自信は全く無い。


 しかし、この世界に限り僕の人生はダダ甘であることを忘れていた。

 疲れはて借りた部屋でゴロゴロしていると、久しぶりに表れた神崎さんから暇ならステータスの確認でもしたらどうかと言われた。

 そう言われればこっちに来てから一度も確認していなかったなぁ……

 べ、別に神崎さんに言われたから確認するわけじゃないんだからね! 元々しようと思っていたんだから!

 ……我ながら見事なツンデレっぷりだね。今度武さんか陽向にやってみるかな?

 ……やめとこう。僕も命が惜しい。


 名前:宇江原 和泉  Lv:10 Job:忍者Lv:20・ノービスLv:10

HP:500/500 MP:330/330

力   :30

素早さ:50

体力 :32

魔力 :65

器用さ:63

運   :25


 スキルP:335P(B:35・J:300)

 スキル:

 狩人の目・筋力アップ(小)・医療知識・電光石火・魔法付与師・初歩魔法・家事・火忍術1・

 土忍術1・金忍術1・水忍術1・木忍術2・光忍術1・闇忍術1・回避術2・体術2・剣術2・

 忍び足・隠密


 となっていた。

 スキルPが二つに別れているけどこれは……?


「それはですね~JpジョブポイントBpベースポイントですよ」


「次いきなり出てきたら切るから。それで? JpとBpって?」


「さらっと怖いこと言いながら質問しないで下さいよ……

 Jpはそのジョブ限定のスキルに、Bpはジョブ全体を通して適用されるスキルに使えるポイントですよ。」


「ふむ」


「今の和泉様なら。忍術などのスキルはJpから。

 魔力消費減少などのスキルはBpから優先的に消費されます」


「結構面倒なんだね~この世界の人はよくやるよ」


「スキルをポイント消費で取得できるのは和泉様達だけですよ」


「あ~そっか。これもチートなんだ」


「恩恵って言ってくださいよ~」


 神崎さんは無視してスキルを確認しよっと。


「無視し~な~い~で~」


 スキル一覧を開くと結構な数のスキルが表示される。

 種類多いなぁこれコンプできるのかな?


「出来ませんよ。Lv99まで育てても全てのスキルは取れません。

 ですので、しっかり確認して自分の伸ばしたいものから取ってくださいね?

 一応リセットもありますけど~」


 ふむふむ。となると伸ばすべきは……


 とりあえず忍術、体術、回避術を中級へ上げる。剣術は……いいや、とりあえず保留で。

 これでJpは65Pを消費した。中級へは各10Pの消費で取得できたが、木属性忍術だけは半分のPで取得できた。

 多分だけど、転写の術で雷遁の中級忍術を形だけでも覚えたのが聞いているのでは無いかと思う。

 Bpの方は魔力強化、魔力消費減少、魔力回復をそれぞれ新たに取得して各15Pの消費。

 この詠唱省略って忍術にも適用されるのかな?

 とりあえず強化もしたし、お風呂に入ってさっさと寝よ。


 翌日、案の定急に紫電が使えるようになっていた為影丸さんに怪しまれたが笑って誤魔化しておいた。

 また他の属性も使えるように巻物を借りて転写の術を使っておいた。

 これ順番逆の方がよかったかな? ポイントの節約になったし。


◆◇◆◇◆◇◆◇


 里に来てから一ヶ月がたった。忍術は順調に上達しているが、近接戦闘に関しては行き詰まった感じがする。

 そこで影丸さんに相談しようと彼の家を訪ねると里の若い男性忍者が集まっていた。

 ふむ、何やら楽しい匂いがする……とりあえず会ってみますか。

 とても面白そうなので影丸さんの家に侵入する事にする。


 影丸さんの家はもう昼だと言うのに雨戸を閉めて全体的に暗くしていた。


「諸君! 時は満ちた。今こそ作戦を結構する時ぞ!」


「「おおーー!」」


「今宵、我らは桃源郷へ赴くぞ!」


「「おおーー!」」


 ふむふむ、どうやら本当に楽しそうな事になっているみたいだ。僕の勘も冴えてるな~。


「いいか。女たちには感ずかれるなよ」


「何でです?」


「今宵の作戦に支障が出るからだろう。何を今さら聞いてくるのだ」


「そりゃ初耳ですし」


「和泉は敵方だからな。まぁしょうが……な……い。

 和泉だと! どこだ! どこにいる!」


 いや~この術凄いな~桜華さんに教わっといてよかった。


「隊長! 足元であります!」


 む、鋭いのが一人いるじゃん。まぁ出てあげるか。話しも出来ないし。

 僕は影丸さんの影から這い出した。


「実は影丸さんに相談がありましてね?」


「待て待て! それはお頭の影潜りの術だろう! 何故和泉が使える!」


「え? この間教えてもらいましたよ?」


 驚いたことに桜華さんのチャクラは里で唯一の闇の性質を持ってた。なので同じく闇の性質がある僕によく術を教えてくれるのだ。

 ちなみに妹である桃華は火の性質とのこと。惜しい。……惜しいか?


「むう……お頭め……闇の術はただえさえ破りづらいと言うに弟子までつくりおって……」


「それでですね、僕最近近接戦闘のことで悩んでいるんですよ~」


「待て待て待て! 何故普通に相談してくるんだ!? この状況見れば普通わかるだろう?」


 僕は改めて周囲を見回す。

 うん。男しかいないね。実にむさ苦しい。


「そうか!」


「おお、わかってくれたか!」


「衆道の集まりですね!」


 衆道とは言わずもがな◯モの人達の事だ。

 あれ? じゃ僕も危ないのかな?


「違うわ! 衆道は武家さんに使う言葉だ!」


「あ、そうなんですか。へぇ~やっぱりその道の人の話しは勉強になるな~」


「違う! 俺達はそんなんじゃない! この集まりは今晩の覗きの作戦を……あ」


 覗きと言えばお風呂か。

 この里に個人所有のお風呂は無い。しかし、この里には温泉が湧いており里のみんなはそこを利用している。


「へぇ~お風呂を覗こうと? 楽しそうですね~」


「女に知られちまったらしょうがない!

 お前達! 和泉を捕まえて情報が漏れるのを防ぐぞ!」


 影丸さんの言葉で部屋に集まっている男達から殺気が迸る。

 盛り上がるのはいいけど一つ訂正させてもらいたい。


「女? 僕男ですよ?」


「騙されないぞ! こんなに女性らしい男なんて見たことねぇ!」


 むさい男衆からまた叫び声が聞こえる。

 地味にダメージがデカイ言葉を言わないでほしい……


「いやいや、本当に。僕男ですから」


「……本当か?」


「嘘ついてもしょうがないでしょ?」


「てことはあれか? 男だと黙っていたまま一月以上お頭と生活してたのか?」


「あ~そうなりますね」


 今度折を見て謝んないと。許してくれるかな?


「許さねー!」


 いきなり男衆の一人に拒否された。

 てか、あんたに許してもらう事なんてないよ!?


「お頭は皆のお頭だぞ!」


「それを独り占めするなんて……」


 おいおい、何だか空気が悪くなってきたよ?


「和泉。一つ確認だが」


「何ですか?」


「お頭と一緒に風呂へ入ったか?」


「はぁ~?」


「大事な事だ! 答えろ!」


「入ったこと無いですよ。

 僕はみんなが寝静まった後に一人で入っていますし」


「よし……ならお前を男と見込んで聞きたい。お頭の、いや女の裸が……」


「大好きです!」


 こんな姿をしているが、中身は二十歳の男だ。そりゃ僕だって性欲はある。


「……よし! お前も仲間として歓迎しよう!」


「「「隊長!?」」」


「慌てるな。こいつの目を見ればわかるだろう? それに今まで散々煮え湯を飲まされてきた闇の術がこちらも手に入ったのだ」


「言われてみれば……」


「行けるかもしれない……」


「決行は今宵申の刻! 皆遅れずに集合せよ!」


「「「応!!」」」


 男達は気合いの籠った返事をして解散した。

 これは面白い事になってきたぞ。


◇◆◇◆◇◆◇◆


 それから数刻、里の広場には先程影丸さんの家に集まった以上の男達が集まっていた。

 皆凄いテンションで端から見ると異様な集団だ。


「皆。よく集まってくれた」


 申の刻を少し過ぎたくらいで影丸さんが現れた。時計の無いこの里でこれだけ時間に正確なんて凄いと思う。


 影丸さんから最終目標の通達が出て作戦が開始される。男達の気合いは烈火の如く燃え上がっていた。

 次々と飛び出していく男達を見守っていると影丸さんが動いていないのが目にとまる。


「行かないんですか?」


「和泉か。己の欲望のまま突っ込むのは下策。

 いいか? これは任務だと思え。

 あらゆる罠を掻い潜り、敵城(女湯)までたどり着き、目的(覗き)を果たす迄は死んではならない」


「うわ~絶対変なルビふってあるよ」


「“死して屍拾う者なし”……心に留めておけよ」


 その時前方から爆発音と共に大半の男達が散っていった。


「やはり罠があったか」


「いやいや爆発ですよ!?

 あの人達死んじゃいますよ!」


「和泉! 先程も言ったであろう“死して屍拾う者なし”これが定めよ」


 何でこの里の人はこんなに覗きに命をかけるんだ?


 その後影丸さんと一緒に温泉迄移動を開始する。行く道々は罠にかかった男達が気絶していた。派手な爆発の割にはダメージは少ないようだ。


 温泉迄残り十数メートルに差し掛かった時、あれだけいた男達は全員狩られ残りは僕と影丸さんだけとなっていた。

 影丸さんとアイコンタクトで確認して一歩踏み出そうとするが、急に足が動かなくなった。

 なんだこのプレッシャーは!?

 ダメだ、一歩も動けない、一歩でも前に踏み出したら……狩られる!

 辛うじて横を向くと脂汗を流す影丸さんの姿が目に入った。


「和泉よ……感じているか? この重圧を。

 よく覚えておけ、この重圧こそが我らのお頭。第103代目棟梁・桜華様の御力だ」


「一歩も動けないですね」


「そうだな……では諦めるか?」


「まさか、ここまで来て桃源郷を拝まずに帰れませんよ」


「よく言った! それでこそ我が弟子よ! 行くぞ! 和泉!」


「はい! 師匠!」


 完全に場の雰囲気に酔っていた。


「残念です。影丸」


 その声は鈴の音の如く澄んでいて、春の雪解け水のように清らかで……冷たかった。


 これはマズイ! と本能で悟り咄嗟に初歩闇魔法で闇を作りそのなかに逃げ隠れた。


「和泉!? 師を見捨てるのか!」


「ちょっと禿丸さん僕の名前を呼ばないで下さい!」


「影丸だ!」


「誰と話しているのですか? 影丸」


「お、お頭! 温泉に行ったのでは?」


「何やら胸騒ぎがしまして……そう言えば毎年この時期にやって来ましたね?」


「くっ不覚」


「さて、お仕置きの時間です」


「くそーー! 和泉助けr……」


 影丸さんは黒い塊による一撃であっさりと倒れてしまう。

 ヤベェ……怒ったお頭マジヤベェ……


「和泉は女の子ですよ? ねぇ?」


 そんなお頭がこっちを向き問いかけてくる。何故か目が合った気がした。

 いや、大丈夫だ。落ち着け……

 僕は今影の中だ。向こうから見える訳がない……


「あらあら。気のせいだったかしら?」


 そう言って桜華さんは温泉に戻っていった。

 念のため暫く息を殺していたが、どうやら大丈夫のようだ。


「ふ~」


 術を解くと緊張の糸が切れため息が漏れてしまう。




「み~つけた」


「…………!!」


 背後からいきなり抱きつかれ息が止まる。


「闇が濃すぎるわよ。これじゃ自分から居場所を教えているようなものだわ」


「お……桜華ひゃん」


「は~い。あなたのお姉さんの桜華さんよ」


「同い年ですけど?」


「口答えしちゃう悪い子はお仕置きが必要ね」


 さっき一撃でやられた影丸さんの姿が目に浮かぶ。緊張しながら次の言葉を待っていると桜華さんは笑いながら話しかけてきた。


「それじゃ和泉には背中を流してもらおうかな?」


 え? それはご褒美?


「いつも一人で入っているでしょ? たまには一緒に入りましょう」


「知っていたんですか」


「これでも忍びの棟梁よ? そうじゃなくても同じ家に住んでいるのだもの気付いて当然よ」


「はぁ……でも一緒に入るのはちょっと恥ずかしいと言うかなんと言うか……」


「あら? 同じ女同士で何を恥ずかしがるのかしら?」


 ば、ばれている……この話し方は僕が男だと完璧にばれてる。これは詰んだ。


「いや、実は僕男でして……」


「ふふっそんな嘘つかなくいいのよ?

 棟梁である私が見破れないのだもの。貴女は女の子よ」


「ああ、ごめんなさいごめんなさい」


「ふふふっ」


「あ……あ……いや~~~~~~!」


 僕の叫び声は篝火が焚かれた温泉に消えた。

 その後何故か温泉に居た桃華と一緒に姉妹で体の隅々迄洗われてしまった。

 もうお婿に行けない……


 今回の変更スキル:

 火忍術1⇒3・土忍術1⇒3・金忍術1⇒3・水忍術1⇒3・木忍術2⇒3・回避術2⇒3・

 体術2⇒3・魔力強化1・魔力消費減少1・魔力回復1


 消費P

 Bp:35⇒0

 Jp:300⇒235

ポイントの消費は

新規取得:15p

初級⇒中級:10p

中級⇒上級:20pです


お風呂などの覗きは法律違反ですw

良い子はやめましょうw

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