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公園に着くと桜は咲いていた。
仲春の寒さが残る澄んだ空気の中を通る日の光は穏やかに降り注ぎ、雲は数える程しか浮かんでいない。
後ろにはすぐに山の斜面があり、その少し手前に大きな桜の木が一本立っている。
桜の花は白い中に一片の淡い桃色を含んだように美しく咲き誇っていた。
「レジャーシートはここら辺でいいよね」
貴行は持って来たレジャーシートを桜の木の根元の所へと敷く。
「ご主人様ぁ、お茶飲みますかぁ……」
鈴は気の抜けたような声を出す。
「ほぇ~……綺麗ですね~……」
「桜なんだから当たり前じゃない」
その言葉を聞いた京子はすぐ嫌味に返す。
「そうですけど……あ、ご主人様、飲み物をどうぞ」
「あ、ありがとう」
京子の態度に少し恐怖を感じながらも優しげな鈴の手からお茶を受け取る。
一口含み飲むと、とても気分が良かった。
穏やかな風を感じながら美しい桜の下で、親しく可愛らしい少女と一緒にお花見をする。
「ちょっと、あんまり近くに座らないでよ、昨日お風呂入って無いでしょ」
京子が来なければもっとよかった、と貴行は思う。
「しょうがないでしょ、狭いんだから、それに昨日は京子だって入って無いでしょ」
「……なんで知ってんの……?」
信じられないという表情に嫌悪を含ませながら貴行を見る。
「なんでって家のアパート風呂ないからだよ」
貴行は定期的に銭湯に通っていたが、毎日行っているわけではなかった。。
鈴は入浴しなくても清潔で居られる、神霊には入浴も衣服の洗濯も必要なかった。
そして京子は普段、貴行と同じように銭湯へ行って入浴していたが、昨日は一日位大丈夫だろうと考えて行かなかったのだ。
「ご主人様、あーん」
貴行が気付くと鈴はお弁当を広げて貴行の好物であるエビフライを箸で持ち、手を添えて差し出していた。
「な、何やってんのよ!!」
貴行よりも先に京子が声を上げる。
聞こえない振りをして鈴は貴行の口へとエビフライを差し出し続ける。
少し困惑していた貴行は観念したように口を開いてエビフライを食べた。
「美味しいですか?」
無邪気な笑顔を貴行へと向ける。
「お、美味しいよ」
鈴の行動と愛らしい笑顔に貴行は頬を染めた。
「な、何、顔赤くしてんのよ!!」
京子は必死な顔で貴行へと詰め寄る。
「だ、だって……」
目を背けながら貴行は言った。
「か、可愛いから……」
その言葉を聞いた京子は音もなく貴行の顔面へと正拳突きを放っていた。




