ね
幼い京子は弱かった。
身体的にも精神的にも人より脆弱だった京子はいつも、図太い精神力と強靭な肉体を有する貴行の後ろへと隠れていた。
「お兄ちゃん、待って」
幼い京子は子供用自転車へと跨る貴行へと声を掛ける。
「何?」
「私も行きたい」
貴行は神社へと秘密基地の設営に向かう所だった。
「来たいの?」
「うん」
真剣な顔で頷く幼い京子を貴行は優しく抱き上げて荷台へと乗せる。
「行くからちゃんと捕まってて」
「うん」
貴行が自転車を漕ぎ出すと京子の臀部に激しい衝撃が伝わる。
「いたっいたっ痛い! 痛い!」
緩衝材の付いていない荷台に人が乗れば、衝撃は直接に伝わり、乗る者へと苦痛を与える。
弱い京子は苦痛に耐える事が出来なかった。
貴行はすぐに自転車を止める。
「京子、大丈夫?」
「くっうっうっ、うん、大丈夫……」
泣きかけながら荷台を降りる。
「ちょっと待ってて」
見かねた貴行は家へと戻り、すぐにダンボールと粘着テープを持って出てきた。
「ふぇ? どうするの?」
「こうやって……」
貴行は丁度良い大きさに切ったダンボールを荷台へと何枚も重ねて敷き、粘着テープで固定した。
「よし、乗って見て、今度は大丈夫だから」
「う、うん」
貴行に向かって手を伸ばし抱き上げられる体勢を取る。
貴行は京子を抱き上げダンボールを敷いた荷台へと乗せた。
「じゃあ行くよ」
「……うん」
自転車は走り出した。舗装路を颯爽と駆ける。
「どう? 今度は大丈夫でしょ?」
「う、うん、うん!」
京子の声は活気付く。
「お兄ちゃん、もっと早くできる?」
「ダメだよ危ないから」
「えー……」
「ダメな物はダメなの」
「……わかった」
京子は少し納得できなかったが優しい貴行の言う事を素直に聞いた。
貴行は弱い京子の事を思ってスピードを出さずにいた。
神社へと付き、階段を上って裏の森へと入る。
「お兄ちゃん、疲れた」
「疲れたの? じゃあここにするね、秘密基地」
「秘密基地?」
「うん」
貴行は木と木の合間に持って来ていたレジャーシート広げ、その上で鞄ひっくり返り返し、巻数もタイトルも揃っていない漫画を撒き散らした。
「ほら、これでここで暮らせるでしょ?」
幼い京子の瞳にその光景はとても魅力的に映る。
「うん、うん!」
いそいそと靴を脱ぎ、レジャーシートの上へと座って、漫画を手に取る。
貴行はその様子を見て子供らしい得意げで明るい笑顔を見せた。
「好きな奴読んで良いよ!」




