怪異1.UFOキャッチャーの男
短編集の第一話です。
本作は息抜き作品ですので、更新は不定期ですが、くすっと笑える話や、背筋も凍る話、熱い話など、
現代社会に頑張るあなたへ届けます。ぜひ、ご覧ください。
これから、とある男性の話をしようと思う。これは半ば私の手記に近い。
振り返れば私と彼との付き合いは既に十五年以上前に遡る。
彼は私の勤める部署で部長を務める男だ。
小柄な体躯であり、いつもまくし立てるような話し方であるが、四十代で部長にまで上り詰めた人物だ。
過去、若いころには野球などのスポーツにも打ち込んでおり、活発なアウトドア派の印象もあったが、最近は年齢のせいか。あるいは日頃の疲れもあってかそういったアクティブな趣味からは遠ざかっていた。
ある昼休み。私は同じ部署の課長からその話を聞いたとき、熱いコーヒーをこぼしそうになった。
「え? どういうことですか? UFOキャッチャー?」
「ああ。らしいで。俺、いっつも昼休みにその話されて飯食いながら一時間拘束されるもん。
しかも、動画まで見せられてさ。何が面白いんかさっぱりわからんわ」
馬鹿な。そんな話などあるわけがない。
「そんなことあります? 今更UFOキャッチャーって」
「いやいや。俺の隣でずっとUFOキャッチャーでとったチョコバット食べながら動画見せてくるねん。
意味わからんやろ?」
その言葉を聞いて私は改めて彼の生態が不思議であることを思い知った。
休日に四十代の男性が一人でゲーセンに入り浸っているのだ。パチンコやスロットのギャンブルであればまだ理解はできるが、ゲーセンの、それも、UFOキャッチャーと言う生産性があまりにも
低い遊戯である。
「またまたあ、子どもじゃあるまいし」
「いや、ホンマやねんって。って、お前も昼休み一回聞いてみろよ」
冗談にも似た言葉を聞いて私は給湯室から執務室に戻った。
気だるい午後の始業の鐘が鳴り、そんな些細な日常の会話はすぐに私の脳裏からはがれていった。
そんなある日。偶然私はその部長と同じ列車に乗って帰ることになった。混雑した車内で退勤する
人々の表情は鬱屈としており皆一様にスマホの画面にくぎ付けだ。
車輪がレールの隙間を通るたびに、ガタン、ゴトンという電車特有の揺れと共に彼と私を
家路へと導いていく。
ふと、私は先日の課長の言葉を思い出していた。そう、UFOキャッチャーの話だ。
半信半疑だった私はその事実を確かめるためにそれとなく最近の休みについて遠回しに聞いてみた。
「最近、休みの日って何してます? 僕はもっぱら寝てばかっりですけど」
カマをかけるつもりだったのだが、部長は少年のような笑みをうかべスマホをポケットから出して私に見せてくる。プライバシー保護の画面で少し見にくいが、ただの動画サイトだ。
なんだ。ただのYoutubeじゃないか。これはただの動画鑑賞だ。期待もなくなり、車内の吊り広告に
目が映った瞬間、スクロールされた画面で検索画面にサジェストされた内容は
まごうことなきUFOキャッチャーをしている男の絵だった。
マジかよ。絶句する私をよそに、部長は嬉しそうに動画を見せる。周囲の誰もが無関心であり、私たちの会話を気にするものなどいない。
「興味あります? あります? UFOキャッチャー最近やってるんですよ」
「え? UFOキャッチャーですか?」
事前に課長から話を聞いていたので、そこまでの衝撃と言うことはなかったが驚いたことは事実だ。
その後、延々とUFOキャッチャーについて部長は私に語り続けた。無限のループとも思える時間は
私の最寄り駅まで続いたのであった。
皆さんの会社にもこんな人はいますか?これは私が知り合いから聞いた話です。
ぜひ読者の皆さんも会社であった怖い話や面白い話を教えてください。
勝手に想像を膨らませ、ホラー、コメディ、シリアス…お好みの短編にしてみます。
ぜひ、よろしくお願いします。
※1.「自転車の魔法使い」も毎週金曜日20時に更新しています、引き続きよろしくお願いします。
※2.「鉄火、錆を削ぐ」一部完結済みです。第二部(完結編)は2026年7月中旬から再開予定です。




