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第97話 ちょっぴり変わった先輩

「それで? どうして温井先輩はこちらに?」

「んー? 私も妹と買い物なのだよ! これぞまさに奇遇ってやつだ!」

「そうなんですかねいえそういうことにしておきます」


 会話を広げるとますます疲れる気がしたので無理やり落ち着けることにした。

 のだが、肝心の妹さんの姿が見えない。


 視線で探していることを察されたのか、温井先輩が得意げに指を立てた。


「妹とは現在別行動であーる! なんか、デバイス? を見に行くって言っていた!」

「あー、じゃあ妹さんはパソコンとか好きなんですか? それとも音楽?」

「ピーシーのほうだね。むむむ、もしかしてその言い方だと乙崎後輩もピーシー詳しいタイプなのかな?」

「詳しいというかさわりだけと言うか。まあ知ってるほうではあるかなぁと」

「なるほどなるほど、じゃ、うちの妹とは気が合うかもね! 紹介しようか?」

「そんな彼女紹介するみたいなノリで……」


 本当にこの人の相手は疲れる。姫奈の相手するのとは別ベクトルの疲労だ。あんまり続くとしばらく人と喋るのがおっくうになりそう。カロリーめっちゃ使う。


「ちなみに妹も家の高校なのであーる! すっごく大人しい子でシャイだけどきりっとしてて良識はあるし話も聞いてくれたりしちゃったりする良物件だぞ! 家事だけまるでできないけどそこをカバーできるならパーフェクト!」

「本気で彼女として紹介されてる? いや困りますよ普通に。と言うか俺みたいのに大事な妹を安売りしないでください」


 マジで分からん。ノリが分からん。オタクに優しいギャル的な存在かと思った瞬間もあったけどむしろオタクの心臓に悪いギャルです助けてください。

 私服も結構チャラ目の着てるしあの胸元ちょっと広くないですか? 香水とかつけてますよねってかバチバチにネイルしてるしアイシャドーつけてるしラメってない? よく見たらカラコンだし。そんなデコる感じなんすね。いえとてもお似合いです。俺のピュアな心臓はバックバクですよ。


 なんてくだらないことを考えながら見つめていたからだろうか。

 深淵を覗くとき深淵もまたなんたら、的なやつ。

 実際がどうかは分からないけど、温井先輩もすっごくこっちを覗き込んできてた。おかげでカラコンってことが分かりました。あ、まつげも長いですね。つけマかな?


「……っぱさ、乙崎君って自己肯定感低い感じかい?」

「ふぇ? いやまあ、低いか高いかで言ったら低いと思いますけど」


 思いもよらないことを言われて変な声が出てしまった。姫奈たちには……聞かれてないよな。


「ま! あんま深く考えないほうがいいぞ! 生徒会手伝ってくれてるだけでも十分偉いって言うかすごいって言うか! 一年ズにも結構頼りにされてたしさ! お姉さん応援しちゃうから」

「は、はあ……」


 距離の詰め方えっぐ。俺もこれくらいぐいぐい行けたら姫奈とのごたごたもスムーズに解決できたのだろうか。もしかしたら及川さんのことも……。


 いや、こうはなれないな。うん、無理。

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