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第12話 思い出せないハデル

 走っていたのを一旦止まり川の近くで俺達は腰を降ろしていた。


「ハデルが傷ついている女性を見逃せないのは……仕方なくないけど、置いておくとして……」


 サラシャはそう言いながら、戸惑っている。

 出会って一日くらいしかたっていない人に何か理不尽(りふじん)なことを言われた気がする。

 頭を(かか)え俺と精霊魔杖状態のロッソを見るサラシャ。


「……全然理解が追い着かないんだけど」

「魔杖に変形する精霊獣と思ってくれ」

「いやいやいや、世界のどこに変形する動物が?! 」

「ここに」

「いやそうだろうけど……、納得いかない」


 そう言い尻尾と共に顔をしゅんとさせるサラシャ。

 まぁこれはマザーダンジョンとしての力だから理解不能なのは当たり前である。

 幾ら神様からの説明があったとは言えマザーダンジョンがリス型を取ったり魔杖に変形したりするのは聞いていない。

 普通に使っているが俺自身数百年経ってもロッソ達のことはよくわかっていないのだ。


「ということはベルデとブルも? 」

「あぁ。変形するな」

「そうだぜ、お嬢。おれっちの凛々(りり)しい魔杖姿に()れたか? 」

「驚きでそれどころじゃないよ」


 サラシャがそう言うとロッソから少し落ち込んだ雰囲気が(ただよ)ってきた。

 精霊魔杖の姿が窮屈(きゅうくつ)なのか姿を変える。

 リス型に変形したロッソはトボトボと俺のリュックサックの中に入っていった。


「はぁ……やっぱりこれも、あまり人に言わない方が……良いよね」

「そりゃな。確実に騒動の種になる」

「というよりもハデルはロッソがいないと魔法が使えないの? 」

「いや。ロッソが一番手に馴染むから使っているだけだ。触媒がなくっても魔法は使えるが、何というか手に無いと、……こう、そわそわする」

「あぁ~。その感じ。なんとなくわかるな。いつも使っているものが使えなくなるとそわそわする感じ」


 サラシャが笑い同意する。


「実際ロッソ以外にも何本か魔杖は持っている」


 そう言いながらリュックサックを空ける。

 底の見えない亜空間みたいなところに手を突っ込み魔杖を取り出す。

 そしてサラシャの前に置いて彼女に見せた。


「え……なにこれ?! 」


 サラシャが驚き目を輝かせて魔杖を(のぞ)く。

 触りたいが、触っていいか躊躇(ためら)っているようだ。


「手に取っても良いぞ? 」

「いいの!? 」


 俺が言うとすぐに手に取る。

 魔力を流しているのだろうか、「はわぁ」と声を出しながら使い心地を試していた。


「なにこの感じたことのない魔力の流れ具合! すごい……」

「そうか? 」

「そりゃそうだよ! 今出回っている魔杖とは比較にならないほどの魔力伝導率だ。それに魔力効果増大かな? 幾つか増幅系の魔法が付与されている。これだけで一体いくらするか……」


 ……似たような魔杖は目の前に何本もあるのですが。

 今手に取っている魔杖でこの興奮具合。これは言わない方が良さそうだ。


 サラシャが魔杖に夢中になっている間に他の魔杖を回収する。

 他の魔杖を手に取ると彼女が卒倒(そっとう)しかねない。


 魔杖を回収し終わったらサラシャがこちらを向く。

 魔杖を俺に渡して口を開いた。


「そう言えば、(おとろ)えていなかったね」

「ん? そうか? というか俺の戦闘を見たことあるような言い方だが」


 そう言うとサラシャは口に手をやりくすっと笑う。


「見たことあるというか、昔助けられたんだけどね」


 そう言うサラシャを見て思い出そうとする。何か期待しているのかこっちを覗く。

 ……。思い出せない。

 襲われている人は大概(たいがい)助けに行っているからな。その内の一人だとは思うんだが。

 しかしその中に淫夢魔(サキュバス)はいたか?

 いたら印象(いんしょう)に残るはずなんだが。


「……悪い。降参だ」


 両手を上げて謝る。

 するとサラシャは両手を振って応じた。


「いいよ。ボクの時も、さっきみたいに特に理由なく助けたんだろうから」

「面目ない」

「あの後大変だったな~。恩返しするために君のことを調べるので」


 ぐはぁ!


「ま、今日の所はこの辺で許してあげるよ。EXランク冒険者『大災害級精霊術師(カタストロフ)様』

「その二つ名はやめてください」


 すぐさま頭を下げて謝った。

ここまで如何だったでしょうか?


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