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第13話 ハデルはガルドア王国に着く

「ここが魔界と人界を繋ぐ門がある国——『ガルドア王国』か」

「あれ? 来たことないの? 」

「こっちにはあまり」

「意外だね」


 隣でサラシャがそう言う。

 早朝に出て、現在(そら)が暗くなりかけている時間。

 早く宿を探さないと、と思い町を歩く。


「夕方くらいについたから早くは入れた方か」

「そうだね。あの長蛇(ちょうだ)(れつ)にしては早く入れたね」

「門番も慣れている様子だったしこれが日常なのかもしれない」


 そう言いながら歩き周りを見る。

 まだ宿がある区画(くかく)には着かないようだ。


「にしても色んな種族がいるな」


 ちらりと周囲を見るとそこには魔族を始め獣人族に人族、珍しいことに龍人族も見える。

 精霊界側の門の国では見かけなかった種族だ。


「そりゃね。魔界との境目(さかいめ)だもの。商売をしたい人に観光に行きたい人。様々な人が集まっているだろうね」

「その割には国の規模が小さな気がする」


 聞くところによるとガルドア王国はこの町とあと一つ二つくらいの国土面積しかない。

 しかし魔界との門があるためか、かなり繁盛(はんじょう)している。

 ちらりと閉めようとしている店を見ると魔界産と思しき商品が並んでいた。

 そこにサラシャの顔が俺を覗いた。


「うぉっ! 」

「なによそ見してるのさ。着いたよ」


 サラシャに言われて立ち止まる。

 顔を上げるとそこにはキラキラとした宿が立ち並んでいた。


 ★


「……やっぱりダメか」

「……仕方ないよ」


 俺とサラシャは肩を落として宿から出た。

 予想していたとはいえ、ここまで宿が満室だと少し心が折れる。


「次を探すか」


 当てがあるわけではないが、俺はそう言いトボトボ歩く。


「落ち込んでても仕方ないよね! 」

「そうだな」


 そう言いつつ顔を上げ違う方向を見る。

 そこには見慣れた看板が——。


「宿屋『ベルモット』……」

「こ、ここに泊まるの?! 」

「泊まれないよりかはマシな気がしてきた」


 俺には伝家(でんか)宝刀(ほうとう)『特別会員証』がある。これを使えばあそこに泊まれるだろう。

 だが……。


「け、経費で落ちるかな? 」

「一泊で大金貨が吹き飛ぶもんな」

「払えないことはないけど、少し躊躇(ためら)う金額だよね」

「まぁ最上階に泊まらなければいいだけな気もするが」


 財布を見てサラシャは軽く落ち込んだ。

 いくら宿屋ベルモットとはいえ全ての部屋が超級に高いわけではないだろう。

 高いのは恐らくスイートルームのような最上階。


「別の階に泊まろうか」

「ま、一先ず行ってみないとどのくらいの金額になるのかわからないな」

「そうだね」

「ここまで来てサラシャと別々の宿に泊まるのも気が引けるし……」

「! 」

「安めな部屋が無かったら違う宿を見つけるしかないか」


 と呟いて俺はサラシャを連れて宿に向かった。


 外装(がいそう)もそうだが内装(ないそう)もスタの町のそれと似ている。

 人を拒絶するかのような綺麗さを俺とサラシャはビビりながら歩いていく。

 スタの町よりフロアに客が多くみられる。誰を見ても高そうな服や装飾品をつけていた。

 明らかに場違いと感じつつも受付に足を向けて手続きを済ませた。


 ★


「良かったぁ……」

「俺が五階でサラシャが二階。高かったが、無難な金額だな」

「これならボクの財布から出せれるよ」


 俺は今、心底安堵(あんど)したかのような顔をするサラシャと対面で座っていた。

 ここは俺が借りた部屋。スタの町と同じ構成になっている。


 三リス達もリュックサックから出てそれぞれの場所でくつろいでいる。

 少し下を向くとベルデが机の上にナッツを広げていた。


「お茶会かな? 」


 とサラシャが呟く。

 彼女は机の上のベルデを覗き込んでいた。

 サラシャに気付いたのかベルデが手を止める。

 ニコニコとみている小悪魔に向いて、ベルデは聞いた。


「サラシャさん。ご一緒しますか? 」

「良いの? でも大きさが——」


 サラシャが言うとベルデが巨大化した。


「え?! なにこれ?! 」

「姿形を自在(じざい)(あやつ)れるのでこのくらいは」


 驚くサラシャに構わず広げたナッツを綺麗に並べていく。

 巨大化しているのに変わらない手際(てぎわ)。その器用(きよう)さに感心(かんしん)しながら様子を見ていると、サラシャは頭をカクンと下に向けて俺に言った。


「……精霊獣達に関してはもう驚かない」

「それが一番心に優しいと思うぞ」


 彼女がそう言い俺がナッツを一つ口に入れる。

 美味しく味わっているとサラシャが突然立ち上がった。


「? 」

「モフろう! 」


 そう言った瞬間サラシャがベルデに飛びついた。

 いきなり抱き着かれたベルデは動くことが出来ず困惑している。

 ベルデは彼女の体に顔をうずめるサラシャにどうしたらいいのかわからず俺の方を向いて来た。


「……気が済むまでモフらせてあげたらいいんじゃないか? 」

「え? ええ? 助けてくれないのですか? 」

「……良い夢を」


 そう言い俺は席を立つ。

 後ろから「薄情者! 」と聞こえてくるが気にしない。


 サラシャが十分にモフれた時、俺達は解散となった。


 ★


「おはよう! 」

「おはよう」


 宿屋ベルモットの一階で、俺とサラシャが顔を合わせていた。

 いつもに増して元気溌剌(げんきはつらつ)な彼女だが、恐らく昨日十分にモフれたからだろう。

 逆に俺はあの後不機嫌だったベルデの小言の攻撃を喰らい、寝不足気味。


「どうしたの? 少し疲れてそうだけど」

「まぁね」

「昨日の疲れ? 」

「そんなところだ」


 間違ってはいない。


「で今日は何かするの? 」

「あぁ……。魔界へ行くための許可書を取りに行くのと、あと少しばかしの調査と」


 そう言いながら俺は扉に向かって歩き出す。

 するとサラシャが下から俺を覗き込んだ。


「調査? 」

「魔界ダンジョン産の素材が安いのは知っているが、どのくらいなのかとな」


 恐らくここガルドア王国が一番魔界ダンジョン産の素材や品物(しなもの)が集まる場所だろう。

 数字の上でどのくらいの値段かは知っているが、どのくらいの値段で取引されているのか見たことない。


「なんでそんなことを? 」

「今……明日から魔界へ行って、ダンジョンで働くだろ? ならどのくらいの質のものが人界に流れているのか調査しておいて損はないだろう」

「確かにそうだけど、ボク達がやるのは商売じゃないよ? 」

「分かってるって」


 そう言いながら足を進める。

 俺がやる仕事が直接素材を売ることではないから、サラシャから見たら余計なことなのかもしれない。

 しかしダンジョンを立て直す時に、マザーダンジョンの力が必要になる可能性がある。ならばその基準を調べておくのは良い事だと思う。

 これを抜きにしても業界に(たずさ)わる者として、現場を知っている必要はある。


 ま、市場調査半分、観光半分。

 気楽にこの国を楽しもう。

ここまで如何だったでしょうか?


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