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残酷で、ただ残酷なこの世界  作者: 海鳴ねこ
二章ヒーロー
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二節フリバー・ライヘルド26



 「だったら、次の質問だが――……」

 「先に言っておくことがあります」

 次の問いに移る前に、“死”が遮る様に言葉を零した。

 “彼女”の黒い瞳が、フリバーを映す。こちらの返答を聞く前に“彼女”は続けた。


 「私は、貴方を元の世界に返す力はありません……。先に言っておきます。謝罪も送りましょう」


 ――申し訳ありません、と。

 フリバーは、これまた息を呑んだ。

 しかし、此方に関しては直ぐに笑みを漏らす。


 「原初の二神」そう呼ばれ、『異世界人』を転移させる力を持つエルシューと同等の力。それ以上と恐れられている“死”だ。期待していなかった訳じゃない。

 しかし、こうもはっきり言われてしまえば。言い返す処か、何故か文句も湧き上がって来ない。呆れが頭に浮かぶぐらいだ。

 まあ、そうだよな――と。彼女が、そんな力持っていたら、エルシューの提案は蹴って今すぐ帰る。


 そもそも、次に“彼女”に問いただそうと考えていた件は、別物だったのだが。

 フリバーは間を置くように、息を付く。


 「――……『魔法』について聞きたかったんだが」

 こちらの言葉を聞いた“死”は、小さく首を傾げた。

 

 「フリバーさんは、元の世界に……。いえ……」

 何か言いかけて、“彼女”は口を閉ざす。

 “彼女”はどうやら、既にフリバーの望みを知っていたらしい。

 だから敢えて。問いただされる前に、先手を打った所か。

 フリバーは笑みを浮かべた。


 「聞こうと思っていたが、そうはっきり言われたら、な。別に不思議じゃない。()()()()その力がないって事なだけだろ?」

 この言葉に。“死”が不機嫌そうに、僅かに眉を顰めた。

 “彼女()”も彼女()で“生”に思う所があるのかもしれない。

 ただ、これぐらいの嫌味は許してほしい。


 「コレだけは聞かせてくれ。エルシューの他に、異世界から人を呼べるほどの力を持つ“神”は居るのか?」

 続けざまに問いただす。核心を付く重要な問いだ。

 “死”は表情を戻し、無表情でフリバーを見た。


 「……いえ、残念ながら。人を呼べるのはエルシューだけです」

 そして、最悪な肯定を送ってくれるのだ。


 「そうか」

 小さく、ため息を零す。一度だけ、目を閉じて、仕方が無いと。

 切り替えを早く。改めて、“死”に向き治り。


 「だったら、さっきの問いに戻る。この世界の俺達の『魔法』について、教えてくれ」

 と、真剣な面持ちで、フリバーは“死”に問いただす。






 「貴方方の『魔法』……ですか?」

 フリバーの問いに“死”が呟く。理解できないと言う様だ。

 当たり前か。苦笑を浮かべる。

 フリバーが気になる点。それは2つ。


 「詳しく言えば『回復魔法』の類だ。ちょっと気になってね」

 「回復……?」

 「効力が変わっている。『傷の完全完治』から『傷の表の補修』にな。完全に確かめてはないが、コレはどういう事だ?」

 まず1つ。それが、当初から気になっていた「回復魔法」

 ステータスで確認した時。フリバーの回復魔法の「効力」が変わっていた件。


 此方に関しては、正直言えば、パルと言う少女に聞きたかった。

 なにせ、彼女は一度死と戦い負けている。ブレイルの話を思い出すに、彼女は回復魔術師(ヒーラー)。“死”と対峙した際、その能力は少なからず使ったはず。そう想定して。

 彼女も自分と()()。魔法に何かしらの変化があったのでは、と気に掛かっていたのだ。

 簡単な話しか聞いてないが、リリーの父親の件もあるし。

 結果も何も、今のパルから話なんて聞けやしないが。


 「……それは、今後の貴方の生活に支障がありますか?」

 フリバーの問いに、“彼女”は問い返す。

 大きく頷く。大ありだ。


 「ああ、俺の世界では『回復魔法』は重要で、当たり前だったんでね。それが変わっていると、困ることが起きる可能性がある。――今後、な」

 最後は妙に強調して、僅かに“死”への視線を強めて。


 今は、フリバーに戦う気(その気)はない。しかし「()()」とも完全に言い切れない。

 その時。回復魔法が可笑しいと、此方とも困る。

 「死が無い」とか関係ない。「死にたくない」「傷は付きたくない」。みんな同じだろう。

 だから、最初のうちに聞いておきたかったのだ。この妙な違和感に関して。

 “死”は目を逸らす。”彼女”からすれば、自分が不利になる可能性があるのだ。言いたくないだろうが。


 「……簡単な事です。『傷は治っても失ったものは戻らなくなった』。貴方方の魔法は全てこのように変更されている筈です」

 杞憂であったらしい。意外と言うべきか。“彼女”は答える。

 簡潔に、明確に。正確に。

 フリバーは、その「答え」に傾げた。

 “死”はフリバーの言葉を待たずに続ける。


 「そのままです。手を切ったので魔法を使った。その結果、回復するのは、表面だけ。傷口は塞がりますが、血は元には戻らないと言う事です」

 フリバーが、微かに眉を寄せる。

 口を噤み、少しして、開く。最悪な答えが頭に浮かんだ。


 「――……ソレは、()()()()と言う事か?表だけ治ると?」

 「いいえ。少し足りません」

 “死”が首を振って否定する。


 「傷口は完治するが、流れ出した血――。つまり体液等は、戻らない。……こうか?」

 「――はい」

 “死”が肯定する。

 それは、フリバーが考えた、最悪な答えの肯定でもあった。


 「た、とえばだが。腹を切り裂かれた、血が沢山流れた、魔法を使った……どうなる?」

 「……傷ついた身体、肌や肉。内臓の補修までは出来ますが、流れ出した血はそのまま。普通に考えて、死ぬでしょうね。血足りなくて」

 「腕が無くなった、くっ付けようと魔法を掛けた……どうなる?」

 「無くなった物はくっ付きません。普通ですよね?傷口の縫合が行われるだけです」

 

 例えを上げていくたびに、核心する。

 聞けば聞くほどに、思う。


 それは、()()()()の事だ。

 しかし、()()()()()()()()





 『だって、それがこの世界だもの』

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