表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
残酷で、ただ残酷なこの世界  作者: 海鳴ねこ
二章ヒーロー
38/58

二節フリバー・ライヘルド21




 話はまた、あの日まで遡る。

 リリーがブレイルとパルと別れて30分ほど経ったほどの事。

 彼女は結局心配になって、戻って来た。


 彼らは大丈夫かという一心で。

 そこで見たのはボロボロに壊れた広場と、倒れ込むブレイルとパル。

 そして、ブレイルの側に佇む“医術の神”アクスレオスの姿だった。


 「――なんだ、てめぇ……。アーノルドのとこの娘じゃねぇか」

 灰色の目にリリーを映して、彼は酷く怪訝そうに眉を顰めた。


 「あ、アクスレオス様。あ、あの二人は……?」

 「見て分んねぇのか。“死”の仕業だ。無茶苦茶にやりやがって」

 リリーの問いにアクスレオスは苛立った様子で答えた。

 その様子を見て不安になる、不安のままにブレイルに駆け寄る。


 ブレイルの服は切り裂かれていた。まるで鋭利な刃物に切り裂かれたようだ。でも、肌に傷はない。

 ただ、彼の足元に銀色の小さな金具が散らばっているだけ。


 「し、死んで――!」

 「死んでない。生きてる」

 リリーの不安を遮るようにアクスレオスが言う。

 慌てて、ブレイルに駆け寄って、首元に手を当てればブレイルは確かに暖かかった。

脈もあり、心臓も動いていた。

 その様子にリリーは心から、漸く安堵をした。

 しかしだ。リリーは当然に疑問に思う。

 あたりを見渡すが、あの恐ろしい“死”はいない。だが、ブレイルを此処まで叩きのめしたのは、どう考えても、あの邪神の仕業。どうして邪神がブレイルを見逃したのか分からない。ソレに彼のこの服の傷は。


 「――……そいつは一回死んだんだよ」

 その疑問に答えてくれたのは、アクスレオスだった。

 酷くつまらなさそうに、ため息交じりで答える。


 「いっかい……しんだ?」

 「ああ、死んだ。で、生き返った」

 我が耳を疑った。

 理解が追い付けず、困惑していると、僅かにブレイルが動く。

 彼が目を覚ましたのは一目で分かった。

 ぼんやりと金色の目を開けて、少し。ブレイルは飛び起きた。慌てたように、怒り狂ったような顔で膝の上の聖剣を手を伸ばそうとして、でもその身体は上手く動かずに倒れてしまう。


 身体を丸め、まるで痛みに耐える様子のブレイルに、アクスレオスが声を掛ける。


 「よお、調子どうだ?考えなし」

 悶絶するブレイルは僅かにアクスレオスを見上げる。

 ただ、視点がおかしい。定まっていない。


 「……視界がおかしくなっているのか。大丈夫だ、次期治る」

 瞬時に理解を示したアクスレオスの言葉。

 その言葉に必死に声を振り上げようとしているが、声はかすれた音しか出ない。どうやら声も出ないらしい。

 その様子を見て、アクスレオスは小さくため息を付いた。


 「安心しろよ。“死”はもういない。どっかへ行っちまった。――見ての通りパルって女も生きている」

 その答えに、ブレイルは目を大きく見開き、だんだんと安堵した者へと変わる。

まるで一番気にかけていたことを知れて安堵している様に。少なくとも耳は聞こえている様だ。


 「――……俺の言葉は理解できるみてぇだな」

 アクスレオスが続けて言う。ブレイルは小さく頷いた。

 小さなため息、そして彼が忠告するように口に出したのである。


 「じゃあ、手っ取り早く伝えるぞ。ブレイル・ホワイトスター。コレは俺からの忠告と思え」

 「――……?」

 「――お前は“死”に負けた。“死”に負けて死んだんだよ、お前は」

 ブレイルの金色の目が大きく見開かれるのが分かる。

 そんな、まさか。なにを、まるでそう言っている様だ。

 しかし、何かを思い出したように困惑の色に変わっていたのも次の瞬間。――彼は覚えていたのだ。あの戦いの事。“死”が容赦なく自分達を切り刻んでいき、あっさりと負けた事実。

 ああ、そうだ。あの時、あの瞬間、ブレイル(自分)は死んだのだ――。


 「先に言っておくぞ。生き返らせたのは俺じゃない。俺は“医術”だが、人を生き返らせる能力は持ち合わせていない」

 ブレイルが何かを問いかけてくる前に、アクスレオスが言い放つ。

 ぼんやりとした頭で、困惑した頭で、ブレイルが漸くゆっくりと体を起こした。

 そんな彼にアクスレオスは続ける。


 「お前らを生き返らせたのは、この“世界”だと思え」

 「せ、かい……?」

 ようやく声が出た。ブレイルの問いにアクスレオスが頷く。

 そして、簡単に、簡潔に言い放つのだ。


 「お前達『異世界人』は、この世界では不死だ。決して死ぬことは無い。いや、死んでも、死んだら生き返るんだよ。お前たちは――」


 信じられない事実を。有り得ない事実を。彼は静かに口にしたのである。





  『死がない素晴らしいセカイ』



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ