対峙
「今だっ!」
アースは街に近づいてくる魔王軍の動向を観察していたところ、フレアルドと部隊員との距離が離れたのを好機と見て、その間に割って入った。
それと同時に、天与により岩壁を出現させフレアルドを孤立させ、一対一の状況を作る。
「これは!? フレアルド様! 今そちらに向かいます!」
「来るんじゃねェ! お前らは街を制圧しろ! いいか、俺様が戻るまでに制圧できていなかったら……わかってんだろうな!?」
「――わかりました、このまま前進します」
壁の向こうから声が聞こえたが、意外なことにフレアルドは救援は不要であると告げたのだった。
「全員でかかってこなくていいのか? フレアルド。彼らなら壁を越えるのにそう時間はかからないと思うが」
アースの天与により一時的に分断することには成功したが、あくまで時間稼ぎ程度の足止めであったにも関わらず、フレアルドは部隊を進ませた。
それはアース相手には自分一人で十分だという自信と、他の者に殺させたくないという執着心からきた判断であった。
「良いも悪いもねェさ……なんのつもりか知らねェが、俺様の前にのこのこと現れるたァいい度胸じゃねェか! なァ……アース!!」
出会ったときから気に食わなかった男が、策を労し殺害して清々したかと思いきや、ちゃっかりと生きていて自分の足を引っ張っていた。
そんな男が今まさに、不用意に自ら姿を現し目の前にいる。
フレアルドは、ようやく自らの手で因縁に決着が付けられることに、歓喜し、打ち震えていた。
「フレアルド。お前がここに来た理由は何だ? やはり俺を追ってきたのか?」
「ハッ! さあな? これから死ぬ奴に何を言ったって無意味だろう」
「俺は死なない。そして俺の仲間も誰も死なせない。フレアルド、たとえお前が相手でもだ」
「仲間? もしかしてあの人間族共を仲間だと言ってるのか……? ハッハッハ! 笑わせてくれるなァ! お前は魔族にも、人間族にも嫌われる存在だ! そんなお前が仲間を語ってるんじゃねェよ!」
アースは人間族と魔族のハーフである。
その素性が知れればどちらの種族からも忌避されるような存在だ。
本来ならば何処へ行っても孤独を強いられるのが普通だろう。
長いこと魔王軍に居られたのも、変わった思想を持つ魔王の計らいがあってこそだ。
魔王の庇護を失ったそんな男が、今は人間族を仲間と呼ぶ。
きっと今度は自分は人間族だと身分を偽って暮らしているのだろう、ということを想像すると、フレアルドにとってこれほど滑稽なことはなかった。
「……何とでも言えばいい。しかし、お前に付き従う部下も数がだいぶ少なく見えたが、もしかして人望がないんじゃないか?」
「アァ!? あんな攻撃で倒れちまう奴らなんて俺様の部下には相応しくねェ! 俺様に着いてこれないのはあいつらが弱いからだ!」
アースは部隊の人数が少ないことに疑問を覚え、鎌を掛けてみたところ、思惑どおりフレアルドの口から情報を引き出すことごできた。
どうやら先の雷轟砲による砲撃で、部隊の大半は行動不能になっているようで、アースはほっと胸を撫で下ろす。
正直ここまでの効果があるとは想定外であったが、魔王軍側にも何か事情があるのだろう。
いずれにしても、嬉しい誤算だと言える。




