愛の告白?
「すまないな、すぐ済む。さて、サイズが合うといいのだが……」
アースは差し出された手をそっと掴み、何かを確認するように指を触っていた。
「ふむ……少しきついだろうか? お、この指なら丁度良さそうだな」
「えっ、えっ? な、なにアース? どうしたの!?」
アースに触れられ、緊張やら恥ずかしいやらで顔を真っ赤にして慌てふためくエレミアに、追い討ちをかけるようにしてその左手の薬指へと指輪を嵌める。
「うん、やはり丁度良いサイズだな。似合っているぞ、エレミア」
「――――ッ!?」
その台詞を聞いた瞬間、エレミアは夕陽のように顔を紅潮させ、静止したまま動かなくなっててしまう。
数瞬後、頭をふらふらとさせ、まるで頭から煙が出ていると錯覚してしまう程に、傍から見ても混乱しているのがよくわかる状態だった。
「あっ、兄貴!? こ、これはサプライズってやつッスか!? いつの間にそんなに仲が進展して……いやー、お嬢もこれでようやく報われると思うと感慨深いッスね……」
「いや……ガウ坊。多分これはなんも知らんでやっとるパターンのやつやで……」
コハクの予想は見事的中しており、アースは自分のしたことの意味をまるで理解していなかった。
「ん? どうかしたのか? いや、それよりエレミアが固まってしまったみたいなんだが……俺が何かしてしまったのだろうか?」
「あー……あのな、あんちゃん。文化の違いってやつなんかな……魔族ではどうなんか知らんけど、人間族の間では異性に指輪を贈るのには意味があるんやで」
「そうなのか……? もしかして失礼に当たるのだろうか……?」
アースはコハクに指摘され、礼節を欠いた行為をしてしまったのかと不安になっいる様子だった。
しかしこのまま説明しても良いものかと一瞬思い悩むが、うやむやにするのも良くないかと考えたコハクは、アースにその行為の意味の説明を始める。
「いや、まあ失礼と言うかなんと言うか……意味としては好意を示すものなんやけど……」
「好意? だったら別段問題無いんじゃないのか?」
「うん……まあそうなんやけどな? どの指に付けるかで意味合いが変わってくるんよ。あんちゃんが指輪を嵌めた左手の薬指は、『愛情を深めたい』みたいな意味があってやな。ついでに言うと、相手の手を取って薬指に直接指輪を嵌めるのは、求婚したのと同義やで」
「――なっ!? と言うことは、俺がエレミアに結婚を申し込んだことになるのか……!?」
コハクの説明を聞き、事の重大さを知ったアースは、知らなかったとは言えさすがに慌ててしまう。
「けっ!? け、けけけけっこん……!? アースと――――けっ、ふぁにゃぁ――」
「エレミア!? 大丈夫か!?」
「おっとぉ! セーフッス!」
意味不明な言葉を残しながら、頭が一杯の状態になったエレミアは気を失ってしまう。
アースは即座に崩れ落ちるエレミアの体を支え、ガウェインはバスケットが落下する前にそれをキャッチすることで事なきを得た。
「あー……うん。とりあえず俺はエレミアを館に運んで休ませてくる。二人は先に食べていてくれ」
エレミアを抱き抱えながらアースはそう告げた。
しかしアースにしては珍しく目を伏せがちで、さすがに色々と意識してしまっているようだ。
「おー、行ってきぃや。……むふふ、なんや子供みたいに初心でええなぁ」
そんなアースの様子を見たコハクは、一連の流れで垣間見えた二人の初々しさに思わずにやけてしまうのであった。




