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『天与』の使い方

 そして次の日太陽が一番高くへ昇る頃、更に道を作りつつアース達はリーフェルニア領へと帰還する。

 そのまま館に帰り報告をするアース達は、予定日数の半分にも満たない期間で戻ったのでレオナルドに驚かれてしまう。


「レオナルド様、只今戻りましたッス!」


「おお、ガウェインにアースにコハク。随分早いな……まさか何か問題でもあったのか?」


「いや、滞りなく完了した」


「そ、そうか……鉱山の状況はどうであったのだ?」


「それはウチから説明させてもらうで。結論から言うとあの一帯には希少な鉱石がわんさかあって、まさしく宝の山やったわ。ほいで一個問題があってな、洞窟かと思って探索しとったそこはなんとメタルイーターの住処やってん」


「何!? メタルイーターか……確かに厄介だな」


「まあ倒したんやけどな? その戦闘の結果洞窟が崩落してまったんよ」


 レオナルドは一瞬驚いた表情をしていたが、アースが同行していたのを思い出し、納得したような表情に変わる。

 メタルイーターはBランクの魔物であり、自分であれば倒せる相手であったので、その自分を越える実力を持ったアースがいればその結果も納得できる。

 実際には特殊個体でSランクに相当する程の強敵であったのだが、コハクが説明を端折っていたのでレオナルドはそれを知る由もなかった。


「そうか……なら発掘隊を編成しなくてはな。規模と物質をを考えるとかなりの長旅になりそうだな……」


「……あー、それなんやけどな。こっから真っ直ぐ行ける道ができてん。道幅も結構あって平らやし馬車でも行けるで」


「何? 道があったのか……?」


「えーと、その……兄貴が作ったんスよ」


「作った? 何を言ってる――――アース、まさか『天与(ギフト)』を……?」


 そんな突拍子もない事をするなど、考えられるとしたらこの男しかいない、そう思いレオナルドはアースに視線を送る。


「すまない、メタルイーターとの戦闘時に使うしかなかった状況でな。一度見せたのなら隠す必要はないかと思ってな」


「……そうか、まあ無事だったのなら良い」


「……レオナルド、俺の『天与』について話があるんだがいいだろうか?」


「――聞こう」


 アースの真剣な眼差しにレオナルドは気を引き締める。

 短い付き合いであったが、アースのここまで真剣な表情は初めて見たので、今までの待遇に不満を抱きついに領地を出ていくのではと危惧する。


「俺のこの力……上手く使えればリーフェルニア領をもっと発展させられると思うんだ。だからこの力を使って俺の命を救ってくれたエレミア達に恩返しがしたい。レオナルドが危惧することも無視は出来ないだろうが……許可して欲しい」


 想像していたことと真逆の言葉に少々面食らうレオナルドであったが、その真意を受け止め改めてアースの意思を問う。


「他の貴族や魔王軍にも目をつけられかねないのだぞ? 当然そうなれば領民に危害が及ぶ可能性が高い。それでもお前はその『天与(ちから)』を振るうと言うのか?」


「ああ、こちらが目立つような真似を何もしなかったからといって、貴族や魔王軍に何もされないという保証はないだろう? だったら万全の準備はしておくもだ。俺はもう後悔したくはない。……もちろん皆が望まないのであれば無理強いはしない」


 アースの決意を聞いたレオナルドは目を閉じ、しばらく考え込んでいた。

 重い空気にその場の誰もが口をつぐんでいたが、考えがまとまったのかレオナルドは目を開き話し始める。


「……フム。アースよ、貴公の考えはわかった。……確かに貴公の言う通りかもしれんな。我輩の不甲斐なさ故に、領民に満足のいく生活をさせてやれていないのが現状だ。街の発展を目標に今までやってきたのだ……それが叶うのであれば多少のリスクは目を瞑らなくてはならないのかもな……」


「レオナルド……ありがとう。それともう一つ、この街の皆に話したいことがあるんだ……その場を設けて欲しい」


 アースはレオナルドの言葉を肯定と受け取り、礼を告げる。

 それと同時に自身の秘密を打ち明ける場を用意してもらうよう要請する。


「――フム、この場では言えぬことか?」


「ああ、できれば多くの人に聞いてもらいたい」


「――わかった。では明日の正午、街の広場にて領民を集めた集会を執り行うよう手配しよう。先程の件についても領民に知らせねばならんからな」


「……恩に着る」


 こうしてアースにとって運命の分かれ道になるであろう日を迎えることが決まった。

 まだ日が高い時間であったが、アースは自室に戻り旅の疲れをとることにした。


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