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プログラマーの見る夢は?  作者: まっこ
第6章 決断
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第5話 晴れやかな気持ち

「これで、退職の手続きは終わりです。

 ご苦労様でした」


 1時間ほど前、総務の女性の方に声を掛けられて会議室に連行(ドナドナ)されてきた。

 最初から最終日に退職の手続きをするように事が進んでいた様で、有給休暇を使わせるつもりは無かった様だ。

 いや、最終日だけは出社させて、それ以外は有給休暇を使わせてくれるつもりだったのかも知れないが、引き継ぎ先が決まっていなかった事を考えると怪しいと思わざるを得ない。


 その引き継ぎ先だが、未だに決まっていない。

 もう、決める気が無いのでは? とさえ考えてしまう。


(退職後に、電話が来るような事はありませんように……)


 そう、願うしかない。

 退社後すぐに、着信拒否を設定するのも1つの手だろう。


「じゃあ、これで帰っても良いですか?」


「そうですね。

 荷物を持って帰られても良いですよ。

 今日の分は定時で計算してありますが、もうやられる事もありませんよね?」


「荷物の整理がまだなので、荷物を纏めて帰りたいと思います」


「分かりました。

 ご苦労様でした」


 総務の女性は頭を下げていた。

 ただ、その仕草は事務的に見えた。

 何人も送り出している様だから、感傷も何もなく作業の一環となっているのだろう。


「失礼します」


 俺も頭を下げて、会議室を後にする。


 席へと帰ると、迫野さんが電話を受けていた。


(さっさと荷物を纏めて帰るか……)


 持ってきた紙袋へと私物を放り込む。

 私物と言っても、文房具や箱ティッシュなど量もそれほどない。

 5分ぐらいで、全ての私物を紙袋へと詰め込んだ。


(PCの電源、落としておくか……)


 いつもは点けっぱなし、気が向いたらスリープモードにしていただけだから、シャットダウンするのは本当に久々だ。

 PCもゆっくり休めるからか、直ぐにPCの電源が落ちた。


 その後、電話を終えた迫野さん、中垣内さん、大砂さん、北地課長の下へと行き、最後の挨拶をする。

 相も変わらず中垣内さんからは、余計な一言を頂戴した。


(まぁ、最後だし我慢するか……)


 最後だからぶっちゃけるという手もあるが、一応、社会人だ。

 今後、何があるか分からないから、出来るだけ穏便に事を済ませる。

 この一瞬を我慢できない程、俺は子供じゃない。


 そうして、会社を出た。


(自由だ……)


 何となく大声を出したい気分ではあったが、ここで急に大声を出すと周りから怪訝な目で見られるだろう。

 大声は我慢して、空を見上げた。

 見上げた空は、今までにないぐらい大きくて広いものだった。


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