学園編㊺
魔導ゴーレムの巨体が再び拳を振り下ろす。
地面が爆ぜ、凄まじい衝撃波が巻き起こる。
ライミが跳躍してかわし、俺が反対側からブレードで足を叩く。
「ひゃーっ、こっち見たにゃ!」
「そっち引きつけてくれ! 今、こっちで準備してっから!」
SSSクラスの奴らでも太刀打ちできないなら、きっと誰も止められない……ならこの日のために訓練したものをぶつけてやる。
トレスが風の盾を展開して援護、ジェダが凍結魔法で足元を固める。
スイランとエネッタは砲撃システムの構築にかかりきり。
この一週間、ずっとみんなで訓練してきた“最終兵器”――**超電磁砲**を、今こそぶっ放すときだ。
「座標調整完了……あとは魔道具のみです!」
「よっしゃ、そっちは任せとけ!」
俺が叫ぶと、空間に光が走り、召喚されるスタンガン。
ライミ、ステラ、トレス、姫様、スイラン、ジェダくんに渡して楕円形に整列する。
「魔力充填……っ、完了ッ!」
「照準、固定しました!」
「風流制御、任せてくださいまし!」
「冷却魔法設置完了!」
「ふんばるにゃ」
「いつでもいけるぜアニキっ」
Zクラス、全員の力を一点に。
あとは俺が、電力を流すだけ。
「いけえええええええええええええッ!!」
雷鳴のような轟音。
光の槍が、空気を裂いて一直線にゴーレムの胸を貫く!
衝撃波が周囲を吹き飛ばし、爆裂音が地の底まで響いた。
「当たった……!?」
ゴーレムの胸に、ぽっかりと空いた穴。
装甲が焼け焦げ、内部の魔力核が剥き出しになっている。
「効いた……のか?」
その瞬間、ゴーレムは膝から崩れ落ち、ボロボロと瓦礫の様に体が崩れ落ちた。
「やったにゃ」
「アニキ、最強っす」
ライミとトレスがガッツポーズで叫んだ。
「……電力、やはり魔力とは異なる力……だから吸収されなかった?」
「驚愕ですね……」
姫様とジェダくんは驚いた表情で顔を見合わせた。
「喜んでいる暇はありません。早く他のゴーレムたちも」
スイランが冷静に言うと、みんな次の超電磁砲の準備に入った。
「あの魔法陣……先生の……」
ステラだけは、ゴーレムが崩れ落ちた時に、一瞬だけ見えた魔法陣のことで呟く……先生? ライオネット? 気になるけど、スイランの言う通り、今は他のゴーレムの撃破が先決だ。
だが、崩れ落ちたゴーレムの体の中から赤い球体が現れ──その瞬間。
「……ッなに、これ……?」
スイランが小さく呟いた。
球体が赤黒い光で脈動を始める。
「ま、まさか……っ!」
ズドォォォォォンッ!!
凄まじい轟音と共に、ゴーレムが内部から爆発した。
放たれたのは、溜め込んでいた魔力の奔流。
暴走するエネルギーは空へと昇り、
──パァンッ!
その轟音と共に、空を割った。
「……う、嘘……あれ、結界、じゃ……?」
トレスの震える声。
空を見上げた誰もが、言葉を失っていた。
世界最高の魔術結界に、“肉眼で見える穴”が空いていた。
そのときだった。
結界に空いた穴の向こうから、何かが羽を羽ばたかせて降りてくる。
でも、違った。
それは“羽”じゃない──腕だった。
背中から左右に五本ずつ、合わせて十本の腕が扇状に広がっている。
それらを羽ばたかせるように動かしながら、そいつは空中を悠然と漂い、やがてフィールドに着地した。
ズシン……と、地面が沈む。
そいつの肉体は、魔物としか思えないほど筋骨隆々だった。
丸太のような腕、岩のような胸板、そして牙をむいたような笑みを浮かべた顎。
全身にまとう骨の装飾と荒削りな鎧は、戦場を征する者の威圧感を隠そうともしない。
「ガラにもねぇ張り込みのおかげで、タナボタだな」
野太い声と一緒に、背中の十本の腕が、ぞわりと蠢く。
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