戦力増強と言うなの、ダメ子いじり 3
「ウチ…。話についていけない」
「ブルースカイは、知らないから、しょうがない。
岩沢は、な。
自分の力のスゴさを、分かってないから。
俺達が気づいてやらないと、ダメだって言う話だ」
「そうなん?」
「そうなんです」
「沙羅様、いつか言おうと思ってましたね?」
「よし、分かりやすくしてやろう」
「スルーですか?
自分だけ、言いたいこと言ったから、満足なんですか?」
「岩沢、ちょっと聞くけどさぁ?」
「……」
沙羅は、ドコまでも聞き流した。
「な~に~?」
「鉄鉱石って持ってる?」
「なにそれ~?」
「岩より固くて、光ってる石だよ。
宝石とか、魔法石とかじゃ、ないやつ」
「あるよ~」
沙羅は、額に手を当て、頭を左右にふる。
「お父さん、頭痛いの?」
「うん。スレイの言うことは、正しいよ」
「うわぁ~。私も、武器とか、鎧とか。
そういう発想、なかったですよ、沙羅様」
ダメ子は、会話に参加することを、諦めなかった。
「これで、だ。
岩沢、裸体卒業、おめでとうございます、だな」
「…話だけで、どんどん、進んでいってますね、沙羅先生」
「コレばっかりは、しょうがないよなぁ?
なんで、気づかなかったんだろ? よし、岩沢!」
日々の生活に、必死だったからである。
「な~に~?」
「竜騎士の鎧、覚えてるか?」
「おぼえてる~」
「ソレを鉄鉱石で作って、お前、着てろ」
「そんなことして、なんになるのぉ~?」
「イイから、着ろ」
「わかった~」
一同は、歩みを止め。
岩沢の、手の甲の宝石が、発光するのを、見届け。
次の瞬間。
竜騎士の鎧の模造品を、身につけた、岩沢が、コチラをのぞき込む。
裸体に、鎧。
それだけの姿。
アニメやゲームで、ソレで防御力上がっているのか、不思議になるデザイン。
守る面積が、少なくなれば、なるほど。
見た目が、良いだけなのに、高性能な防具の数々。
「なんか、きゅうくつだよぉ~?」
実際に目にすれば、なんとも言えない感情が湧き上がる。
「……」
ビキニ姿と言っても、遜色ない岩沢。
銀色の髪、金色の瞳、褐色の肌。
そして、男勝りの身長に。
ムチムチとした、女性らしさだけを、強調したスタイル。
そこに、兜、胸当て、腹板、肩当て、ガントレット、腰回り鎧、グリープ。
守られていない、部位は、そのまま肌になり。
顔が隠れたことで、岩沢以外の、何かに見える。
声を出さなければ、さまに、なりすぎていた。
「沙羅様?
コレは、趣味に合うんじゃないですか?」
「ああ、エロいな。岩沢なのが、残念なぐらい」
鎧の下に、何も着ていないからなのか。
ほぼ真っ裸のときより、セクシーさが、増した気がした。
やはり、全部見えるより。
見えそうで、見えないチラリズムが、最強のようだ。
竜騎士の鎧は、普通にカッコ良い。
コレで大剣でも振り回せば、巨大なモンスターも、狩れちゃうかもしれない。
G級クエストだって、なんのその。
マッパハンマーだって、大活躍できるのだから、目の前の岩沢は、最強だった。
肌の露出度が高い割のに防御力が高い、謎理論を、実際に見せつけられ。
だが、これで最強だと思っている、自分自身に納得ができず。
沙羅は、考えるのをやめた。
「あと、盾だな」
剣と言わないところが、考えなしである。
「そうですね」
ダメ子も、もはや、投げやりである。
だが、当事者は、素直だった。
「たて?」
「盾っつうのは、な。そうだな、薄っぺらい丸作れよ、鉄鉱石で」
もう、どうでも良くなっている、沙羅は、何なのだろう。
「はい」
と、岩沢に言わせている、コイツは、何者なのだろう。
ドンと、一呼吸で地面に落ちる鉄製の丸い板。
ブルースカイも、ジュライ子も、なにも言えなくなっていた。
目の前の、超常現象に、理解が追いついていかない。
「……」
それは、沙羅も同じである。
「自分で言っといて。
いまさら、色々と、後悔している場合じゃないんですよ、沙羅様?」
「うるせぇなぁ! 分かってるよ。
でだ、コレを、左腕のガントレットに、くっつけてみろ」
もはや、投げやりになった者同士、気持ちは同じだった。
地面に窪みを作った鉄の塊を、岩沢は、軽々持ち上げ。
左腕のガントレットに押しつける。
押しつけて、鉄が溶接されるなら、何の苦労もない。
溶接もなしに、くっつけられて。
強度も抜群なら、鉄鋼業界は。
こんなにも、ススで汚れることはなかった。
だが。
強引に握力で変形させられた金属は、ガントレットと一体化し。
重みに耐えかねた、ガントレットは、岩沢の手から抜け落ちた。
「ダメだよ、さらぁ~」
ダメの意味が、違いすぎた。
「落ちないようにしなさい」
「は~い」
無事に、岩沢の左手にすえられた、鉄板。
自分の背丈ほどもある、大きな鉄の板を軽々と、支える身体能力に驚いていたら。
目の前の異常事態について行けない。
そもそも、これだけの重量が、体にかかっているというのに、だ。
少しもふらつかない岩沢。
地面が重みで沈んでいる。
自分自身の重さを増やして、重さに対抗し、できてしまっている。
なら、これだけの重さを、感じさせない体ともなれば。
岩沢を含め、ざっと見積もっても、1トンは、簡単に超えているだろう。
服も着ていないような、涼しい顔をして、立っている岩沢の異常さ。
立っている、姿はフォートレスだ。
歩くたび、地面が沈むのも自覚せず。
ただ、ただ、窮屈だと。
文句を言うだけの、岩沢にかける言葉が、見つからない。
「岩沢規格にすると、どれぐらいの鎧が、デキるんだろうなぁ?」
ココまで来ると。
もう、基準が、よく分からない。
だから、ただ、ただ、試してみちゃうのだ。
「岩沢、ちょっと重たく感じるまで、鉄の厚みを増やしてみ~」
言うは易し。
言うのは簡単だが、やるのは大変だ。
だが、彼女には通用しない。
「う~ん。ちょっとまってね。」
鎧の変形を繰り返しては、岩沢は、ぴょんぴょんと跳ね回り。
鎧は、ロボットの装甲ような、重圧感あるモノへと、仕上がっていく。
造形を竜騎士の鎧のまま、変形させ続けるから。
竜の姿をかたどった鎧は、竜そのものに、近づいていく。
そう。
言うは易かった。
「鎧の域を超えてやがる…」
「これは、誰も装備できませんね。重すぎて」
こんなモノを、人が装備しようとしたら、鎧に潰されてしまうだろう。
「コレで良い?」
鉄製の軽鎧が、重鎧に変わり。
鎧は、鎧の域を超え。
大きく、分厚い、鎧だったモノが、岩沢を包む。
剣を持たず、大きな鎧を、両腕に装備した、なにか。
沙羅には、何と言ったらよいか、分からなくなった。
「これでどうなるのぉ~」
コレで、腕を一振りすれば。
周りの木は、根元から折れていくだろう。
雑草を刈るかのように、一掃できてしまう。
今、岩沢が駄々をこねれば、クレーターが、できるだろう。
ソレを見て、我らがリーダー、沙羅は。
シレッと言い放つのだ。
「戦闘のときは、それで戦えよ、岩沢」
「だから、コレでどうなるのぉ~」
沙羅は、首をひねり。
「岩沢。
今、ダメ子に全力で殴ってもらうから、何もせず、立ってなさい」
「わたし、わるいことした!? さらさま!?」
「違うから。もう、痛くも、なんとも無いから」
彼女にキズをつけるなら、戦車砲が必要だろう。
ライフル弾でさえ、貫通は不可能だ。
アンチマテリアルライフルでさえ、彼女には、豆鉄砲だろう。
「そうなの!」
「そうだ、分からせてやるよ、岩沢!」
「ほんとう!」
「ああ、本当だ! では、ダメ子さん、お願いします」
他力本願だった。
急に、前に突き出されたダメ子は。
沙羅と、岩沢を交互に見ながら、焦りを隠さない。
「……。アレを殴るの?」
「お前が、怪我しないように、気をつけてくれ」
「殴らなくて、イイんじゃないんです?」
「殴らないと、岩沢、納得しないだろうが!」
パワハラだった。
「ココだけ聞いてると、ひどく物騒な会話ですよ、沙羅先生」
ダブルパワハラかもしれない。




