35話 戦力増強と言うなの、ダメ子いじり 1
三歩進んで、二歩下がる。
何を言ってるんだと、思いはするが。
実際に、味わえば、何も言えない。
ため息すら、出てくる始末である。
スレイの一件の、事後談は、終わっていなかった。
湖から、村に向かおうと。
ブルースカイに、空から見てもらい。
「村はどっちだ、ブルースカイ」
「えっと、アッチだね」
村が、あるであろう方角を、指さすが。
「アッチじゃ、分かんねぇ」
「そうだよねぇ~」
「じゃぁ、この先、何があるんだ?」
「森だねぇ」
「そりゃ、そうだろうけどよ!」
「だって、それしか、ないんだもん」
「だもんって…。
じゃあ、今、出発したら、どれぐらいで、つくんだ?」
「えっと…」
「夕方までに、着きそうか?」
「つくと思うよ」
「結構、あるなぁ…」
「明日の夕方には」
「……」
「聞こえてる~? 明日のねぇ~」
「いらねぇ!」
体力が尽きるまで。
体が、ボロボロになるまで。
逃げ、走り回った結果。
「沙羅様、ずいぶん、目標から遠ざかりましたね」
「……」
「もう一度、言いましょうか?」
「いらねぇよ!」
見つけた村とは、真逆に進んでいたのである。
「沙羅先生。スレイちゃんが、助かったから、イイじゃないですか~」
だが、勝負に勝って、試合には、大負けしているのである。
「…違う、そこじゃない。今、問題なのは」
「スレイちゃんが、助かったことだよね!?」
「オマエ! ワザとやるなら、もっと上手く、やれ!」
「…もう」
「一回は、ないから。
ちょっと、落ち着こうか、ジュライ子」
小さな子をつれて、一日で到達できる距離では、ないのだから。
沙羅が、ため息をつきながら、スレイを見れば。
「スレイちゃん、なにしてあそぼうか~」
「えっと、また、お魚とって~」
とても、楽しそうだった。
スレイは岩沢と、この湖に、永住しそうな勢いだ。
「ブルースカイ、横穴は?」
苦渋の選択である。
戻ったところで、崩壊しており。
良いところだけを言えば。
水があり、夜風を、全身で感じなくて良い。
「今日の夕方前には、なんとかなると思うよ」
横穴に、村までの中継地点にデキるメリットが、今、生まれたようだ。
「よし。じゃあ、ブルースカイ。
オレを横穴まで、ひょいっと運んでくれ」
「ちょっと、何言ってるか、わかんなぁ~い」
「空飛べるんだろ!?」
「なんで、沙羅を運ばなきゃいけないのか、わかんなぁ~い」
「運んでくれよ! その方が早いだろ!」
「無理~」
「なんでだよ!」
「私がもたないよぉ~」
気持ちではなく、現実問題だった。
「……」
歩きが確定した瞬間である。
空を飛べることを、最大限、利用し。
移動時間の短縮をしようとした、他力本願プランは、つかえない。
沙羅は、スレイを見て、頭を悩ませる。
スレイを連れ。
水の補給もない状態で、森の中を歩き続けるのは、苦しい。
トイレ問題は、同じ女性陣に、世話をしてもらうとしてだも、だ。
日の出スグの今から歩いて、夕方までに着けば良い距離。
それが、何キロメートルあるのか、考えたくもない。
沙羅を見たダメ子は、スッと立ち上がり。
「悩んでいても、ドンドン時間は過ぎます。
歩きながら考えましょう」
「水の問題とか、どうするんだ?」
「いままで、そんなことを考えて、進んできましたか?」
「目の前に、水が、あるんだから、なんとかデキるかもしれないだろ」
「なんとかって…。方法、今、思いつくんですか?」
「思いつかないけどさぁ~」
「なら、また野宿する方が危険です」
ジュライ子も立ち上がり、ダメ子の言葉に頷きを返す。
「先輩の言うとおりです、さすがに野宿は危険です」
「ダメ子が、寝るからだろうが!」
ソレを言ったら話が進まない。
ジュライ子、ブルースカイは、顔を背け。
ダメ子は、口をパクパクさせ。
「じゃあ、スレイちゃん。森に、ぼうけんしに行こ~」
「岩沢ちゃん、まって~」
「待つのは、お前らだ! ちょ、スレイィィ~」
暴走する、子供達を追いかけ、沙羅は森に消え。
その後を、ジュライ子と、ブルースカイは、追いかける。
ダメ子は、森に消えていく皆を見て。
「私の望んでいた流れは、どこに行ったの?」
機械翼を広げ、ダメ子は、ため息交じりに、後を追いかけた。
騒がしかったのも、最初だけだ。
あーじゃない、こうじゃないと。
言い出すみんなに、沙羅は指示を出し、横穴へと向かう。
ブルースカイに、方角を見てもらい。
直線上にある、障害物を排除させる。
竜すら殺せる刀に、切れないモノは、ないのだが。
こんな使われ方をすると、誰が思っただろう。
ブルースカイ本人も、言いたいことの一つは、あったが。
スレイのためだと、言われれば、素直に言うことを聞くしかない。
ダメ子には、先頭をあるかせ。
生い茂る草木を、ペンソードで借りながら、ホバーの風で吹き飛ばさせる。
口が動いたダメ子を。
スレイに、あの道を、歩かせろってか? の一言で、沙羅は黙らせた。
ダメ子の次に、岩沢を歩かせ。
歩きにくい足場を固めさせる。
スレイと遊んでいると、モチベーションが上がる岩沢は。
スレイを後ろに歩かせると、喜んで引き受けた。
歩きながら、ジュライ子に、作れる食べ物の種類を増やすため、野菜の種を探させるが。
見る限り、草が生い茂るだけ。
こんな森に、自生している野菜が、ある方が珍しい。
それでも、黙々と探しているのは。
朝の一件が、あったからだろう。
目の前で。自分の作った野菜が、無残になっていく姿は。
もう、本当に見たくないのだろう。
ジュライ子が、チラチラと、スレイの様子を見ては。
周囲に視線を戻すのは、そういうことだ。
「スレイ、最強だな…」
いろいろ考えもしたが。
こうして森を歩けば。
いろいろ見えるモノなんだ、と、沙羅は深く納得した。
移動するのに、子供のスレイは、お荷物にしかならない。
守ってやらなければならない。
間違っては、いないだろう。
だが、デメリットばかりではなく。
メリットもあるのだ。
スレイがいるから。
お姉さんの彼女たちは、文句も言わず仕事をこなし。
どこか、笑っているのだから。
彼女たちを、精神的に、まとめてくれる存在。
それは、ダメ子でも。
沙羅にも、デキなかったことだ。
彼女たちの柱は、沙羅であり。
彼女たちのリーダーは、長女のダメ子であり。
スレイは、姉妹に愛される末っ子と言ったところだろう。
横穴から歩き出したときとは、大きな違いだ。
危険な一日だったが。
得られたモノも大きい。
沙羅は、前を歩く彼女たちを見て思う。
そんな感傷も、長くは続かない。
一時間も、森を歩き続ければ、代わり映えのしない風景が。
歩き続ける疲れが、皆に、のしかかる。
楽しそうにしていたスレイも。
岩沢が、かまっているから、まだ良いのだろう。
ソレがなければ、もう、弱音を吐いても不思議じゃない。
どれだけ進んでいるか、実感が持てないことに、口数は減り。
とくに、口出しをしなくても。
横穴ま、で歩き続けてくれる彼女たちを見て。
沙羅は歩きながら、考えるという暇つぶしをするしかない。
道中、昼ご飯に、肉でも取れればと思うが。
竜騎士がいたこの森の、動物たちは、どこかに逃げていってしまった。
昨日の今日で、戻ってくるとは考えにくい。
この森に動物が戻ってくるまでには、しばらく掛かるのだろう。
狩りができないなら、食糧問題は、やはりジュライ子、一強だ。
種があれば、新しい野菜が、作れるようになると言うが。
なぜ、種が必要なのか、聞いてないことに気づき。
「なぁ、ジュライ子。なんで、種が必要なんだ?」
と、聞けば。
「私、沙羅先生が他の野菜って、言うからあると思ってるけど。
他の野菜を知らないからだよ?」




