めんどくさいけどまた仕事を請けてみる
街に着いた。
なお俺が最初に転送されてきたこの街の名前はウルムというらしい。
「さーて、ご飯にしましょ!」
マリーのオススメの店とやらで夕食を取る。
ソーセージ、ゆでたジャガイモ、ザウアークラウトなる酢漬けキャベツ。
俺の世界で言うドイツ料理に当たるのかな。
確かにどれもそれなりに美味しいが、毎日だと日本人にはきついな…。米が恋しくなりそう。
「ミルン、あんた結構食べるわねー!」
「は、恥ずかしいですぅ、おなかがすいちゃって」
ミルンもあのボディだし女子にしては食べるほうだが、マリーの方がずっと食べてるけどな。
あれ?メグはソーセージを食べないな……。
「メグ、ソーセージ食べないのか?好き嫌いは良くないぞ」
「……」
……あれ?空気がおかしくなった……マリーもミルンも黙り込んでしまった。
俺なんかまずいこと言っちゃった?
マリーがぼそっとつぶやく。
「ニヒトレイス教徒は、肉を食べられないのよ。そういう教義なの」
あちゃー、そうなのか……。この世界の常識を知らないせいで、失態をやらかした……。
俺はメグに対し必死に取り繕った。
「まあ、ジャガイモは必要な栄養素がほとんど入っているらしいしな、たくさん食べて大きくなれよ」
「ごちそうさまなの」
食事を終えて、宿屋に戻る。
ひとっぷろ浴びたいが……宿にある体を洗う施設はお湯が出る蛇口と桶があるだけで、湯舟は無かった。やっぱりそうなるか……。
順番に利用して……俺が最後か。
お湯浴び所のドアを開ける。
……そこには、一糸まとわぬミルンが後ろ向きで立っていた。
ミルンの肉付きのいい体と、どーんとボリュームのあるお尻が目に入る。
そして驚異的なのは、後ろからでもはみでた横乳が見えることだ。こんなの初めて見た……。
「あ、あれ!?もう出るって言ってたよね……」
「ご、ごめんなさいサトシ様、あたし、のろまだからぐずぐずしちゃって……」
そしてミルンがこっちを振り返り……俺はさっと後ろを向いた。危ない、危ない。
しかし、ミルンは近づいてきた。
そして俺の背中にそっと寄りそった。
湿っている、あのやわらかくて大きな塊のぷよんとした感触が、再び俺の背中に……。
「そんなに恥ずかしがらないでも……私で良ければ、お好きなようになさってください」
な、なんだとぉー!?や、ヤバい!前の世界で女の半径1メートル以内に近づいた記憶が無い俺には、あまりに刺激が強すぎる!!
ん?なんか、視線を感じる……。
よく見ると、廊下の角から、頭をちょっと出して、じーっと見ている者が居る。
メグだ。
ま、まずい!人として男として、幼女に軽蔑される人生だけは送りたくないっ!
「ご、ごめんミルン、着替えたらまた呼んでよ、待ってるからさっ!」
「そ、そうですか……」
俺はそう言ってそこから離れた。
「いやぁーメグ、こんなところで会うとは奇遇だな、さあお兄ちゃんと一緒にお部屋に戻ろうか」
「…………」
メグの純真な曇りの無い眼が、突き刺さるぜ……。
体を洗った後は就寝。
娯楽が少ない世界だから夜は寝るしかない。この点については今後どうにかしたいと思っているが。
部屋割はマリーとミルン、俺とメグにした。
「あんたは私やミルンと一緒にしたら何するかわからないからね!まさかメグには手を出さないでしょう」
甘いなマリー、俺のいた世界ではロリ好きはメジャーコンテンツなんだぜ……も、もちろん俺はメグには何もしないけど。
部屋で就寝する。
今日は疲れた、寝んべ寝んべ。
……うーん。ん、ん!?
メグが……俺のベッドに入り込んできてる!
「な、なんだメグ、眠れないのか?」
「……サトシ、どうしてメグを助けてくれたの?」
「え……それは……助けなかったら、後悔するからさ」
「後悔?」
「そう。あの時、なんであの子を助けなかったんだって、ずっと後悔しながら生きることになる。そんなの、めんどくさい」
「めんどくさいの」
「そう。ずっと嫌な気持ちのままになる。そうなるより、無理してでも助けた方がいい」
「メグじゃなくても、そうしたの?」
「そうだな……あの時のメグは、ちょっと悲しそうな目をしている気がした。メグだから助けた、のかな」
「そうなの……」
すー、すー。
メグは寝息を立てて眠りについた。安心したのだろうか。
子供が虐められていたら誰であろうと助けるべきだが、俺がメグから特別な印象を受けたのは、嘘じゃない。
まあいいや、俺も寝よう。
翌朝。
マリーがバンとドアを開ける。
「朝よ!もう起きた?サトシ……って、ええーっ!なんでメグと一緒に寝てるのよっ!」
「ん、んんー?なんだよマリー、うるさいな……」
「……おはようなの」
「はやく離れなさい!」
別にいいだろ、まだ寂しがりやの幼女なんだから……もちろん何もしてないし。
「添い寝をして欲しいなら、あたしがして差し上げるのに……」
ミルンが残念そうだ。いや、ミルンと一緒だったら、何もせずにいられるかどうか自信はない!
「さ、今日はギルドに行くんだろ!さっさと行こうぜ!」
こういう時はかまわないのが一番めんどくさくない。俺は飛び起きて、部屋の外に出た。
道すがら、マリーがメグに話しかけた。
「ねえ、メグの親はどこにいるの?あの不埒なお兄さんの乱行を親に言いつけてやらないと」
「パパとママのことは……わからないの」
「あの教会にはいつからいたの?」
「1年くらい前なの」
「じゃあ、あそこで生まれ育ったわけじゃないのよね……その前は?」
「覚えてないの……」
メグは記憶喪失のようだ。なんとかしてメグの親を探してやれないだろうか。
―――
ギルドについた。
受付のお姉さんが早速声をかけてくる。
「おはようサトサト!元気してた……あら、女の子が2人も増えてる!やるじゃんサトサト!」
「はあ……おはようございます」
苦手な陽キャのノリだ。めんどくせえ。だいたい、メグは幼女だぞ。
マリーがお姉さんに話しかける。
「ねえ、オススメの依頼ない?場所が近いやつ。サトシが文句言うのよ」
「サトサトはだらしないわねー。そうね……これなんかどうかしら?」
「なになに……デスバレーでジャッカル討伐…1頭狩る毎につき銀貨5枚!?やるやる!」
「家畜を食べるジャッカルの毛皮は高く売れるから、狩るのは一石二鳥なのよね」
おい、他の三人と相談も無しに決めんなよ……まったく。
俺が不満げにしているのを察したのか、マリーがこっちを向いて文句を垂れる。
「なによー、文句ある?デスバレーはここから歩いて1時間、ミュール村よりも近いのよ。横着なあんたにはうってつけでしょ?」
「まあ近いのはいいけどさ…ミルンとメグはどうだ?」
「あたしは、かまわないです」
「メグも一緒に行くの」
「じゃあ、決まりね!」
そう言うとマリーは依頼票にサインをして、ギルドを飛び出した。
ミルンとメグも慌ててついて行く。
やれやれ……また仕事をしなければならんのか。めんどくさい。
もっと楽して稼げる方法……考えは無くもないんだが、今日は害獣駆除に勤しみますかね!