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お人好し令嬢は、呪われた王子を救いたい  作者: 久遠 ヒカリ


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2/2

後編 呪われた王子が見つけた真実の愛

(クロード視点)


 昔々。


 あるところに、とても優しい王子がいた。


 誰にでも分け隔てなく接し、知性と品格を兼ね備えた王子。


 婚約者である王女とも仲睦まじく、周囲からは理想の王子と称えられていた。


 ――だが、その優しさが悲劇を招いた。


 僕に想いを寄せていた一人の令嬢。


 彼女は婚約者に嫉妬し、禁忌に手を染めた。


「あなたなんて、真実の愛を見つけるまで永遠に呪われてしまえばいいのに!」


 狂気に染まった呪いが放たれる。


 震える婚約者を見た瞬間、僕の身体は勝手に動いていた。


 気づけば呪いを受けたのは僕だった。


 それから人生は一変した。


 美醜反転の呪い。


 美しいものは醜く。


 醜いものは美しく。


 人々が敬愛していた王子は、一匹の黒猫へと姿を変えた。


 誰も僕だと気づかない。


 誰も僕を見ない。


 王太子としての価値も、未来も失った。


 そんなある雨の日。


 僕はララベルと出会った。


 普通なら避けられる黒猫。


 それなのに彼女は迷わず駆け寄ってきた。


「大丈夫?」


 その一言が嬉しかった。


 彼女は僕を王子としてではなく、一匹の傷ついた猫として助けてくれた。


 だから心地よかった。


 何も期待されない時間が。


 ただ隣にいてくれる温もりが。


 気づけば僕は、彼女の帰りを待つようになっていた。


 笑顔を見るだけで嬉しくなった。


 名前を呼ばれるだけで幸せだった。


 いつしか思う。


 元に戻れなくてもいい。


 猫のままでも構わない。


 彼女の傍にいられるなら。


 けれど、その願いは叶わなかった。


 彼女が額へ口づけた瞬間。


 呪いは解けた。


 どうやら僕は、とっくに真実の愛を見つけていたらしい。


 その後、僕は王位継承権を返上した。


 王宮には優秀な弟たちがいる。


 もう十分だと思った。


 僕が欲しかったものは玉座ではない。


 ただ一人の少女だったから。


 海の見える丘に邸宅を建てる。


 潮風が吹く静かな場所。


 そこでララベルと暮らし始めた。


 ある夕暮れの日。


 庭で花を育てる彼女に声をかける。


「あの日、僕を見つけたのが君で良かった」


 ララベルは少し驚いた後、柔らかく笑った。


「あら、奇遇ね」


 そして花のような笑顔で続ける。


「わたしも同じことを思っていたわ」


 夕陽が海を黄金色に染める。


 僕は彼女の手を取った。


 もう二度と離さないように。


 呪いがくれた不幸は大きかった。


 けれど、その先で君に出会えた。


 だから今なら言える。


 あの日の呪いも、人生の遠回りだったのだと。


 ――最愛の人と出会うための。


【完】

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