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復讐者、復讐の果てに彼は何を思ったか

リョウマ達はステュアート家に戻り、一旦それぞれの部屋で休んだ。


そして、ステュアート家の居間にてリョウマ、レンコ、エマ、スフィア、ラフロシアがいる。


この居間は近くに簡単な調理場があり、そこにあるカウンターにてメグとケンとカツが固唾を飲んで、見守っていた。


「さて、どこから話せばいいかしらね」


スフィアは前かがみになりながら、顎を手に乗せていう。


「いや、俺から話そう…俺がどうあの過去を認識しているかを話す事で色々分かるし」


そして、リョウマは話し始めた。


「ラフ、メグ、とケンには前にも話したけど俺は二度の召喚を受けて今ここにいる。一度目は魔王国、二度目はランドロセル王国だ。そして、ランドロセル王国が俺を召喚した理由は戦力の増強だと伝えたよね?」


「はい」


メグが相槌を打った。


「もう話す必要がないと思っていたんだけど…実はあの召喚は単純な戦力増強のためだけに行ったわけじゃないんだ。あの国は…俺を第二の国家象徴にするために俺を召喚した」


リョウマは3人に伝えていなかった事実を口にする。


「それって、やっぱり魔王国を意識してか?」


ラフロシアがリョウマに確認する。


「あぁ、そうだろうね…そこらへんも後で話すよ」


すると、ケンがリョウマに聞いた。


「なぁ、リョウマ。そもそも国家象徴って一体何なんだよ?単純に力が強い人達の集まりなのか?」

度々出てくる国家象徴の話題。


国を守護する者としての地位である国家象徴。しかし、それにしてはあまりにも不可解がある事にケンは感じていた。


「そもそも国家象徴と呼ばれているけど、魔王国を見て分かるようにラフ、ルカルドにリョウマって純粋な魔王国出身じゃないじゃん。純粋にその国出身の国家象徴がいない訳ではないが…それよりも違う意味として国家象徴は存在するんじゃないと思って…」


「ケンさん…意外と鋭い事を口にしますね」


「メグ、今はそういうのいいから…」


レンコがメグにツッコミを入れる。


そして、リョウマが国家象徴の説明をする。


「そうだな。魔王国もそうだし、あのイグルシアの国家象徴も国外の出身だ。そのためにはスキルが関係しているんだ…実は」


才能を可視化した存在であるスキル。それがそもそも国家象徴という制度が生まれた理由だとリョウマ言う。


そして、同じ国家象徴であるラフロシアが言う。


「そもそも国家象徴とスキルの関連は深いものなの。才能が見えるこのスキルのせいで、各国は強力なスキルを囲うようになった。ざっと500年前程にはできたのよ。そして、全ての国ではないけど…国家象徴は国を守護する以上に…最高の武力という認識が強くなったのも事実よ」


強いスキルをより特別な存在に仕立て上げた国家象徴の制度は、同時に強いスキル保持者達が一般の人達から別次元の存在という認識に変わった。


「つまり、俺達は兵器なんだよ。各国の王族からすれば、まぁ魔王国のためならそこまで嫌ではないけど」


「そんな!アマンダ様はそんな風にリョウマさん達を思っていません!」


これにメグが反論をした。


「でも、まぁ事実。俺達、国家象徴の最重要の任務は王の警護。その分、自由はあるが…王の命が亡くなった時にはその国家象徴も死ぬ契約をされるんだ…」


「え!」


「そんな…」


「リョウマ…それは世間には伝えていないのに…皆、これは最重要機密よ…うかつに話さないように」


「はっはい」


皆が国家象徴の事実に驚いた。そしてケンは察した。


「そうか…じゃあ、リョウマが頑なにランドロセル王国に従わなかったのも…」


「そうだよ、あんな国の王に命を掛けたくないからな。だから冒険者として王城には極力行かない様にしたんだ。当時は国家象徴の秘密をばらす訳にも行かなかったから、お前らにも言えなかったんだ」


レンコとエマにスフィアに語る様にして言う。


「知らなかった…」


「そうだったんだ」


エマとレンコだはそれぞれの感想を漏らす。


「でも、頑なに契約を渋っていた俺にランドロセル王国側も痺れを切らしていた。それは当時のランドロセル王国にはウイジャン・ミロス・ミサカイしかいなかった事が大きな原因だったんだよ…あいつらは焦っていたんだ。そして、ケイン侯爵の一件でランドロセル王国は俺が下につかない事を察したんだろう…そこからお前らに俺の暗殺計画が持ちかけられた、違うか?スフィア?」


「…一応補足すると…私はスフィアに話を持ち掛けられた…言い方が弁解しているようで悪いけど」


「…同じく」


エマがスフィアが全てを知っていると誘導する。


「…、大筋は合っているわ」


すると、スフィアの口が開く。


「大筋は合っている?どういう事だ?」


「えぇ、ランドロセル王族達が貴方がいつまで経っても国家象徴にならない事に業を煮やしていたのは本当よ」


しかし今度はスフィアがリョウマに質問を投げかける。


「でも、どうして焦っていたか分かる?」


焦っていたのはリョウマの中でも予想は付いていた。


「それは、魔王国が攻めようとしていたからだろ。国家存亡の危機だったろうし」


あの時、アマンダ率いる魔王国はランドロセル王国の強引な外交に怒りを感じ、攻め入ろうとしていた。これは獣人の国、ヴォンロウドも同盟を結ぶ事で一気に片付けようとしていたのをリョウマが止める形で均衡は保っていた。


「違うわ…それよりも火急の事件があったのよ。これはあのケイン侯爵が漏らしていたから間違いないわ」


「あのバカか…」


今は懐かしい、そして確実に死んだあの侯爵の名前を聞いて軽い苛立ちを覚えるリョウマ。しかし、次のスフィアの言葉で一気に吹き飛ぶ。


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「何?!」


ウイジャン・ミロス・ミサカイはランドロセル王国の国家象徴で、ラフロシアとルカルドのの二人と戦った後に行方不明となった男だ。


「あの男がイグルシアに」


「そっか…ラフは戦った事あるのか」


「戦ったというか…」


ラフロシアは言いずらそうにしていた。何かあるのだろうか?とリョウマは気に掛けるもまずはスフィアの話の戻る。


「そんな、契約がある以上他国に移る事なんて」


メグの意見も最もだ。


「それはどうやってかは知らないけど…ウイジャン・ミロス・ミサカイはイグルシア帝国に移る事ができたのよ…あの王族共は馬鹿だったから、案外そこまで複雑じゃないのかもしれないけど」


「確かに…」


リョウマの記憶でも豪遊していた王族しか覚えがない。あれでは後ろからいつ刺されてもおかしくなかった。


「なら、どうしてリョウマの暗殺に繋がるんだ?むしろ、リョウマを大切に扱うだろう…どんな馬鹿でも」


ケンはそうスフィアに言う。


そしてそう来るのを見越していたのか、スフィアは簡単に種を明かした。


「それが、そもそもリョウマを暗殺する事を指示したのも…あのウイジャン・ミロス・ミサカイなのよ、ランドロセル王国に残る条件としてね」


「はっ?!なんで?!俺なんかしたのか?」


ウイジャン・ミロス・ミサカイとの面識は少ないリョウマだった。そもそもウイジャン・ミロス・ミサカイはずっと王城か任務で外で出ていく人だったので、王城にあまり行かなかったリョウマは面識が本当に少なかった。それなのに…そんな人から暗殺の条件を突きつけられていたのはリョウマも知らなかった事実だ。



「そもそも、リョウマ…可笑しいとはリョウマは思わなかった?どうして私達が逆らわなかったのか?」


「レンコにそこらへんは聞いたけど、いい条件で断れなかったとしか」


「そうね。レンコには言わなかったわ…元凶をいって、殺しに向かって私に飛び火でもしたら困るもの。」


「エマは、それでスフィアの提案に乗ったの…」


エマは意気消沈としていた。


そして、レンコは興奮気味に言う。


「そもそも私はリョウマを殺すとは聞いていなかった!」


「え?」


レンコの告白にリョウマは驚いた。そんな事は一言も言っていなかった。


「…そうね、貴方にはリョウマを元の国に飛ばすとしかあなたには伝えていないわ」


どうやら本当の事らしい。


「そうなのか…レンコ、どうしてそれをいままで」


言いにくそうにしてレンコは言う。


「そんなの…今さら言ったところであなたを殺しかけた事には変わらないわ…」


「おまえ、それで結果的にお前達を殺さなかったからいいようなものを…もし殺してこの事実知っていたら、俺自殺するかも…」


「ねぇ…反省している身分としていうのもあれだけど…二人の世界に行くなー…パーティー時代も時々あったけど…」


エマが二人を呼び戻す。スフィアは二人を無視して説明を続けた。


「全く…あんたらのそういう所が嫌いなのよね…まぁ私の場合は家族殺しの過去があるわ。だけど、レンコはともかく、このエマは普通の育ち…はっきりいって仲間を売る度胸もない小娘よ。それがどうしてあんな事が出来たのか…それはリョウマ以上に強い者の圧力に負けたからよ。それがウイジャン・ミロス・ミサカイ。以上があなたの暗殺の真相よ」


そして、リョウマは考え込むようにして、今の事実をどう受け取るか考える。


「エマは…ごめんなさいっていいたいわ。こうして、助けてもらっているのだし」


「報酬もあったわ…だけど、そこのレンコの様に田舎に引っ込んだのもいれば、切り替えていった私達みたいなのもいるわ。だから、悪いとは思わない。それが生きていくって事だと私は思うから」


スフィアは彼女なりの謝罪をしているのだろう。恨む権利があなたにはあると言外に言っている。


「いや、いいんだ。お前たちが心の奥から俺の事を嫌っていない事を知れて、俺は寧ろ安心したよ」


「私は当時の貴方は嫌いだったけどね」


「うるせい」


スフィアとリョウマの関係は少しずれている。悪友のような仲良しでもないが、しかし、これが二人の仲としてこれからやっていくだろう。


「じゃあ…ウイジャン・ミロス・ミサカイはもしかしたらなんか知っているかもな」


ウイジャン・ミロス・ミサカイ。新しく出てきた重要人物。

ラルフと同じくらいリョウマが自身が会わなければいけない人だと感じた。


「イグルシアに逃げた可能性は高いわ」


ラフロシアがウイジャン・ミロス・ミサカイについて言う。


「実はあの時、ウイジャン・ミロス・ミサカイは明らかに手を抜いていたのよ」


「手を抜いていたって?」


リョウマが詳しい説明を求めた。


「あの時…ランドロセル王国と魔王国の戦争は佳境に入っていたわ。だけど、殆ど魔王国側の勝利は確定したのよ。そんな中で私とルカルドがウイジャンの足止め目的で相手をしたんだけど、あの人はスキルを使わなかったのよ」


「使わなかった?」


「えぇ…得物である太刀で私達をけん制するだけで…そして、私達が玉座にて王族を取り押さえた事を知ると、お城を壊して逃げたわ」


「逃げてしまったと…」


「てっきり投降するものばかりと思っていからね。まさか契約が解かれていたなんて…」


ラフロシアはこれで合点がいったとばかりにうなずく。


「…まぁ、色々話は聞いたけど、やっぱり特にスフィアとエマに俺からする事はないわな」


あっけからんと言う。


「リョウマならそう言うと思った」


「だな」


「でも、私達は最後まで反省とか謝罪しなかったのに」


「まぁ、俺もお前らを落としれたからお相子で…それにこのままいがみ合うのも辛いだろ」


恨んだり、いがみ合ったりという感情は実に長く持つのは辛い。


リョウマは特にそう感じていた。


なので、許すのが彼にとっても最良だったのだ。


「何回もいっているけど、エマとスフィア。当分は俺の部下って扱いでよろしくね」


「はいっ!」


エマは涙ながらに言う。


「よろしく」


スフィアはからっというが、口元は微笑んでいた。


「良かったねエマ」


メグはエマが許された事にほっとした。


「…うーん」


レンコは少し嫌がっていたが、リョウマが許したので自分からこれ以上言うつもりはないらしい。


こうして、長きに渡ったランドロセル王国でのリョウマのパーティのいざこざは終止符を迎えたのだ。


それはリョウマの選択と共に。

~いつもの章終わりの東屋の後書き~


これにて第四章 愚者の選択 が終わり、次は久しぶりに間章を挟んでからの五章へと移ります。


リョウマ、レンコ、スフィア、エマの仲が直りました。


書きたかった話だったので書ききれて良かったです。(レンコはまだ怪しいですが…悲しい展開には持っていかないかと思います。約束はできませんが…)


第四章のタイトルである“愚者”はリョウマを指しています。彼は異世界で重要な地位にいますが、多くの失敗をしている愚者でもあるからです。そんな失敗しがちなリョウマが自分の行った復讐とどう向き合うのかという点を意識しつつ、この章ではリョウマが王国時代に起こした過去の失敗や因縁を清算してほしいと考えていました。



ただ…どのような形で清算させるかは直前まで決めかねていました。毎日という訳ではありませんが、この物語を書き記していた最初の方からリョウマ、エマとスフィアの因縁をどのようにするか考えていました。



最終的にはこれまで読んで戴いた形に収まりました。

読んで戴いた皆様それぞれに合うメッセージとして受け取っていただけたらなと思います。


なんやかんやで不定期更新で1年以上続いている作品ではありますが、多くの方に読んで戴いて嬉しい気持ちでいっぱいです。

本当に有難うございます。どうか引き続き「復讐の反省」の方を御贔屓にして下さい。よろしくお願い致します。


東屋

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