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復讐者、女にご注意を

リョウマ達が見逃していた数分の間。


カーナークのいる一階の戦況は、ある人物達の登場で一変した。


それはカーナークが率いる部隊がリョウマの最初に乗った転移紋のある部屋に入った時に起こった。


「ふむ…まだ援軍は来ていないようだな」


カーナークは部屋に残っていたイグルシアの兵士の残党を一瞬で凍らせ、辺りを確認する。


「しかし、おかしいですね。あれだけ積極的に攻撃をしてきた割には策がなさすぎます。まだ何か手があるのかもしれません。…カーナーク様、どうか油断しないでくださいね」


強引にもいえる強襲…カーナークの存在を知っているはずのイグルシア帝国からの奇襲にしてはあまりにも雑な攻撃だ。


「何を言う…私が油断なんぞしない」


すると、部屋にあった転移紋が光った。


「おや、これはこれは…」


光り出す転移紋を見て、カーナークは思った。

援軍が来るのだと。

そう思ったカーナークは部下を後ろへと下がらせて、氷漬けにしようと構える。


(この技も正確に凍らせるためには視認する必要があるからな…まぁ…誰が来ても、私は負ける事はないだろう)


そして、転移紋から援軍と思われるイグルシアの者が現れた。


しかし、現れたのはたったの二人。


それは白い仮面と赤い仮面を着けた者達だった。


(身長からして…女性か?少なくとも赤い仮面はそうだな)


カーナークは少し警戒して、攻撃するのを中断した。

思えば、これがいけなかったのだ。


カーナークは聞く。


「聞こう、貴様らはイグルシアの者か?」


突然声を掛けられた二人は仮面をカーナークの方に向ける。


「……」


「何こいつ?」


赤い仮面の者がカーナークの毅然とした態度に反応した。


白い仮面の者が辺りを見て、目の前のエルフがミカロジュの森の国家象徴のカーナークだと辺りをつける。


「カーナークだわ。()()()()()。やっておしまい」


「了解。私のお人形になってな」


カーナークに返事もせずに、赤い仮面の者の方がカーナークに近づいてきた。

その行為を愚行に思ったカーナークは鼻で笑った。


「お嬢さん達…私を無視するのは些か傷つきますね…それにイグルシアの手の者なら、捕縛する必要がありますので―――」


そういい、床に手をつけた。


「―――しばらく眠ってください」


【北陸の氷の樹】


イグルシアの兵士達を一層した大技で先制する。

先天的スキルを持つカーナークだからこそできる大規模攻撃。

これを防げるのはこの世界でも数人しかいないとカーナークは自負している。


ただ、その数人が目の前の相手にいる事が彼の計算の中では抜けていた


突如、白い仮面と赤い仮面の前に金色の壁が出現する。


(何?!スキル保持者か何かか?)


自分の攻撃を防がれたカーナークは一歩下がりつつ…と思ってある事態に気が付く。


今度は自分の足が動かない事に。


「なっ?!」


足を見ると、相手の出した金なのだろう、それが足にまとわりついていた。


「私の金で動けなくしたわ…後は任せたわ」


「はいな♪」


すると、赤い仮面の者がカーナークへと近づく。


カーナークは反撃しようとするが、次々に金で覆われる。


「そ~れ~!」


そして、赤い仮面の者がカーナークの頭に手をかざすと…


「なっ!…」


カーナークはどんどんと意識が消えてかかっていく事に気が付く。


(やばい!私がこんな手に引っかかるとは!)


何とか意識を保とうとするが…その努力もむなしく、カーナークの目が色彩を失った。




リョウマ達が見たのはこのカーナークが金によって捕縛された時だった。


「我が国の国家象徴が…」


議長、そして会議に参加しているエルフ達は自国の最高戦力が負けた事に愕然としていた。


しかし、そんな事よりも驚愕の顔を露にしていたのがリョウマだった。


「なっ!…あの声は」


“私の金で動けなくしたわ…後は任せたわよ”


“はいな♪”



白い仮面と赤い仮面の者が話した声。それは遠視の魔法を介して、リョウマ達にも聞こえていた。


そして、あまりにもリョウマにとって聞き覚えのある声だった。


「そんなバカな…どうして…それもイグルシアなんかに…」


気が付けば、リョウマは一階へと駆け抜けていた。


「リョウマ殿、どちらへ!!」


【大会議】の議長が突然動き出したリョウマに聞く。


「俺も一階へ行く…あいつらには個人的な因縁がある…ように感じるからな…後、レンコ、俺と同じく捕まっていた人間を大至急解放して、なんとしても無事に外へと出せ!いいな!!、絶対俺の所に来させるな!」


そう口早に言うと、一階へと向かって行った。


そのリョウマの焦った顔に、議長も「うん」と空返事を返すしかなかった。


「あいつら、どうしてここにっ!」


リョウマの頭の中には一階にいる白と赤の仮面の者の事しかなかった。




一方で、場所は再び一階の転移紋のある部屋。


金の捕縛を解かれたカーナークは人形のように立ち尽くしていた。


瞳孔が軽く開いているので、意識はあるように見えるが、その立ち姿は夢遊病患者のように力なく佇んでいた。


「操作完了だわ」


赤い仮面の者が白い仮面の者に言う。


「そう、それは行幸ね…それと丁度、索敵魔法を発動したら、私達…見られている事がわかったわ…きっと彼も見ているでしょうね」


仮面で顔は分からない。しかし、白い仮面の者の声から嬉しそうだという事ははっきりと伝わった。

それは赤い仮面の者も同じく。


「マジ?じゃあ、もし会ったら改めて自己紹介しなきゃね。()()()()()()()()()?いるってラルフから聞いてるけど~」


間延びした口調で話す赤い仮面の者。


そんな二人をカーナークの部下達はただ見る事しかできなかった。


「カーナーク様…」


カーナークがやられたのを見た部下のエルフ達はどうすればいいのか分からず、ただ立ち尽くしていた。


「あらあら…相当あの国家象徴様は信頼を置かれていたみたいね…この人…えらそうな言動なのに」


白い仮面の者がくすくすと笑うかのように言う。


「貴様ら!カーナーク様をどうした!」


隊長のエルフが二人に聞く。


「あなた達の国家象徴は私の忠実な僕になっていただきました~」


そういい、赤い仮面の者がカーナークに向かって指示する。


「カーナーク、あいつらを凍らせちゃえ♪」


そして、床に手をついたカーナークは自分の部下達に自身のスキルを当てた。


「なっ!」

「うぁ!」

「これはカーナーク様の!!」

「カーナーク様ぁぁぁあぁぁ!!!」


瞬く間に、今度はエルフ達が氷漬けにされる。

反撃する暇もなく、部屋にいたエルフ達は動けなくなってしまった。


それを面白そうに赤い仮面の者が笑う。


「きゃははははは!いいねぇ、最高の悲鳴だわ~!これをあいつに当てるのもいいわね~」


「やめて、あいつは私が相手するのよ…あなたは()()()()いるのでしょ?」


「うっさいわね守銭奴が…」


「その生意気な口、これまで以上ね…今まで隠していたのかしら」


「そんなの…当り前じゃない」


「…まぁいいわ」


仮面の二人は何かをするつもりらしい。


その時に部屋の扉が大きく開いた。


リョウマだった。リョウマが部屋に入ったのだった。


「はぁ…はぁ…」


息を荒くして部屋へと入る。


「あらっ?」


「あれ?リョウマだ!」


すると、白い仮面と赤い仮面の者達両方がリョウマに反応した。


これでリョウマの中で確信が得た。


「やっぱりな…声を聴いて真っ先に()()()()()()


(出来れば…二度と再会なんてしたくなかったよ…)


「取れよ…その仮面はどうせ()から気づかれないためだろ?」


次に出す名前にリョウマは思わず息を整えた。


もし、そうなら…リョウマは改めて向かい合わなければいけない事になるのだ。


己の復讐に。


「…エマ、それにスフィア」


それを聞いた赤い仮面と白い仮面を着た者は自分の仮面に手を掛けて、外して床へと落とした。


トンットンッ


リョウマは仮面の裏に隠された顔を見る。


彼女らは不敵に笑う。


「久しぶりね…昔とは所属も変わったから…改めて自己紹介するわ」


白い仮面の者だったスフィアが言う。


「イグルシア帝国第八蛇師団団長 スフィア・ウィンゴールド」


そのスフィアの左頬には大きな傷があった。


続けて、赤い仮面の者、エマが言う。


「同じく、イグルシア帝国第八蛇師団副団長 エマ・ラマール」


エマの右目の下にはわずかにシミが残っていた。


(色々と聞く事が多すぎるぜ…たくっ、反省したらこれだ…)


ジュライドで一つの答えを見つけたにもかかわらず、再び出会ってしまったリョウマの復讐に関わる者。その者達は、リョウマのそんな気持ちも知らずに、ただ目の前の二人は嬉しそうにリョウマを見詰める。


目の前に最愛にも等しい、憎くてたまらない、復讐の相手がいるのだから。


「「殺しに来てあげたわ、リョウマ」」


死んだと思っていた、殺したと思っていた二人。


それが今、リョウマの前に再び現れた。


今度は仲間ではなく、敵として…


ここまで読んで戴き、有難うございました。


ブクマ、感想、評価等いただけると大変励みになりますので、もし良かったら宜しくお願い致します!


東屋

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