復讐者、彼の者の実力を見る
「すまない、私も参戦したいのだが…」
バロンは申し訳なさそうに言う。
「体の調子が悪いんだろ?無理するな」
「バロン様はここで安静にしていてください。イグルシアの兵は我々で食い止めます」
「よろしく頼むぞ、カーナーク、そしてリョウマよ」
そういい、リョウマとカーナークは転移紋で元の所に戻るかと思われた。
しかし、再び【大会議】らしい建物の中に帰ってきたが、初めに訪れたあの転移紋のあった部屋とは違う部屋だった。
来た時の部屋よりも小さい。
「あれ?ここは?」
「大会議内はいくつもの転移紋がある。ここは大会議の中央会議室横にある転移紋だ。貴様が初めてきた所は来客用の転移紋だ。まぁ国の外に出る場合はあの転移紋でしか外には行けないがな…」
「なるほど」
カーナークは説明を終えると、足早に部屋の扉を開けた。そして中央会議室へと入室した。
中ではカーナークよりも年上のエルフ達が焦りながら話しあっていた。
「現状はどうなっている?」
「はっ!一階は突如やってきたイグルシアの部隊に占拠されてしまいました。しかし、二階へと続く中央階段にてイグルシアへの攻撃を抑えております。奇襲で不意を突かれてしまいましたが、敵を抑え込むのも時間の問題でしょう…と言いたいところですが…」
「一階の転移紋も抑えられているため、援軍の可能性もあると」
「はっ、さらに外の結界を解く事も出来たいため…我々は外に出る事も敵いません。早々に一階部分の取り返す必要があるかと」
そういうと、中央会議室のドアが開いた。
「議長!このカーナーク!ただいま戻りました」
「おぉ!カーナーク!よくぞ来た…して後ろの者は?人間に見えるが…」
「はっ、例の霊獣暗殺の容疑がかかっていました魔王国国家象徴のリョウマ・フジタです。しかし、この度、霊獣様自身が彼の身の潔白を認めました。そして、今回のイグルシアの件に助太刀してくれるという事でここに連れてまいりました」
「なるほど…有難い申し出だが、ここは我らミカロジュの森の民でやれせてもらう。他国の力を借りては国の威信にかかわるかな」
流石は議長。エルフ至上主義と言われるエルフとはいえ、少なくとも彼の中ではそういう考えはないみたいだ。
「…では、私は身の危険を感じましたら、独断で行動しますね」
「あぁ、それで構いません…ただそうなる事もないかと」
「それとだ、カーナーク。さっそく貴様には立ち向かってほしい。幸いに敵は一階部分に固まっている。貴様の力を思う存分使える」
「はっ!了解致しました」
そういうと、カーナークは中央会議室から出ていき、中央階段へと向かった。
「…本当にあいつ一人だけでいいのか?やけに自信満々だったが…国家象徴一人でどうにかなるものか?」
「あぁ…リョウマ殿は知らないのですね。では…不安を補うがてら一緒にこれでも覗いてきましょう」
そういうと、空中に円状の鏡を出現させた。そこからカーナークが俯瞰で見れるようになった。
「これは遠視魔法の一つで、カーナークの頭上に配置しています」
「…仮にも他国から来た私に見せてもいいのですか?」
「はっはっは…何、あれを抑え込めるのは同じエルフの国家象徴だけだろう…」
議長は自信満々にそう言い切ったのだった。
(あいつ…そんなに強いのか)
リョウマは疑いの目を向けながらも、出してもらった鏡をみるのだった。
◇
【大会議】の中はシンプルな造りに建てられていた。
本来、国会やお城といったこの世界の首脳陣が集う場所は複雑な造りをしている事が多い。しかし、ミカロジュの森、このニューアリアにある【大会議】はこの世界にある建物と比べるとかなり単純に建てられていた。
それは【大会議】周囲に強力な結界で建物が守られているからだ。
ラフロシアでも簡単には崩せない程の頑丈な結界が建物外に張られていた。
地下を含める5階建ての建物である【大会議】は非常階段を除いて、中央に設置された中央階段が主な移動手段だ。
中央階段は幅広く造られており、十人ぐらいが同時に上がっても問題ない位だ。
「打て打て打て!!人間如きが魔法量なら我らエルフの敵ではない!」
そこではエルフの衛兵達が突如押し寄せてきたイグルシア帝国の兵士らしき存在と膠着状態まで持っていった。
エルフは総じて魔力が多く、魔法を得意としている。しかし、そのためか筋力…武力が不得手な物が多い。
そのため、距離が取れるこの中央階段での膠着状態に持っていく事になった。
それも、カーナークの存在があるからだ。
「隊長!カーナーク様が来ました!」
「おぉ!来てくれたか!」
そして、カーナークが中央階段へと到着する。
「隊長よ、戦況はどうなっている」
「はっ、敵は我々の魔法に警戒して、一階にて好機を伺っています。おそらく援軍が来るのかと…」
「なら、今のうちに一階を拿捕する必要があるな。前へと出る!貴様らは後ろに下がれ!私の攻撃の邪魔になる」
「はっ!ご武運を!」
そういい、カーナークはそのまま、中央階段を下りて行った。
「なんだあいつ?恰好の的じゃないか?」
「金髪の美丈夫のエルフ…あれがカーナークじゃねぇか?」
「チャンスだ!あいつを倒せば一気に師団長へと上がれるぞ!」
そういい、イグルシア帝国の兵士は各々の魔法や飛び道具をカーナークへと向け、一斉攻撃を布いた。
避けられる隙は一切なく、当たれば致命傷は間違いなかった。
「死ね!国家象徴!」
ドンッ
ドンッ
ドンッ
ドンッ
ドンッ
ドンッ
ドンッ
ドンッ
ドンッ
ザクッ
ザクッ
ザクッ
ザクッ
ザクッ
多数の魔法攻撃に飛び道具が刺さる音が聞こえた。
そしてそれらは見事にカーナークへと当たった。
「やりぃ―!!」
「大したことないな!」
「あぁ!全部喰らったぜ!ざまぁ!!!」
足を止めたカーナークには確かにその攻撃を全て受けていた。
しかし、しばらくしてイグルシアの兵士は気づく。
「あれ…血が流れて無くねぇか?」
「つーか、刺さったナイフとか白くなってねぇか?」
攻撃をした後の血しぶきが一切出ない事に疑問を持つイグルシアの兵士達。
そして次の瞬間。
カーナークは歩きだした。
「なっなっなっなっなっなっなっなっ何ぃぃ――――!!!」
「なんで動けているんだよ!死ぬだろあんなに刺さったら!」
そしてぽろぽろと、刺さっていたナイフは氷漬けにされ、そして傷口も再生していった。
「あぁー、一応受けてみたけど…君達はただの兵士みたいだね…警戒して損をしたよ」
通常通りに戻ったカーナークは口を開いて言う。
どんどんと近づくカーナークにイグルシアの兵士全員が戦慄した。
「打て打て打て!!」
「なんだこいつは!」
「こんなの敵う訳ないじゃないか!!!」
次々に攻撃を繰り出すイグルシアの兵士だったが、それらを除けてカーナークは言う。
「さっさと終わらせよう。大丈夫、殺しはしないさ、殺しは」
そういい、床に手をつけて、カーナークは大規模な攻撃を行った。
【北陸の氷の樹】
そういうと床に着いたカーナークの手から氷がイグルシアの兵士目掛けて向かっていった。
「なっ!!!!!」
すると、どんどんと、イグルシアの兵士達の体が氷によっておおわれて言った。
「あぁぁぁぁ…」
数にして百人程いたイグルシアの兵士は瞬く間に氷漬けにされる。
そして、最終的には氷の樹のような存在へとなり替わった。
カーナークは息一つを切らさずに髪を整えながら言う。
「ふぅ…こんなものだろうか」
「「「「「「おおおおぉぉぉぉ!!!!」」」」」」」
「カーナーク様!やりましたぞ!」
カーナークの出した大技にエルフの兵士達は大声で勝鬨を上げた。
拮抗していた戦況を、一人でカーナークは抑えたのだった。
◇
一連の状況を見ていたリョウマはただただ驚いていた。
「これって…」
この世界で非現実的な光景を見慣れてきたリョウマでも、自分の目を疑う程だった。
リョウマの知っているスキルは原型を留めている者ばかりだった。
なので、今の大技は珍しい物ではない。
それよりも、あの攻撃を受けて無傷なのが驚きなのだ。
「傷が氷と共に再生した」
「そう、それが【氷塊】…先天的スキル、その中でも最強のスキルの一つとされる【氷塊】をカーナークは手に入れている」
「あれが先天的スキルだと…」
先天的スキルは人間の中からは誕生しにくい。
エルフとドワーフのような種族で多く見られる。
議長は説明を続けた。
リョウマの驚く様子を見れて嬉しそうに話す。
「何…エルフではそこまで珍しい物でもない…しかし、その中でもごく稀に先天的スキルで自然現象を自身の体で体現できるスキル保持者が現れる。
かっかっかと笑う議長…意外と気さくなエルフなのだとリョウマは感じた。
「まぁ、それでも同時期に二人も現れるのは珍しいではあるがな」
「もう一人いるのか?」
あんな兵器染みたスキルがミカロジュの森に二人もいるのはパワーバランスが可笑しい事になるのではとリョウマは思った。
「えぇ…あなたもよく知る人物ですよ」
「?」
「さて、カーナークの様子をまた見ましょうか」
そして、再びカーナーク達の様子を見るのだった。
「え?」
「な?」
しかし、その光景を見て会議室に残った者は皆騒然とするのだった。
ここまで読んで戴き、有難うございました。
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東屋




