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プレゼント1 その3

あれは一年前のクリスマスのことだった。

 その日、俺は隼人の家で鑑賞会をしていた。なんの鑑賞会? おいおい、そんなこと聞くなよ。男二人で見ると言ったらあれしかないだろ。

 俺は鑑賞会が終わり、夜中0時ぐらいに家に帰った。

 さっきの鑑賞会のせいでかなりムラムラしてた。早くことをたしたくなり、急いで自分の部屋に入って準備をしたんだ。

 これがまずかった。

 準備が出来て、もう後は始めるだけであった。

 いざ、開始! となった瞬間、コンコンと叩く音が聞こえたんだ。

 最初は家族かと思って適当に返事したんだが、ドアの向こうの人は何も言わないんだ。

 おかしいなと思って外を確認したんだが誰もいなかった。

 その時はムラムラしすぎて、どうでもいいやと思って始めたんだ。

すると何分か後にまたコンコンと叩く音が聞こえた。

今度はその音がどこからしてるのかハッキリと分かった。コンコンと音がしていたのは窓だったんだ。

だけどすぐに俺は異変に気付いた。

誰がどうやって叩いたんだ?

俺の部屋は二階にあって周りには足場になりそうなものは何もない。もちろんはしごも置いていない。

俺はどうやったのかすごい気になった。もちろん恐怖もあったがその時は好奇心の方が強かった。

俺はパンツだけ穿いて窓を開けて外を見てみると、そこには空中浮遊しているサンタがいた。

それを見た瞬間、俺は無意識に窓とカーテンを閉めていた。

「ちょっと待ってよ! サンタがきたのに何で入れてくれないの⁉」

 窓の外ではサンタがバンバンと窓を叩きながら入れてくれと言っていたが、俺は無視し、ゆっくりとズボンを穿き部屋を綺麗に掃除した。

 掃除が終わった後に俺はサンタを部屋の中に入れた。

「あー疲れた。窓にしがみつくのって意外ときついんだね」

「はあ……」

 年齢は二十代後半。身長百八十弱でかなり筋肉質だ。サイズが間違えたのか、わざとやってるのかは分からないがサンタ服が今にも破れそうだ。

「それで今日は何をしに来たんですか?」

「今日は何月何日か分かるか?」

「十二月二十五日じゃないんですか?」

「じゃあ、サンタはその日に何をしているのかな?」

「プレゼン――ってもしかして……」

「そう、プレゼント配りだ。ということは?」

「まさか俺にプレンゼントくれるのか」

「正解」

 そう言いながら、サンタは持っていた白い袋の中を探し始めた。

「ちなみに何が欲しい?」

「なに、サンタさん。それって俺が欲しいものをくれるのか」

「いや、絶対にやれるってわけではないから」

「なるほど。それじゃあ新しいテレビが欲しい」

「嘘つきだな」

「いや、別に嘘なんてついてないんだが」

「それは二、三番目に来るもの。一番の本命はこれだろ」

 サンタが袋の中から取り出したのは――

「あっ! それはあの幻の……」

 エロゲであった。

 それは有名な某エロゲ販売会社が発売し、幻とまで言われたエロゲである。シナリオは普通だが、生産台数が少ないため、ネットオークションで十万ぐらいする。

「なぜそれを⁉」

俺が一番エロゲが欲しかったということが分かっていたことより、そのサンタが持っている幻のエロゲのほうが驚きだ。

「実はさ、このゲームを作ったのは俺なんだよね」

「まじか……」

 このサンタの正体がすごい気になる。

「このソフトって全部で何本あるか知ってる?」

「たしか百本だったような気がする」

「おしい。百一本だ」

「その一本は自分のものだったんですか?」

「いや。普通に自分で並んで買ってきた。あの時はすごかったな。二日前に並んだのにもう九十人は並んでたよ」

「作成者なんだから自分の作ればよかったのに」

「その考え方はいけない」

 サンタが指をちっちと横に振りながら言った。

「何かを作成するものとして大事なのは客観的に見ること、即ちお客様の視点で見ることも大事だということだ」

「それで何か得られたんですか?」

「限定何本とかにしたらいけないことがわかったよ」

 サンタはどこか遠くを見つめていた。

「列何て作っても販売が始まれば、すぐに戦争だ。二日間で仲良くなった友人たちが倒れていく姿は見てられなかった」

「荒れてますねー」

 行ったことがないからわからないが、そんなに争いが起こるものなのだろうか。

「まあ、限定という言葉に人間が食いついてくるということもわかったけどな」

 サンタがニヤリと笑った顔がすごく怖い。あの目は殺人者だ。

「というわけでこのエロゲを君にプレゼントしよう」

「ありがたくいただきます」

 俺はサンタからプレゼントを受け取った。

「これって……」

「ん? どうした?」

「売ってもいいんですか?」

「それはお前へのプレゼントだ。何をしても構わん。だけど一回ぐらいはプレイしろよ」

「はい!」


一時間後

「……」

「……」

 前の会話からずっと無言である。

 あれ? 何でこの人ここにずっといるんだろう。次の子供の所にはいかないのか?

「あ、そうそう」

「次のサンタはお前だ。最初に窒息十秒があるから気を付けるんだぞ」

ピーピー!

「うおっ!」

サンタの帽子からタイマ―音が部屋中に鳴り響いた。

『これにて今年のクリスマスは終了です。二人のサンタ様は――』

「任せたぞ」

 いつの間にか後ろにいたサンタは俺の口元にハンカチを押しあてた。

 やばい意識が――。

 俺はそのまま地面に崩れ落ちた。


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