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プレゼント1 その2


「ただいまー」

 キッチンに料理中の母がいた。

「おかえりー。さっき加奈ちゃんから電話があったよ。後で掛けなおしてくれだってさ」

「へーい」

 俺は適当に返事をして自分の部屋に向かった。

 明日からか……。まあどうにでもなるだろう。

ブーブー!

「うおっ!」

ポケットの中に入っていた携帯が震え、それと同時にビックと体が反応する。

相手は……加奈?

珍しい。いつもは家の固定電話の方に掛けてくるのに。

「はい、もしもし」

「何で掛けなおしてくれないの!」

「いやいや、今家に帰った来たんだけど」

「学校終わったの四時だよ。そして今五時半! 一時間半もなにしてたの⁉」

 解散後に隼人に相談されて、エロ本配布――もといクリスマス会の計画をしていたとは言えない。言ったら加奈がこの話を女子に広めて女子も参加しようとするかもしれない。(ないだろうが)そうなったら当初の予定は全て崩れてしまい、加奈に伝えた俺は百%の確率で、男子から攻撃されるだろう。

「もしもーし。大丈夫?」

「あ、ああバッティングセンターに行ってた」

「考え込んだ後にその言い訳はきついよ」

 仰る通りです。

「まあこれ以上は聞かないけど……。そんなことじゃなかった。メリーが倒れたから今すぐに私の家に来て!」

 メリーは加奈の家で飼っている猫だ――ってまじかよ!

「それをもっと早く言おうぜ!」

「何で私が悪いみたいになってるの⁉ とりあえず早く来て!」

「わかった。すぐ行く!」

 俺は通話を切り、中途半端に着ている制服で駆け出した。

 ここから加奈の家まで全力で走っておよそ十分。俺が着く前にポックリ逝かなきゃいいけど……。

 俺は不吉なことを考えながら全力で走った。


 ピンポーンピンポンピンポンピンポーン!。

 俺は肩で大きく呼吸しながらチャイムを何度も押した。

 加奈の家は二階建ての一軒家で、それなりに大きい。

「加奈……はあはあ……俺だ……ふー……開けてくれ……」

 数十秒して、加奈が扉を開けてくれた。

「おお! よく来てくれた……ってなんて格好してんの……」

「えっ?」

 言われてみるとYシャツのボタンは一つも閉まっておらず、上半身裸と言ってもいい状態だ。よくこれで警察に通報されなかったものだ。

「まあいいや。早く入って!」

「お、お邪魔します」

「どうぞー」

 俺と加奈は二階に上がり加奈の部屋に入った。

「メリーはどこにいった?」

「ここだよー」

 加奈のベットの上からかすれた女性の声が聞こえた。そこには一匹の猫が死んだようにぐったりとしている。

チート猫その一。喋ることができる。

 今喋ったのは加奈ではない。メリーである。初対面の時は自分も自分の耳をかなり疑った。

「大丈夫かメリー!」

「大丈夫じゃないから倒れたんだけど……」

「どうしたんだ?」

「いや最近ね、加奈の機嫌が良くて良い感情しか出さないんだ。それで良い感情ばかり食べてたら体調を崩したんだ。良い感情は美味しいんだけど、やっぱり人間と一緒で偏った食事ばかりするとダメみたいなんだ」

 普通の人ならこの話を聞いて『この猫は何言ってんだ?』となるだろう。

 チート猫その二。感情を食べて生きている。

 メリーによると、食べ物を食べない代わりに、人間の感情を食べて生きていくらしい。感情にも味や匂いがあり栄養素もそれぞれとのこと。

 それで今回偏食したメリーは体調を崩した。

「それでどうすれば治るんだ? 治ってもらわないと明日困るんだけど」

「他の感情を食べれば治るよ」

 ……。

「それで大丈夫なのか」

 あまりにも治す方法が単純すぎるから逆に心配だ。

「うん。それでオッケー!」

 メリーは元気そうに喋っているが、実際にはピクリとも動かない。

「例えばどんな感情を食べればいいんだ?」

「まあ一番良いのは逆の感情。つまり恨みや、怒り、悲しみといった負の感情だね」

「負の感情か……」

 そういえば最近はそんな怒ったりしてないな。

「私は思いつかないからここは亮に任せた!」

「もうギブアップかよ! 諦めるのが速い!」

「そんなこと言われても負の感情なんて全然ないからどうしようもないもん」

「さいですか」

 でもそれが本当だったら、それはそれですごくいいことだと思う。何となくだけど、毎日が楽しそう。

「となると俺が考えないといけないのか……」

「頑張ってー」

 加奈が漫画を読みながら適当に応援する。

「納得いかねー……」

 加奈を見てるとイライラしてくる。後で褒美でも請求しようかな。

「あ、亮さんから悪の感情が出てるんでいただきます」

 メリーはフラフラとおぼつかない足どりであぐらをかいている俺のひざ元に乗ってきた。「いただきます」

 と言っているが、実際は座っているだけで何もしてない。

「なあメリー?」

「なに?」

「本当に俺の感情を食べてるのか? なんかあまりにも実感がないんだけど」

「ちゃんと食べてるよ。ほら見てよ」

 メリーは立ち上がり、部屋をぐるっと一周してまた戻ってきた。

「確かにさっきよりも格段に動きが良くなっている。が、今までのは演技だったとも考えられる……」

「そうだねー……。じゃあ、もっとすごい悪の感情をちょうだい」

「それでどうする気だ?」

「巨大化する」

「は?」

 いま、何て言った? 巨大化って言わなかったか?

「わんすあげいんぷりーず」

「巨大化する」

 メリーって英語もわかるのか。すごいな。

「……ってそれよりも巨大化ってなんだよ! お前は喋れるだけでは飽き足らず質量保存の法則まで無視するのかよ……」

 もうやりたい放題だな。この猫。

「そんなこと言わないでよ。巨大化よりもっとすごいのあるよ」

「さいですか」

 俺はメリーを適当にあしらって昔の悪の感情とやらを探し始める。

「あ、あった」


 以下回想へ続く……。


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