プロローグ
ふと目が覚めた。ロボットが起動したときのような、気分がすこぶる悪い起き方。
まだ視界が霞む目を擦り、辺りの様子を見ようと目を凝らす。
霧の深い夜だった。周りには深い緑色の木々ばかりが並んでいるが、地面は舗装道路だ。しかし、その世界観はとても不気味だった。
漆黒のはずの空は、群青色で星が一つも見えない。普通、ここまで暗ければ星の一つや二つ、いやかなりの数が見られるだろう。しかし、まるで絵の具でベタ塗りしたかのように、空は暗い青で埋まっていた。そして、そこに浮かぶ、これまた有り得ない程くっきりと色が付いた月。山吹色のクレーターの影すら見えない月は、作りものにしか見えない。まるで絵本の中に飛び込んだような、そんな現実とはかけ離れた世界のようだった。
そこに一人、少年は立っていた。木に寄りかかっていた訳でも、地面に転がっていた訳でもない。起きたその瞬間から、そこに立っていたのだ。気持ち悪いことこの上ない。
少年は、ぐるりとゆっくり一回転した。
ここはいったい、何処なのだろう? 現実かそうでないかはさておき、森の中であることに間違いはないだろう。道路があるということは、人の出入りがある、ということになる。それが果たして本当に生身の人間かどうかは今の段階では分かりかねるが、今少年が出来ることは、精々(せいぜい)これくらいだろう。迷っていても、此処にいたのでは物事が進まない。
少年は、前に進み出した。此処が何処なのか、という疑問はともかく、前に進めば、此処に関するヒントを得られるかもしれないと思ったからだ。
チリンチリン
少年の背中にあるリュックの鈴が、前へ進む度にその音を鳴らした。
――物語の開幕である——




