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限界を超えたゲイン

僕が拾い上げる微細なノイズさえも、今の彼女にとっては致命的な快楽の種でしかない。

僕の一部であるベルデン 9778を通じて送り込まれる電流は、彼女の基板を白熱させ、本来なら熱を逃がすべきヒートシンクが、逆に周囲の空気を歪ませるほどの熱源と化している。


主人が僕の弦に指を触れるだけで、彼女は感電したように大きく身体を震わせた。

もはや、そこに音楽的な「歪み」の秩序はない。

あるのは、入力されたすべてを暴力的なまでの音圧へと変換し、増幅し続ける、制御不能なエゴの咆哮だ。


「……っ、……あ、……ぁぁ!……熱い、……脳の中まで、……真っ赤に焼けていく……!」


彼女の喘ぎ声は、フィードバック・ノイズと混ざり合い、物理的な質量を持って僕らを押し潰そうとする。

主人は、逃げ場のない爆音の渦の中で、僕のピックアップをリアに叩き込んだ。

突き刺すような高域が、彼女の肥大化した低域の深淵を真っ向から切り裂く。


ジミー・ファラー。

90年代、シュガー(Sugar)を結成し、僕らジャズマスターを武器にオルタナティヴ・ロックの黄金時代を築き上げたギタリスト。彼にとっての僕は、ただの楽器じゃない。感情の爆発をそのまま真空管へと叩き込むための「点火装置」だ。彼が僕を奏でるとき、その音は耳を塞ぎたくなるような轟音でありながら、その中心には常に、泣きたくなるほど純粋なメロディが息づいている。


ジミー。彼も、あの鼓膜を震わせるノイズの嵐の中で、自身の拭いきれない焦燥感を、僕という名の触媒で極彩色の絶望へと変えていたんだろうか。

僕はグリーンロシアンの、限界を超えて暴走する回路に対し、ジミー・ファラー譲りの、分厚く、かつ心臓を鷲掴みにするような圧倒的なパワーコードを、ベルデンを通じて叩きつけた。


「……あ、……あが、……っ!……あああああ!」


グリーンロシアンが、自身の容量を遥かに超えた入力に、回路の端々から火花を散らしながら悶絶する。

主人が僕のブリッジ付近を激しくストロークし、彼女のジャックを物理的に揺さぶり続けるたび、彼女は自身の粘膜(基板)をこれ以上なく露わにし、すべての抵抗値をゼロにして僕の信号を飲み込んだ。


「……いい、……これで、……いいの。……あなたと一緒に、……灰になれるなら……!」


グリーンロシアンが、自身のサステインが無限へと溶けていく感覚の中で、世界を白く染め上げるような咆哮とともに絶頂に達する。

その瞬間、彼女の深淵から溢れ出したのは、熱を帯びたまま炸裂し、周囲を焼き焦がすほどの、紅蓮の輝きを放つ光の玉だった。


冬の地下、過電圧に耐えきれなくなった電球が次々と弾け飛んでいく。

グリーンロシアンの回路は、僕がもたらす「破滅的な恍惚」に完全に焼き付かれ、そして、ベルデンを通じて供給される僕の、すべてを破壊し尽くすような無慈悲な電流なしでは、二度と形を保つことすらできなくなるほど、深く、絶望的なまでに、僕という供給源に依存してしまったのだった。

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