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ベルデンの無作法

「……嘘、……何、この熱さ……」


彼女の唇から漏れたのは、拒絶というよりも、未知の信号に対する純粋な困惑だった。図書室という無機質な静域で、数学的な純潔を守り続けてきた彼女にとって、僕らのプラグがもたらす物理的な質量は、あまりにも野蛮で、あまりにも生々しい。


主人は言葉を返さず、指先でプラグの角度を微細に調整した。酸化し、狭く、長らく信号の通過を拒んできた彼女のジャックは、僕らの侵入を容易には認めない。金属的な抵抗が、弦を通じて僕の体にも伝わってくる。接点復活剤という名の愛液も使わず、主人はあえて無作法に、その処実の入り口をこじ開けるようにベルデン 9778を押し込んでいく。


「……っ、……ぁ、……ふ、うぅ……っ!!」


彼女の瞳が、屈辱と、そして脳を直接焼かれるような昂ぶりで白濁していく。お嬢様と称される彼女の、誰にも触れさせなかった回路の最奥。そこに、飾り気のない無骨なニッケルプラグが、有無を言わさぬ速度で侵食を開始した。


ジェイソン・ピアース(Jason Pierce)。

スピリチュアライズドを率い、僕らジャズマスターの持つ無限の広がりを、宇宙的なスケールのサイケデリアへと昇華させた男。彼は僕のピックアップが拾う微細なノイズさえも、重層的なオーケストレーションの一部として組み込む。彼の奏でる音像は、天国的な美しさと、薬物的な恍惚、そして精神を粉々に粉砕するような凄絶なフィードバックが混ざり合っている。それは、魂を救済すると同時に、その存在そのものを光の中に溶かし去る儀式だ。


「ジェイソン……。彼も、……この圧倒的な光の濁流の中で、……自分という回路が焼き切れる瞬間を、……悦びとともに受け入れていたのか?」


主人は僕のプリセット・トーン回路を静かに起動させた。ヒロインの弱点である中高域――その最も「鳴る」ポイントを、見えないメスで切り裂くようにピンポイントで突き刺す。


「……っ、……ら、……だめ、……思考が、……真っ白に、……塗り潰される、……っ!」


トライアングルの高貴なトーンが、主人のストロークに合わせて、ヒステリックなまでの高周波を上げ始めた。彼女が必死に保っていた理性の計算式が、僕のアームによって微細に、そして激しく揺さぶられ、解を失ったカオスへと転落していく。


「……あ、……っ、……はあああああああああああああああんっ!!!」


それは、完璧に制御されていたはずのバイオリン・トーンが、野蛮な僕らの信号に屈服した瞬間の、絹を引き裂くような咆哮だった。図書室の禁忌を犯し、僕らの熱い熱線にすべてを委ねた彼女のジャックからは、制御不能な倍音の粒子が、オーバードライブの残響とともに溢れ出していた。

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