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48.不穏な影は光となるか

すいません。遅くなった上に、まだ荒削りのままの文章です。18話の『魔王の伝説と魔剣』と合わせて一部を変えると思います。その際には活動報告で報告するようにします。


「西区と中央区で不穏な動きがある。知ってるか、小僧?」


ガドルは真面目な顔で、そう話を切り出した。


「突然なんの話だよ……オレはこっち来てまだ二週間も経ってないんだぜ? そんなの分かる訳無いだろ? 」


シェトが最初に忠告してくれた通り、裏道とかには入らないようにしているし、有名人になってしまった今でも、幸い不良には絡まれた事もない。

それに、王城の屋根というこれ以上ない高台から見下ろす中央区は美しい。赤みがかった茶色の素焼きの屋根瓦とその間から覗く黒い石造りの道……ここは今日も、来た時と同じように平和のように見える。

オレの返事にガドルはもっともらしく頷いた。


「俺はさっきお前に、『巻き込んだ』と言ったろう?」


「ああ、言ったな。内容が非常に気になる所だ。」


――「そう急くな」とガドルはもったいを付けた。イラっとする。


「この国が『ギルム王国・・』つまりは王が統治する国である事は分かってんだろ? 23代目国王・イルク・ルガート。高慢ちきな若造だが……そいつがこの広大な国を治めている。まぁ、直接会う機会なんざ滅多にねぇがな」


まぁ、確かに。直接会った事は無いな。


「魔剣鍛冶師にして、魔王戦争で何体もの精霊を討伐した英雄、ギルム・ルガート。(やっこ)さんが街を起こしてから数百年だか数千年。今のギルム王国ってのは3代目の王朝らしい、と俺は師匠に聞いた」


「数百年と数千年だとかなり隔たりがあるんだが……まぁ、いいや。それで? オレ等とその歴史がどう関係してるんだよ?」


ガドルは首を振った。


「いや、歴史は特に関係ねぇ。話の前振りみてぇなもんだ。でだ。本題に入るぞ。……今俺達は西区解放の『象徴』として扱われてる。知ってるか?」


オレは素直に頷いた。

『待て』と言われたから静かに聞いていたというのに……やっぱりもったいぶりたかっただけじゃんか! と、思わないことは無かったが、話が進まないから一々ツッコミを入れるのは止めのだ。


「知ってるよ、そりゃ。今日だってこの城の裏門から顔パスだったんだぜ? てか、門番の爺さんくらいにはオレが会いに来るって伝えといてくれよ。あと、アルトにも待ち合わせる時間を伝えてくれると助かったんだがな」


「ああ? ああ、忘れてたな。やけに早いと思ったらそういう事だったか。すまんな、小僧」


ガドルの反省の微塵も見られない適当な返事に、オレは深い溜め息を吐いた。


「で? オレ等が西区の象徴として扱われる事の何が問題なんだ? まぁ、知らない人に道端で呼び止められて一方的に立ち話をされるのも困るけど……話術スキルが上がるからコミュ障も治ったし……いろんな人と会話出来るからこの世界の情報ニュースも知れるしな……悪い気分じゃないぞ? となると、それ以外の何にオレを巻き込んだんだ?」


オレの言葉にガドルも頷いた。


「確かに。悪い事じゃねぇんだ。――もし、状況が状況じゃ無かったらな…………先に言った、お前を巻き込んでしまったモノ……それはこの王国を巻き込んだ大規模な『反乱』だ。現在の王を排して、4代目の王朝を据えようという反乱。そして俺は今、『救国の英雄』なんて肩書きを引っ付けられて、変革の先頭に立ってくれと頼まれている」


「反っ乱っ!!? お前が!?」


「なっ!? 小僧、声がでかいぞ!」


地上七十メートルはある王城の屋根の上とは言え、地上に聞こえないとは限らない。突然のオレの大声に、ガドルは口に手を当てて、声を抑えさせた。

オレは深呼吸し、テンションが落ち着いた所でもう一度ガドルに向き直る。


「……それで、ガドル……巻き込まれたって言っても、お前、まさかその頼み、受けるんじゃないよな? というか、その話をお前に持ち掛けた奴、捕まえたのか?」


オレは軽い調子でガドルに尋ねた。

『救国』の英雄が反乱だなんて笑えねぇ。国に忠義を尽くす騎士を束ねる騎士隊長であるガドルに話を持ち掛ける時点で血迷っているとしか言いようが無い。

返事なんか聞かなくても分かる……と、オレは思ったのだが……。


「俺は……申し出を受けた(・・・)。それが三日前だ。そいつからお前への手紙も預かっている」


しかし。ガドルの返事は予想を裏切るものだった。


「嘘、だろ……? じゃあ! お前、反乱を率いるってのかよ! 騎士じゃないのかよ!! 王を裏切ってその上でオレを誘うのか!?」


「お、おい、小僧? 何故お前が怒るんだ? 異世界から来たばかりだろ、お前? 今の王にも特に恩なんてねぇよな?」


オレの怒りはガドルにとって予想外のモノだったらしい。オレの剣幕に押されてガドルは後ろに少し下がった。

オレはその分一歩を踏み出し、口を開き…………何も言うべき言葉が無い事に気付いた。

――何故オレは怒っている? 何に怒っているんだ? これはガドルの問題だ。嫌なら手紙を受け取るのを断れば良い話。ガドルの事だ、強引な方法でオレの口を封じようなどはしないだろう。


「ご、ごめん……なんか混乱して? いや……まさかガドルがそんな選択をするとは思わなかったからさ……」


オレは自分がなぜ怒りを抱いたのかその理由を見つけた。単純な事だ。

――オレはガドルに強く憧れていたのだ。映画で見る騎士物語のように、強く、どんな苦難でも挫けず、諦めず、前に進む姿にひどく憧れていたのだ。まるで、受験からも自分で進路を決める事からも逃げるようにしてこの世界にやって来た自分がそう在りたいと思ったのだ。

だから、反乱を起こす……つまりは自らの主人を裏切るという行為を理想ガドルが口にするのが許せなかったのだ。勝手な押し付けと独りよがり以外の何物でもない。


「謝る事はねぇよ、小僧。俺がしようとしてる事は確かに見る奴によっちゃ過激で暴力的だ。否定しねぇさ。だが……」


ガドルは眼下に広がる中央区の街並みを見つめた。オレも視線を街へと移す。

燦々と太陽が降り注ぎ、広い道路を馬車や人々がゆっくりと行き交っている。穏やかで、美しい景色だ。


「俺にとっちゃ、ここに住む奴ら全員を護れるなら、王国・・である事に未練は無い。騎士団長なんて肩書きなんざゴミだ」


その横顔にオレは討伐戦の時を思い出した。西区でガドルは中央区や他の街、つまりはこの王国に住む何万という人々を守る為に戦ったのだ。

その意志は人と共にあるのであり、この国が国であるかどうかは問題ではないという事なのだろう。住んでいる人が変わる訳では無いのだから。

ガドルの中では王を廃する為に反乱を起こす事と、王国に生きる人々の力になる事は矛盾しない。むしろ自然な選択なのだ。

「それにな――」と神妙な顔のままガドルは続けた。


「……俺は、今の王国の在り様は危険だと思っている。これはあくまでも勘だが……サラマンダーの一件、あれにはテトラトが絡んでいる……魔法使いは好かないが……私情を抜きにしても、今の王はテトラトの魔法使いに腑抜けにされている。今やギルム王国はテトラトの傀儡。サラマンダーが西区に居座った時も……あの王は民を見捨て、西区を閉鎖した。民を守れない王など……王なんかじゃねぇ……」


最後の一言をガドルは何故か苦し気に吐き捨て、再びオレに視線を向けた。


「いいか? 大砂漠に居る筈のサラマンダーが西区まで来た事も異常だが、封印されている他の精霊達の動きも活発になっている。神匠ギルムが直接結んだ封印に干渉するなんざ、魔法使いが絡んでいるとしか思えねぇんだ、俺にはな……。例えば、昨日の東区での浸水騒ぎは聞いてるか、小僧?」


オレは首を横に振る。しかし、アルトが昨日行っていたのは東区……錬金術師かがくしゃであるアルトが魔物討伐に赴いたと聞いて不自然に感じたのは憶えている。


「昨日は東区の外壁の地下から水が湧き出してな……街中に大蛭アゾラが大量に侵入した。明らかに地下水脈の流れがおかしい、その上、その場に居合わせた錬金術師の言うには、その水には大量のエリクシルが含まれていた。ほぼ間違いなく……精霊の力の残滓だ。封印されている筈の精霊に何か異常が起きている」


精霊……。

サラマンダーも操られているとか言っていたし……つまり他の精霊も魔法使いに操られている可能性があるという事か……。


「小僧。今日はすまなかった……混乱させちまったし、とんでもねぇ事に巻き込んじまった。だが、俺にはさっきのお前の怒りが俺の誘いへの答えだとは思えねぇ。計画の決行は恐らく二ヶ月以上先だ……暫く考えてみてくれ。お前も西区解放の象徴。王の命令に背いて西区を解放した云わば暴政への反逆者……そして、何よりも、神匠ギルムを継ぐ魔剣鍛冶師だ。お前の名があれば更に多くの民衆が味方に付く……だから、考えてみてくれ。頼む」


ガドルは何時にも無く真剣な調子で言葉をつらね、オレに対して頭を下げた。意外にも、反乱を起こそうという興奮や熱は感じず、至って真剣に真摯に冷静に、そして対等にオレを見ていた。


「……わかったよ……。でも、数日考えさせてくれ……まだ頭が熱を持っているみたいで……」


ガドルは頷いた。


「門まで送ろう」


オレはガドルに再び抱えられて城壁を駆け下り、何だか冴えない気分のまま王城を後にした。

次回は6月14日の午前11時(代には必ず)です。これからもワルレをよろしくお願いします。

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