18.魔王の伝説と魔剣
大変お待たせしました……。
第18話です。
丁度良い区切りが見つからず、随分と長くなってしまいました……
「魔王、と呼ばれた一人の魔法使いがいたそうだ……」
これは遠い昔の話、この世界に伝わっている神話の一つなのだが……と前置きをしてアルトは話し始めた。
「今では信じられない程に異界との交流が盛んで、それにしたがって、今よりも『魔法使い』と呼ばれる、召喚された人間が多かった時代、そんな魔法使い達の中でも超越的な存在、神のような奇跡を起こす男がいたらしい……。
その様は、『怒り狂う火山、全てを呑み込み砕く荒海、砂漠の崩せぬ静寂も、大地を拐う大嵐でさえも平伏し、従った』と、語り継がれている程だ……。
実際に、今もまだ残る数々の奇跡を起こし、男は忽ち『神の使い』として名を馳せた。
だが暫くして、その男は別の名で呼ばれる事になる。
……家畜を拐い、血肉を啜り、邪神に狂う『悪魔』とね……」
随分な変わり方だな……。
神の使い、から悪魔、か……。
「なんでそう突然変わったのか、理由って伝わってるんすか?」
「王城の礎石には、この魔王の話以外にも幾つかの古代の伝説が刻まれているのだが……書かれているのは、あくまで詩や物語であって、歴史文書としては要領を得ない。だが……この世界が与えてしまった巨大すぎる力が魔法使いの人格を汚染してしまったのではないか、と私は考えている」
まぁ、そうだよな。
アルトの考えはオレと同じのようだ。
強大な力を突然得てしまった人間が犯罪紛いの事を起こす…………透明人間になった男が女子風呂を覗く(女子が男子風呂を、というのもあるかもしれないが)…………うん、まぁ、同じようなモノだろう。
よくある普通の展開だ。
ス〇イダーマンや、スー〇ーマンみたいに力を持った人間が悪に染まるっていうのは、そんなに想像しがたい事じゃない。 なにせ、犯罪を犯したって誰も止められないんだからな……。
「話は戻るが……『悪魔』と呼ばれるようになった男は人々の非難の声を嫌がり、誰の声も届かない、宙に浮かぶ城を作り上げ、その中で静かに彼の『研究』を続けた。
一説には時空を操る召喚術を、また、別の説では生物同士を融け合わせて新たな生物を創る実験をしていたと言われている。
そして、魔法使いが浮遊船に籠って十年が経った頃、世界のあちこちで『魔獣』と呼ばれる未知の生物が目撃されるようになった。
誰も見たことの無い強力な神秘の力を備え、人の意思を理解する知能を備え、剣を弾く外殻や鱗を持ち、存在するだけで自らの周囲の環境を汚染し、破壊し尽くす……そんな自然の摂理に逆らう邪悪な生物が忽然と六体現れた」
魔獣………って、あの、昼間のユニオンで見た魔物の事か?
てっきり、この世界の生物なんだと思ってたが……違うのか?
「あの、その魔獣って今の--。」
「ああ、今の魔物達の祖先だ。
だが、今とは比べ物にならないほどの強大な力を持っていた。
現れた六体の魔獣は、自らの複製を無限に作り続け、瞬く間に世界を恐怖に陥れた。
なにせ、今は技術が進んでいるが、古代に於いては、特別な力を持たない複製ですら異界の魔法使いしか歯向かえなかったのだよ。その為に、今も異世界の者は一様に召喚『勇者』と呼ばれている。
ああ、話が脱線してしまったな。
魔獣が世界各地を恐怖の底に陥れた頃。
悪魔と呼ばれた魔法使いがこの街に現れ、魔獣が自らの僕である事と五大陸に向けての宣戦布告を示した。
魔獣と、魔物の王・『魔王』と呼ばれるようになった大魔法使いを相手に世界はその支配を受け入れるしか道は無いかと思われた。そして、人類の命運を占う為に世界各地の人間の諸侯、他種族の王や首長全員、がこのアンシアの都に集まった時……十二本の『魔剣』を携えて、一人の鍛冶師が現れた。
それが初代魔剣鍛冶師・ギルム・ルガードだ。
彼は魔法使いであり、錬金術師。そして何より優秀な鍛冶師だったと伝えられている。
彼が発明したのは『世界の現象を文字として記し』、『その効能を自在に武器に付与する』という技術だった。誰もが等しく魔法を使える事を意味するその技術の噂は、瞬く間に世界に伝わり、ギルムとその弟子達が作った武具によって魔物は、そして遂には魔獣達さえも多大な犠牲を払いながらも駆逐されていった。
魔剣と、勢いづく召喚勇者と諸侯達の軍勢を恐れた魔王は全力をもってして『世界』に、魔王でも解除出来ない二つの大魔法をもってして干渉した。
一つは、世界の境界を定める『封印の法』。この魔法により、この世界は閉ざされ、他世界との行き来は出来なくなった。
二つ目は、文字の使用を禁じる『制約の法』。この魔法が発動した瞬間、文字を認識出来なくなったギルムを始めとする魔剣鍛冶師達はその技術を失い、魔法以外の長距離伝達の方法を失った軍勢は瓦解してしまう。
魔物達は勢いを盛り返し、人間と他種族はバラバラに戦う様になってしまった。
だが、実は、その二つの魔法は魔王とその臣下にも不利に働いていたのだ。
封印の法は魔王の退路を断ち、新たな魔獣は現れなくなった。
そして、制約の法によって、異世界の魔法使いを持たない魔物達の指揮は混乱し、最大の障壁であった筈の浮遊城は落下し、魔王に直接攻め込めるようになった。
だが、魔道を極め尽くし、余りにも強大な力を持った魔王に対し争いを続けた結果、世界は荒廃し、多くの命が失われた。
それでも。
何十年にも渡る戦いの末、ついに英雄達は窮地に立たされながらも魔王を撃破、封印し、各地の魔物達を殲滅した、と伝えられている
そして、魔王の死後数百年……魔王が掛けた二つの大魔法の効果は薄くなり、異世界人がやって来るようになった。そうしてやって来た何人かの魔法使い達は、制約の魔法を曲解させ、今では……どういう仕組みかは分からないが……文字の形を認識する事無く文字の読み書きが可能になった……。
故に、異界人も、この世界の人間も、『文字』を読むことは出来ない。『世界の現象を文字にして記す』という魔剣制作の真髄は失われたままだ。
初代とその弟子達が技術を失って以来、新しい魔剣を作った者はいない。
……そこで、魔法を暴き、真実を見抜く魔眼……文字を認識できる君の出番となる訳なのだが……」
そこでアルトは、自分のカップのお茶を一気に飲み干した。
「君も、早く飲んだ方がいい。冷めると苦味が出るからな……」
アルトはオレの目の前のお茶を示す。
あ、完全に忘れてた。
ちょっと話が壮大で凄すぎた!
完全に物語の世界に引き込まれてしまっていたなぁ……。というか、完全にファンタジーな世界じゃん、ここ。
魔王や魔物、魔剣や勇者……。
そんなモノが実在する世界に、オレはやって来たのか!
テンション上がってきた!!
……あ、でも、もう魔王も勇者もいないんだっけ?
うん。まぁ、少し残念だけど……平和がやっぱ一番だよな?
まぁ、何と無く魔剣が何なのか分かったし……。
しかも、オレの持ってるという魔剣鍛冶師の資質って言うのが、かなりレアっぽいってのも分かったし。
オレは、すっかり温くなってしまった薬草茶を一口啜った。
鼻に抜ける爽やかな香りと、少し苦い後味は緑茶とインドのチャイを足して二で割った様な感じだ。
飲んだ事は無いけど、多分、ハーブティーなんて物に似ている……のかも知れない。リラックスさせる作用がありそうだ。
『封印の法』だっけ? 魔王の掛けた魔法が薄くなっている、とは言え……数年か、もしかしたら一生の間、この世界にいるのは確定らしいし、いずれ時間がある時に、自分で葉を採集してお茶を作ってみるのも良いかもしれない。
それにせっかく、受験戦争から逃れられたんだ。
この世界で魔剣作成なんてレアなスキルを身に付けたら、将来に関しては特に不安なんか無いしな。
もう、のんびりと異世界生活を楽しむしかないだろ!
と、考えた所でオレは気付いた。
あれ? 魔剣を作る? どうやって? ギルムって鍛冶師も、その弟子達もその技術を失ってしまったんだろ?
魔剣って、製造出来ないんじゃないのか!?
あ、いや。
出来ないんだったら『素質』がある、とは言われないだろう。
でも、それでも、オレが文字の形を認識できたところで、どうにかなるレベルじゃないよなぁ……。
なんか、『現象を文字にして書き記す』みたいな事を言ってたし……
というか最初から気になってたんだが、アルトって魔剣鍛冶師なのか? オレはナーシャから、説明無しの勧誘しか受けて無いぞ? てっきり魔剣鍛冶師っていう職業が存在するのかと思っていたんだが、今の話ではまだ誰も作ってないらしいし……。
「アルト……さん、は魔剣鍛冶師、なんですか……?」
オレの質問に、アルトは驚いた顔をした。
どうしてそんな事を聞くんだ? といった顔だった。
「まさか! 私は生まれも育ちもこの都さ。魔剣を作る事が出来るのは、文字を見抜く魔眼を持つ異世界人のみ。私はただの、しがない錬金術師で、魔剣の製造を研究している……まぁ、生物の生態や歴史、それに物質解析まで研究する事全般が仕事と言っても過言ではないがね……?」
錬金術師だと!?
憧れの職業の人にこんな形で会えるなんて!
もしかして、オレって、錬金術師の個人講義を受けたって事にならないか!!?
異世界来て二日目で幸先が良すぎるだろ!!!
だが、オレの表情を見たらしいアルトは軽い溜め息を吐いた。
「ま、といっても仕事は君が想像するような物ではない。薬草を煎じたり、薬効のある成分を生成したり……時折は金属も扱うが、私の専門は魔物の素材学だ……」
魔物の素材学!!
なんてファンタジーなんだっ!!
もしかして、オレの持っている炎龍のの牙だって手にしただけで鑑定出来たりするんだろうか!?
アルトは、予想外だったらしいオレの反応を見て、今度は軽く苦笑した。
「君は……錬金術師にそんなに興味があるのかい? 確かにそちらの世界には無い仕事らしいが……まぁ、その内教える事もあるかもしれんな。だが、今はまず魔剣だ。……付いて来たまえ、地下室に私の所有している魔剣を見せよう」
「あ、はい!?」
アルトは部屋の隅……出口に続く廊下のすぐ脇にある階段に向かった。
「(いったいどんな形や色をしているんだろう……)」
オレはランプを持ったアルトに続いて、真っ暗な地下室へと降りて行く。
ナーシャと降りた時とは別の緊張と期待感で、最初に降りた時よりも長く感じてしまう。
『魔剣』という未知の武器を見るために、真っ暗な石段を、揺れるランプの灯りだけを頼りに降りて行く……。冷たい石壁にシルエットが映り、揺れる。
まるで、古代の遺跡の階段を、宝物を求めて深く降りて行くかのようだ…。
そう考え、否応なしに、オレの胸は高鳴った。
八メートルくらいは降りただろうか? オレンジ色の光の中に扉が浮かび上がった。
--アルトが扉を開け、中に入る。
「おお……凄い……」
部屋の中を見渡し、オレは思わず声を上げてしまった。
据えられた一基の炉からは炎が漏れだし、部屋の天井と梁、そして部屋の壁全面に備え付けられた大きな棚をオレンジ色の光が柔らかく照らしている。
まさに錬金術師の工房といった趣があった。
石で出来た階段は冷気で満たされていたが、部屋の中は火が燃えているおかげで、丁度良いくらいに暖められている。
「前回は緊張しててろくに見てなかったんだなぁ……って、これは!!」
オレは部屋を見回しながら呟く。
しかし、オレはある物に気付いた!
天井に届こうかという巨大な棚の中で、大量のガラス瓶が光を反射させているのだ。
中身は見えない。
だが、錬金術や製薬の材料に違いない。
魔物の内臓や角、牙、それに貴重な薬草が入っているに決まっている!
ガラス瓶の中身がとっても気になるが、それは、アルトに魔剣を見せてもらった後で良いだろう。
そう考えて、オレがアルトの方を見るのと、アルトが興奮した面持ちで、こちらを振り向くのは同時だった。
「先ずはこの短剣を見てくれ……!」
オレの前に立ったアルトは一本の短剣を手に持っている。
オレが立っている位置からだと逆光で余りよく見えないのだが……それでも、彼の顔が紅潮しているのが見える……ような気がする。
「これは大変貴重な魔剣で……城壁の補修工事の際に、壁の中から発掘された。上古の昔、この国で製造された紛れも無い魔剣だ。その効果は発光。現存する使用可能な魔剣の中でも恐らく最古の物だろう……さぁ! 抜いてみると良い……!」
手渡されるままに持ってみると、柄を合わせても四十センチ程だというのに、ズシリとした手応えがあった。
鞘を見る限りでは幅広の両刃短剣。
刀身全体が先端が鋭く尖った二等辺三角形になっている。ゲームとかでよく見る短剣(ダガ―)のイメージそのままだ。刺突にも斬りつけにも効果がある典型的な形だろう……。
鞘は象牙の様な素材で出来ていて、彫刻で装飾が施されている。
白い象牙の様な素材に銀色の金属で精巧な象嵌が施されていて美しい。
蔓草模様や動物……幾何学的な形の模様もある。
美しい工芸品だ。
だが、特に魔剣らしい雰囲気は無い。
やはり魔剣と言ったらゲームの代表的なマジックアイテム!
一振りで敵を焼き尽くす焔を纏う剣だったり、暗黒騎士の毒の剣だったり……!
やはり何かしら特殊な形や、禍々(まがまが)しかったり、神々(こうごう)しかったりする意匠を期待したけど……外から見た感じは普通の剣だな。
やっぱり剣身に仕掛けが?
「こ、これ、実際に抜いてみても……」
「無論だ。言ったろう? 実際に見ない事には何をもってして魔剣なのか判るまい?」
そ、そうだよな……。
でも、本当の剣を持つなんて初めての経験だし、『魔剣』なんて伝説の武器があると思うと手が震えて……。
落としそうで不安で……。
アルトの熱を帯びた視線に見守られながら、オレはドキドキしながら柄に手を掛け、短剣をゆっくりと引き抜いていく……。
「? 剣身の色が……」
まず気になったのは刀身の色だった。
鞘の中から姿を現した刀身は炉の光を受けてオレンジ色に輝くこと無く、逆光になったアルトの体の影の中で、淡いスミレ色の光を発していた。
強い光じゃないから物を照らしたりは出来なそうだが……それでも生きているかの様に脈打ち、光を放つ様は美しい。
神秘的で高貴な紫色……毒々しさや禍々(まがまが)しさはまったく無い。
まるで蛍が放つ光のように儚く、それでも確かな存在感を主張する光だった。
見ている間にも刻一刻と色彩が変化しているようだ。
薄紫……濃い紫……菫色……暗い紫……藤色……。
暗い部屋の中で一日中見つめていても、何日でも飽きないだろう。
そして、オレは力を込め……一気に剣を引き抜いた。
キィィィン……。
音叉の響きのような音を発して、美しい刀身の全てが露わになった。
紫色の光の筋が地下室の闇に尾を引いた。
刀身の長さは約三十センチ。
先端は細く尖り、そこから、紫色の緩やかで優美な曲線が刀身を闇から際立たせている。
オレは以前博物館で見た日本刀の曲線を思い出した。
そして、驚くべき事に、この剣は驚くほどに軽い。
持っている事を忘れてしまいそうな程だ!
どうやら、ズッシリとした手応えは刀身の重みではなく鞘の重さだったらしい。
それに反して、刀身は耐久性が気になるくらいに軽い。
まるで発泡スチロールで出来ているようだ。
非力なオレでもこれならきっと、まるで小枝を振るう様に扱える。
「どうだね? 魔剣という物が如何様な物か分かったかね? その刀身に刻まれた文字こそが悪名高き彼の『魔王』によって認識する事を禁じられた文字だ。その文字を扱える者だけが魔物の力から魔剣を製作できるのだ!」
興奮して半ば暴走状態にあるらしいアルトは大きく手を広げ、オレの肩をガシリ、と掴んだ。
そのまま肩を組まれる。
「っと!? ちょっ、危ねぇ!」
アルトと結構な身長差があるオレは魔剣を持ったままバランスを崩して戸棚にぶつかってしまったが……アルトは全く気にした様子は無い。
「少年! キミは魔剣鍛冶師となって伝説を再現する覚悟はあるか!?」
「え? いや、まぁ……将来的には? ゆくゆくは……そんな事を考えないでもないような?」
伝説を再現する覚悟って……ちょっと大袈裟じゃないのか!?
てか、アルトといいナーシャといい、興奮するとキャラが崩壊するのか? てっきりアルトは冷静な科学
者だと思っていたんだけどなぁ……。
って痛!?
「ようし! よく言ってくれた少年! 共に伝説の技術を復活させっ! そして、世界に名を轟かせようじゃないかっ!!!」
アルトはまるで酒に酔ったかのように、上機嫌でオレの背中を叩きまくっている……。
メガネのガラス越しに、爛々と輝く瞳が見えた。どうやらこちらの声は届いていそうに無さそうだ。
と、思った瞬間。だが、不意に、彼の表情が引き締まった。
「さぁ、今から言う言葉を復唱してくれたまえ」
復唱?
え? いったい何を……
「「今、ここに! 開祖・ギルムの名に懸けて誓いを捧ぐ! 私、アルト・ルガードと……召喚勇者、そして未来の魔剣鍛冶師・ケントは魔剣鍛冶ギルドの復活を宣言する! ついては、この、槌音をもって印と代える事とする!」」
アルトの、いかにも神経質な科学者っぽい姿からは想像出来ない、まるで別人のような浪々たる声が地下室に響き渡った。その声は地下室の壁、燃え盛る炉の焔の中、そしてオレの心の中にに染み込んでゆく。
「っせい!!」
言葉が終わるか終わらないかという時、アルトは傍らにあった大振りな金属製のハンマーを一気に頭上まで持ち上げた。
長い柄の先についた鉄塊が天井を掠り、アルトの頭の上を通過する。
痩せぎすの骨と皮ばかりの体のどこにそんな力があったのか、思った。
しかし、よく見ると……身体が弓なりになり、彼が懸命に、全身でバランスを取っているのが分かる……まぁ、それでも十分凄いが。
見ているだけで金槌の重さが伝わってくる……炉の光に照らされたアルトの額には玉の様な汗が浮いているのが見えた。
「くっ……! むんっ!!」
そして……アルトが後ろに倒れかけた、と思った瞬間、彼は渾身の力を込めて、金槌を炉の手前、立派な造りの金床に振り下ろした。
ゴォォォォォン……
と、鐘のような音が鳴り響き、まるで地面が地震のように揺れたように思えた。
暫く後、残響が地下室に吸い込まれて消えた頃、アルトは金槌を傍らに置き、顔中の汗を白衣で拭った。
そして、満足気な、興奮に満ちた満面の笑みをこちらに向ける。
「すまんね。だが、これで上古の昔に途絶えたままだった魔剣鍛冶ギルドは復活を果たした。
私は生涯この日を決して忘れないだろう……これで初代から脈々と受け継がれてきた宿願は果たされたのだ。 さぁ、上にあがろう。そろそろナーシャも帰って来る頃合いだろ……今日は盛大に……という風にはいかないのだが……せめて、好きなだけ食べるといい!」
いつも読んで頂いてありがとう!
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