1.プロローグ:
皆さん初めまして。TerMです。
更新は不定期だった事もありますが、この頃は次回更新日時を後書きにてお知らせしてます。
時間は前後するかもしれませんがその日中には投稿できるようにしてます、ので! こまめにチェックを!(←悪質なアクセス稼ぎですね笑)。
大抵は一週間に二話。早い時は三話くらいのペースで投稿出来るように頑張ってまーす。
『世界を救う為の一歩を、少年は既に踏み出していた。
長く厳しい旅はこれから始まる――。』
王都・アンシアの中央区。
『人間』だけの人口なら、この世界で最大の規模を誇り、世界中から種族を問わず人が集まる巨大都市。
この世界でたった一人だけの魔剣鍛冶師は、この街に束の間の居を構えていた。
コォン、カァン……コォン、コォン……
半地下の一室に、鈍い槌音が響く。
頑丈な石で組まれた部屋にはアダン鉱石製のランプも、デンムシから造られたロウソクも……照明は一切無い……なぜなら、鍛冶師たる者、炎や熱せられた素材の色をよく見てなければいけないからだ。
鍛冶屋の心臓とも言える大型の炉には脈打ち渦巻く炎が宿り、溢れ出る白い光が、一心に槌を魔物の素材に振り下ろす少年の姿を、まるで影絵のように壁に投影している。
だが、それよりも強い光が……どこからか湧き出る不思議な虹色の光がこの部屋を包んでいた。
まるでプリズムを通った光のように、強く、鮮やかな虹色の光が部屋中をキラキラと跳ねまわっている。
少年が熱せられた素材に槌を振り下ろす度に、その光は震え、美しく輝く。
やがて素材が冷えてくると……虹色の光が弱くなり、消えた。
まだ赤熱している素材を燃え盛る炎に再び戻し、金床の傍らに愛用のハンマーを置くと、槌を振るっていた少年は顔を上げる。
日本人らしい、至って平凡な目鼻立ちの黒髪黒目の少年。
今年で十八歳の誕生日を迎えた。
汗とススで長めの髪は野人の如く、ぼさぼさに絡まっている
強い光を宿した瞳は燃え盛る炎を見つめ、口元は強く引き結ばれている。
黒い煤と流れ出る汗に塗れた少年は、休むこと無く、一心に素材を、炎を、光を、熱を……自分が扱っている全てを観察していた。
竜の素材は冷えにくいものの再加熱するにも時間が掛かる。
その上、これは太陽の如き炎熱を身に宿す炎霊の素材だ。
いくら加熱した所で、鉄の様に、容易に打てる程柔らかくなる筈も無い。
……しかも、今作っている剣は特別製で、その素材を五枚も重ねたものだ。いくら打っても変化は無いように見える。
サラマンダーの最も硬く、それでいて軽い部位である心核骨の芯を五枚、カーブを生かせるように貼り合わせ、鍛接する。
そうして出来る剣はこの世の何よりも強靭だ。アルトの古文書研究が正しければ、伝説の英雄はこの素材を使った武具を振るったらしい。
だが、その為、一本の剣を作るにも大変な労力と時間が必要になる。
根気の要る仕事になるな、と、そう少年はふんでいた。
現に、一日中この剣を打つこともう三日……さすがに辛い。
彼は耐熱グローブを嵌めたまま、絶え間なく流れ出てくる汗を拭った。
まぁ……もっとも、また汗だくになるのだから拭った所で意味なんか無いし、額に汚らしい黒い線が付くだけで、殆ど無意味なのだが……。
この仕事を始めて早三ヶ月。最初は汗を流す事を嫌がっていた少年も、もはや意にも介さない。
傍らに置いた水筒から温い水を飲むと、今度は炉の方に向き直り、炎を反射して黒光りする燃料……炎龍の血肉を濃縮乾燥して作った結晶、通称・肝……を加えてゆく。
巻き上がる炎の勢いを慎重に巨大な鞴で調整する。
剣に巻きつく炎の色と息遣いを聴きながら慎重に……その感覚は既に身に染みついていた。
自動的に、的確に、そして瞬時に肝を加える位置を見極め、左手で操る鞴と連動させて、適切なタイミングで燃料を加えてゆく。
ゴウッ、ゴォオッ……
地下室の静寂の中で……勢いを増し、複雑な紋様を描く炎が空気を吸い込む音だけが音を立てていた。
「オレも、短い期間で随分変わったよなぁ……」
炎を調整しながら少年は呟く。
三か月前の自分は今の自分を想像出来ただろうか……いや、想像だにしなかっただろう。
自分の運命は三か月前を境に、ハッキリと、想像だにしない方向に変わった。
これまでは、自分が変わってゆくのを実感する毎日だった。随分と逞しくなったと言われるし、もう魔物を目の前にしてもビビったりしない……たぶん。
だが、まだまだ始まりなんだ。と少年は自らを諫めた。
計画は二週間後に迫っている。
憧れ、尊敬し、目標としているある人物を倒さなければいけない。
それも、傷付ける事なく、ただ、無力化する。
はっきり言って、不可能だ。
だが、それでも。
『失敗は許されない。』
……。
…………。
何か雑念があってはダメだ。
雑念はまだ未熟な手元を狂わせる。
迷いがあれば、作る剣も歪んでしまう。
『必ず一回で成功させなきゃいけない』と、これまで何十回も自分に言い聞かせてきた。
最高の剣を作らなければ、なんてことは自明。
時間なんていくらあっても足りないのは判りきってる。
だが、そう言葉にする度に、『勝てる訳ない・作れる訳がない』という考えが沸き上がって止まらなくなってしまうのだ……。
少年は顔をしかめる。
考えている時間が勿体ない。
ここまで来たのだから、どちらにせよ後戻りなど許されないのだ。
少年は水を煽るように飲んで雑念を払い、精神を研ぎ澄ます。
そして一息に、炎の中から白熱した素材を引き出した。
素材の表面を色とりどりの美しい光が弾け、再び、虹色の光が少年の顔を明るく照らし出す。
そして再び、少年は無心で槌を振るうのだ。
コォン、コォン、コォン……。
まるで、少年の決意を示すかのように、何よりも強靭な剣は虹色の光の中で段々と姿を見せつつあった。
……そして、運命もまた、形を変え、まだ見えぬ全貌を徐々に現そうとしていた。
『世界を救う。誰一人傷つけずに。』
そう決意した少年は今日も一心に魔剣を打つ。
可能か不可能かなんて考えない。
自分が今、出来る事を全力でやるだけなのだ。
それが理想に届く事を信じて。
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