香油
メリアのお姉さんが歌が上手いらしく、珍しい歌を覚えて教えてあげようとしたらしい。
もちろんメリアを加えて4人で歌を歌って遊んだ。
シルヴァーナとカリンは、少女の扱いに慣れているようだ。
歌に飽きると、カリンがパンダに変身して、草原をゴロンゴロンと転がる。
一緒に転がるとモフモフだ。
「お静かに」
シルヴァーナがそう言って、丘のほうへ静かに移動していく。
突然のことに皆静かに行方を見守る。
シルヴァーナは、そっと動いていくと、突然立ち上がって素晴らしいスピードでダッシュした。
「捕まえました!」
そう言うと、手に持っていた物体を高々と掲げる。
「あ!野兎です!」
嘘でしょ。
ウサギって走って手掴みで捕まえるものじゃないよな。
「ここら辺では、あまりウサギを追わないみたいですね。慣れていないようですから簡単に取れました」
シルヴァーナの手の中でウサギがバタバタと暴れる。
「すごいな。走って捕まえるなんて。ここら辺ではそれが普通なのか?」
「まさか!普通は罠や弓を使います!」
そりゃそうだよな。
シルヴァーナがちょっとおかしいだけだ。
カリンもメリアドも目を丸くしている。
気温が少し下がってきた。
日もだいぶ西に傾いて、オレンジ色が混じってきている。
うさぎ追いし、あの山ってか。
今度は海か川で釣りでもしようか。
「そろそろ帰ろうか。メリアのお家はどこかな?」
「えっと、近くの貴族様の御屋敷です。私、剣闘士団で下働きをしてるんです」
そうか。こう言ってはなんだが、好都合だ。
カリンがメリアを乗せて4人でヴィッラに帰る。
道中で、シルヴァーナがまたウサギを捕まえた。
今度は馬に乗ったままウサギを追い、追い越しざまに腕を伸ばして跳ねているウサギを掬い取った。
どう考えても異常です。
ヴィッラに帰ると、生け捕りにしたウサギ2羽を料理奴隷に渡し、蜂蜜と適当な容器を分けてもらう。
処理は簡単だ。
さくらんぼを洗って、ヘタを取って蜂蜜に漬けるだけだ。
後でメリアにも分けてあげようと、三人で話し合った。
今日の夕飯はウサギの照り焼きだった。
ガルムという魚醤にオイルと蜂蜜を混ぜて、じっくりと焼き上げてある。
「うまっ!ウサギって旨いんだなあ」
「本当に。さすがシルヴァーナですわね」
「これは旨い。力が付きますよ」
ウィリキウスさんは噛り付いている。
「いやはや、ウサギを走って捕まえるなど聞いたことが無い。我々が好き放題に打たれるのも道理だな。流石にウサギより速くは動けんぞ。ハハハハ」
ルキウスさんにも好評のようだ。
シルヴァーナ達も喜んで食べている。
コクがあって、しっとりしていて、柔らかい。
「米が欲しくなるなぁ」
思わず呟いた。
「アキト様、米とはなんですか?」
「ユリアは知らぬのか。なんでも、遥か東方で食されているものだと聞いたぞ」
「私も聞いたことがあります。パルティアの兵を捕虜にしたとき、米がどうたらこうたら、と言っていました」
へぇ、米があるのか。
交易で手に入れたいものだ。
「それにしても、さすがナ国の御生まれですわ。アキト様は物知りでいらっしゃいます」
「ああ、面白い話をしてくれるな。そういえば、昼間馬に乗るときに、ナントカが無いとか言ってなかったか?」
「え?ええ、ええ。馬に上るのに台が無いかと」
そうか、とルキウスさんが納得してくれた。
危ねぇ。
鐙なんかあったら、騎兵戦力が超強化されてしまう。
別に帝国の軍事力が強化されて今すぐ困る訳ではないが、後々どんな影響が出るか分からん。
幸か不幸か、俺には技術系の知識はないので、その危険性は低いだろう。
代わりに、何か革新的な製品を作って一儲け、というのも無理そうだ。
大体、帝国の文化は魔石の存在もあって、地球から見てもかなり発展していると言える。
中世ヨーロッパなど比べ物にならないだろう。
まてよ、定番のマヨネーズくらいなら何とかなるか?
まぁ後々考えればいいだろう。
食事の後は三人でお風呂タイムだ。
申し訳ないが浴場にいる奴隷たちには退席してもらう。
三人で手を繋ぎながら浴場に入ると、まずはサウナで体を温める。
床が温められているので、布を引いて寝そべる方式だ。
「今日は楽しかったな。またサクランボ狩りに行こうか」
「はい!また一杯さくらんぼを取りましょう!」
「ウサギもまた狩りたいです」
「ああ、うさぎ狩りも楽しかったな。それに旨かったしな」
二人が喜んでくれて何よりだ。
最近は練習の時に毎回殴られるからな。
汗を流して、次は特別な香油でマッサージだ。
シルヴァーナもカリンも見事なプロポーションをしている。
香油を手に取って、シルヴァーナの首筋から腕、白く豊かな胸元へと手を伸ばしていく。
「もう、アキト様の手つき、エッチです」
そう言ってシルヴァーナが舌を絡めてくる。
お互いに舌を絡め合いながら、そのまま胸から引き締まった下腹部へと香油を塗りこむ。
脚の指先まで塗り上げると、次はカリンの番だ。
同じように首筋から背中を塗り上げ、抱きかかえて、次は前に手を伸ばす。
「やだー、アキトさん、硬くなってます」
クスクスとカリンが笑う。
お恥ずかしい。
でもしょうがないよね。
二人ともイルカみたいに全身をつるつるに仕上げると、今度は俺の番だ。
「ほーら、アキト様の大好きなマッサージですよ~」
シルヴァーナが甘い声を出すと二人掛かりで全身をマッサージされる。
シルヴァーナがじっくりとキスをしてくると、カリンが優しくマッサージしてくる。
カリンがキスをしてくると、今度はシルヴァーナが……。
いつの間にこんなコンビネーションを!
身も心もすっきりさせられると、スライムスターチを使って全身を洗い流した。
髪の毛も同様に洗い上げる。
スライムスターチの清涼感と、香油の香りで全身が生き返ったような心持ちだ。
香油のお蔭で肌もすべすべ、髪もつやつやになる。
温水に浸かりながら、シルヴァーナの白銀の髪を指で梳いていく。
銀糸のように細くてしなやかな髪だ。
今度は編み込みの髪型を勧めてみようか。
遠乗りに行ってよかった。
今日は二人とも特にやさしい。
異世界に来て心からよかったと思う。
風呂からあがると、あとは寝るだけだ。
もちろん寝る前に入念に風呂の復讐をした。
其の後は、色々疲れていたのか、三人で抱き合っているうちに、奈落に落ちるように寝入ってしまった。
「……寝付いたみたいですね」
「……今日はアキトさん、すごく情熱的でしたね」
「アキト様はこれからも群れを拡大されます。後から来る者に負けないようにしなければなりません」
「……でも……、アキトさんって意外と単純ですよね」
「これ。……でも本当ですね。優しくお仕えすると、アキト様も際限なく優しくおなりになります」
「シルヴァーナさん、このままだとアキトさんが悪い女に引っ掛かってしまいますよ」
「カリン、いいことを言いました。私たちでお守りしなければ……」




