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双角王

第24話「到着」

「海外に二つの植民地を持っている」

という部分を

「帝国本土と5つの属州から成り立っている」

と変更しました。


詳しくは活動報告に書いてあります。

突然の変更で大変申し訳ありませんでした。


 オウガスタ帝国は本国と5つの属州によって成り立っている。

 テティス海に突き出た半島を帝国本土とし、テティス海沿岸を8割がた手中に収めている。


 テティス海北西部沿岸がルシタニア属州、間に本土を挟んで、北東部沿岸がアクイシア属州、南東部沿岸がマルドゥック属州、南西部にヌミディア属州、そしてテティス海中央に交易の中心地としてロドス島、ロドス属州があった。

 テティス海西部は外洋に繋がっており、帝国北部はルシタニア、本土、アクイシアを跨って山脈に遮られ、その向こうには辺境が広がっている。


 オウガスタ帝国はテティス海を使って属州から穀物その他を輸入し、また、税を集めていた。

 テティス海と属州の富によってオウガスタ帝国は成り立っていると言えるだろう。


 その日、マルドゥック属州の州都アレキサンドリアで、ある高レベルの探索者パーティーが迷宮の最終階層をクリアした。

 迷宮をクリアした報酬はなんだろうか。

 金銀財宝か、見たこともないアイテムか。


 残念ながら彼らの期待は裏切られた。

 迷宮最奥部にある石碑に触れても、今まで通り迷宮入口に飛ばされただけだったからだ。

 がっかりだったが、探索者ギルドに迷宮の最終階層をクリアしたことを報告すると、かなりの額の懸賞金を与えられた。

 なにせ、アレキサンドリアの迷宮がクリアされたのは初めてだったからだ。

 金も名誉も後からついてくるに違いない。

 そう考えた彼らは、早速酒場で自分たちの功績を自慢しはじめたのだった。


 次の日、アレキサンドリアの迷宮に入ろうとした中堅パーティが、入口の石碑から行ける場所が増えていることに気が付いた。


 迷宮クリアの報酬はあったのだ。

 全人類に対して。


 飛んだ先には、2本の角が描かれた大きな扉があった。

 扉の前には、ただ一言。


「人類の恒久平和の為に」

 

 と記されていた。





 借家暮らしを始めた俺たちは、生活も迷宮探索も順調に行っていた。


 例の新型水樽による水汲みも上手く行った。

 三人で運べば、一度で風呂一杯分の水を得ることができたのだ。

 

 それからは毎日、迷宮の帰り道に三人で水を運ぶのが日課となった。

 無論、毎日三人一緒にお風呂に入っている。

 帝都に来てから一緒に入れなかったからね……。


 迷宮のほうも、無事4階層を突破した。

 今日は4階層突破の慰労で休日にして、三人で外食に来ている。


 小麦粉と卵、牛乳を混ぜて発酵させた生地を、バター、蜂蜜、ジャムなどを付けて食べさせるパンケーキ屋を選んだ。

 やはりシルヴァーナもカリンも甘い物が好きなようで、外で食べる時は大抵この店になる。

 これだったら家でも作れるような気もするが、一度作ったら毎日パンケーキになってしまう恐れがある。


「おい、聞いたか? アレキサンドリアで新しい迷宮が見つかったらしいぞ」

「ああ、聞いた聞いた。かなり良質の魔石が取れるらしいぞ」

「それだけじゃないぞ。 珍しいアイテムも見つかるそうだ」


 店に集まった商人たちが噂話をしている。

 ちょっと心惹かれるな。


「そのうちアレキサンドリアにもいってみようか」

「……」

「……」

 

 あ、食べてる途中でしたね。すいません。

 

「そんな探索者向けの話よりよ、俺たち商人向きの話をしようぜ」

「そういうからには、何かネタがあるのかい?」

「ああ。最近、各地で盗賊を懲らしめて回ってる謎の魔法使いの話を知っているか?」

「その話、嘘じゃなかったんだな」

「ああ、俺の友人が助けられたそうだ。なんでも、魔法使いなのに鉄製の奇妙な兜を被っているらしい。まるで花瓶のような変な兜らしいんだが……」


 ……聞かなかったことにしよう。 



 しばらくすると、深く帽子をかぶった挙動不審な人間が店に入ってきた。

 チラチラと周りを警戒している。

 ガイウスさんだ。

 バレバレである。


 気持ちは分かりますよ。

 そんな厳つい顔して甘い物好きってバレたらちょっと恥ずかしいもんね。

 ここは、気が付かない振りをするのが大人の対応だろう。


「あ、ガイウス様ではありませんか。お久しぶりです」


 ごめんね。うちのシルヴァーナ空気読めなくてごめんね。


 ガイウスさんはしばらくモジモジとして、観念したのか帽子を取って話しかけてきた。


「よ、よう! アキト達じゃないか。奇遇だな。いや、これはな、ちょっと買って来てくれと頼まれてな……ところで、最近調子はどうだ!?」


 無理矢理こっちに話を振ってきたな。


「え、ええ。パーティメンバーを一人増やしましてね。お蔭で順調ですよ」


 そう言ってカリンを紹介する。


「そういえば、もしかしたら近々、アレキサンドリアに遠征するかもしれません。稼げるという噂を耳にしたもので」

「ああ、双角王の迷宮の話か」

「ん……? なんです、双角王の迷宮って」


 なんでも、新しい迷宮の扉には2本の角が描かれていたそうだ。 

 2本の角は、遥か昔の双角王と呼ばれる王のモチーフらしい。


「そういう訳で双角王の迷宮って呼ばれることになったのさ。もちろん双角王については知っているだろう?」

「ええ……遥か昔、女神アイリスより昔にこの世界を征服した王でしたっけ?」

「おいおい、それだけじゃないぞ。世界を征服し、言語を統一し、度量衡も制定した偉大な王だぞ」


 そうだったな。それに……


「史上初めて魔法を使った人でしたっけ?」

「そうだな。もっとも、伝説上の人物だがな」


 そりゃそうだ。

 ホントに実在したらスーパーマンだ。


「でも、今回の迷宮発見で実在の人物だという可能性も出てきたのでは?」

「どうだろうなぁ。昔からよく使われるモチーフだからな」


 ところで、とガイウスさんは話題を戻した。


「まぁ、どうせすぐに知れ渡る事だから言ってしまうがな……。アキト、アレキサンドリアまで行く必要はないぞ」






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