水
「ところで、奴隷への給金って幾ら位が相場なんだ?」
「ご主人様、私達に給金は……」
「いや、そういう訳にはいかない。これだけは譲れないな」
シルヴァーナ達の信頼を得ました、これからずっと給金いりません、やったー。
これでは余りにも恰好がつかない。
適切な額を渡し、そのお金をどうするかはシルヴァーナ達の判断だ。
「そういうことでしたら……」
やっと納得して貰えた。
「そうですね、やはり最初のうちは、1レベルにつき銀貨10枚が相場ではないでしょうか?」
「ふむ、となるとレベル1の奴隷で、年銀貨120枚か」
「いえ、年銀貨10枚です」
ええ?
「それはちょっと安すぎないか? 生活が成り立たないだろう」
「いえ、衣食住は主人が用意しますから」
なるほど。
それでも安すぎる気がするが。
「といっても、高レベルになったり、特別な技能を持っていると、一気に給金は上がります。年金貨10枚も稼ぐ奴隷もいるそうですよ」
それはそれで困ったぞ。
経験値増加スキルのお蔭で、俺のパーティメンバーはレベルが上がりやすい。
一気に給料が上がって支払できなくなる恐れもある。
稼ぎの何%とか、割合にしちゃったほうがいいかもしれない。
「あ、あの!」
「どうした? カリン」
「あの、こちらに来たばかりなのに、初年度からいきなり給金を貰う訳にはいきません! レベルもこんなにあげて頂いたのに!」
「わ、私もです。それに、初年度からお給料を頂いてるなんて言ったら、他の奴隷達の注目を浴びてしまいます!」
結局、初年度は給金無し、2年目からは必ず払うということで落ち着いた。
具体的な給金の額も、その時の収入を見てみんなで決めようということになった。
ありがたすぎて涙が出そうだ。
甲斐性がなくてすまん。
なんにせよ、今やるべきことは金を稼ぐことだ。
「もう少ししてカリンが戦闘になれたら、次の階層に進むことを検討しようか」
「はい。私達はかなり安全な狩場で戦っていると思います。やはり、自分と同レベルの敵が適正なのではないでしょうか」
うーん、これも難しい問題だな。
「しかしな、経験値増加スキルのせいで、同格の敵と戦っているとすぐレベルが上がってしまうぞ? 腰を落ち着けて稼ぐということが出来なくなってしまう」
結局、狩場選択の問題については、出来るだけ安全マージンを取りながら臨機応変にということで片が付いた。
全く片は付いていないが。
「他には……、あとは支出を減らすことくらいか。なにかあるかな」
「えっと! やはり3人で宿屋暮らしというのは少し不経済ではないでしょうか!」
そういえば家を借りられるんだったな。
このところ忙しくて忘れていた。
「そうだな。明日、借家をちょっと見てみよう」
「あの、借家を紹介して欲しいんですが」
次の日、早速ギルドに出かけて行って、借家を探した。
「はい、幾つかありますが……。どういった物件をお探しですか?」
「できるだけ共同水場に近い家がいいんですが」
水場の位置は重要だ。
水を自宅まで引けるのは、大貴族か裕福な商人だけだからだ。
「そうですね。現在ですと、水場から歩いて5分という家がありますね」
「5分ですか……。一応見せてもらっていいですか?」
早速案内してもらう。
案内された家は2階建で、15畳ほどの食堂兼リビング、台所、風呂、トイレがあり、個人部屋6部屋に地下室まである。
パーティが住めるように設計されているようだ。
魔石を利用した冷蔵庫や洗濯機、コンロまである。
乾電池のように魔石を交換する仕組みになっているようだ。
魔石は資源というのが改めて実感される。
「ここ、家賃はお幾らですか?」
「前払いで月銀貨15枚になります」
高いのか安いのか分からないな。
「治安はどうですか?」
「この辺りは神殿も近いですし、治安はいいですよ。生活に必要な物もほとんど揃っています」
宿屋暮らしよりは明らかに安いしな。
ここに決めよう。
早速契約を済ませて一か月分の家賃を前払いすると、樽を作ってくれる木工職人の工房へ行った。
水場が近いとはいえ、水の運搬は重労働だ。
桶で水を汲んでいたら、一日分の水を運ぶのに何往復もすることになるだろう。
いくら洗濯機やコンロがあるとはいえ、迷宮に行って水の運搬もこなすのは不可能だ。
そこで、ちょっと変わり種の樽を3つ作ってもらうことにした。
太い樽と細い樽を組み合わせるようにして、ドーナツ状の形にしてもらう。
これで真ん中の空いた場所に紐を通せば、水場からゴロゴロと曳いていくことが出来る。
迷宮の帰りに三人で水を運べば、一度で充分な水量を確保できそうだ。
Qドラムという製品を参考にしました




