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カリン

 

 迷宮探索は順調だ。

 最初はちょっと、いや、かなり苦戦したが、さすがに格上の敵を倒しただけあって、レベルアップも早かった。

 現在、俺はレベル12、魔法使い12、戦士11、剣士10、アコライト11になっている。

 シルヴァーナもレベル11の戦士11となった。


 稼ぎもかなりいい。

 帝都の迷宮で取れる魔石は質がいいらしく、ジルコの魔石より高値で売れる。

 クレイゴーレムの落とす粘土も、レンガにすると高温でも割れない高品質のものが作れるらしく、高く売れる。

 この黒字具合なら奴隷を一人購入してもいいかもしれない。


 シルヴァーナと相談すると、


「つまり、群れが大きくなるということですね!」


 と嬉しそうだった。

 違う気が……いや、あってるか。





 そんな相談をしていたところ、ルキウスさんから使いが来た。


「アキト、奴隷を一緒に見に行かないか?」


 あざーっす。


「でもルキウスさん、ルキウスさんが買うような高級奴隷はちょっと手が出ないんじゃないかと……」

「ハハハ、安心しろ。私は高級奴隷など買わないよ。他人の手垢の付いた奴隷など御免こうむる。教育ならうちでやるさ」


 高級奴隷は既に何らかの技能を持った人達だ。

 ルキウスさんは何の技能も持たない奴隷を買って、自分の家で教育するらしい。

 まさか異世界でリアル光源氏に出会うとは。


「実はな、最近、複数の筋から奴隷を譲ってくれと頼まれてね」

「そういえばルキウスさんの家の奴隷は皆すごい美人か美男子ばかりでしたね」

「それはそうさ。私がいるのだから、周りの者もそれなりでないとな」


 ここまで言い切られると何も言えなくなってしまう。

 実際、ルキウスさんの家は巷で“天上の世界”と呼ばれているらしい。

 美しく、最高の教育を施された奴隷は大変な人気なんだとか。

 

「どうだ? 美しくて珍しい奴隷を揃えてくれているはずだぞ」

「是非お供させてください」


 

  

 奴隷商の商館までは輿に乗って行くらしい。

 シルヴァーナは歩きだが、俺はルキウスさんと一緒に、屈強な男が8人がかりで担ぎ上げる輿に乗せられた。


「ハーッハッハッハ」


 道中では、先頭と最後尾の奴隷がパンや菓子を周りに投げ与える。

 それに群がる人々で大変なことになった。

 ルキウスさんは高笑いである。


 俺もいい加減、異世界に来て倫理観が麻痺しているが、こればっかりは何かやってはいけない気がして、思わず頭を抱えてしまった。





 商館に着くと、ここでもまた頭を抱えた。


 広い中庭で、美しい奴隷達がお茶を飲んだり、花を摘んだりしている。

 ただし、全員裸で、だ。


 ルキウスさんはその光景を眺めながら奴隷を選ぶらしい。


 オウガスタ帝国……滅べ。


「ふむ、悪くないな。アキトはどうだ?」


 そうだった、奴隷を買いに来たんだった。

 心を鬼にして遠目から鑑定していく。


 戦士、戦士、剣士、戦士……。  


 戦士と剣士が多いな。

 皆、健康そうだから問題ないだろうが、いまいちピンと来ないな……。


 すると、奴隷達のテーブルにお茶を運んでくる白い貫頭衣を着た女の子が目に留まった。

 

 髪はショートの黒髪で、毛先だけ白くなっている。

 頭の上には白くてフカフカな丸耳がぴょこんと突き出ていた。

 胸はかなり大き……いや、違う、重要なのはそこじゃない。



カリン

熊猫族/人間

17歳 女

 

レベル:1

職業:格闘家Lv1



 格闘家って初めて見たぞ。


「すいません、今お茶を運んでいた彼女は?」


 そう聞くと、奴隷商は少し困った顔をした。


「彼女には少々問題が……。戦闘用ではなく、家庭内でお使い頂くのなら大丈夫なのですが」

「問題?」

「ええ。実際に見て頂ければ分かります」


 そう言うと、奴隷商はカリンを呼び寄せた。


「さ、カリン。自己紹介しなさい」

「はい! カリンです! えっと、17歳です! 出身は東のローラン国でした!

えっと、えっと、迷宮探索でしたら戦闘できます!」


 何も問題ないじゃないか。

 元気があっていいぞ。


「それでは、カリン。戦闘準備をしなさい」

「はい!」


 カリンは元気よく返事すると、少し距離をとって、


「いきます! へん・しん!」


 と叫ぶと、ボフンと白い煙に包まれた。


「……」

「……」

「……かわいい!」


 シルヴァーナがパンダに飛びついた。

 そう、目の前には巨大なパンダがあらわれていた。

 シルヴァーナが抱き着いて尻尾をぶんぶん振っている。

 フカフカだ。


「ご覧のとおり、戦闘時には見た目がこうなりまして。それにもう一つ問題が……」

「キュウ キューン キュウ!」


 あ、喋れないのね。


「さ、カリン。戻りなさい」


 奴隷商がそう命令すると、またもやボフンと白い煙に包まれてカリンが人間に戻った。

 シルヴァーナがちょっと不満そうだ。


「これは驚いた。私も長年奴隷を見てきたが、こんなことは初めてだ」


 やっとルキウスさんもフリーズが解けた。


「彼女は熊猫族と人族のハーフなのですが、どうも熊猫族の血が変に作用したようで。普通の熊猫族は変身などしないそうなのですが……」


 どうしようか。

 変身中は喋れないというのは困ったな……。


 悩んでいると、シルヴァーナがこちらをジッと見てくる。


 ……分かった、分かったよ。

 泣く子とシルヴァーナには勝てません。


「よし、彼女を買います!」





 

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