↓ ↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
恋愛経験ゼロの私、愛の女神様に同情されて異世界転生! ~《不落の運命守護》で運命の伯爵様を守ります~  作者: 月城宮 雅仁


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

PR
1/18

第1話 恋愛経験ゼロのまま、人生が終わりました

「一度くらい、好きな人とキスしてみたかったなぁ」


それが、私の人生最後の言葉だった。


いや、正確には声になっていなかったかもしれない。


だってそのとき、私は道路に倒れていて全身がひどく痛かったから。


目の前には青空が広がっていた。


ついさっきまで、いつもと変わらない日常だったはずなのに。


会社を出て、駅前のコンビニに寄って、夕飯を買って帰る。それだけだった。


だけど、横断歩道を渡ろうとした瞬間ものすごい音がして、気付けば私は道路に倒れていた。


どうやら交通事故に遭ったらしい。


周囲から悲鳴が聞こえる。


誰かが救急車を呼んでいる声もする。


でも、その声はどんどん遠くなっていった。


……ああ、私、死ぬんだ。


不思議と、そのことだけは理解できた。


私の名前は小鳥遊結衣。


二十五歳、独身。


ごく普通の会社で、ごく普通の事務員として働いている、ごく普通のOLだ。


趣味は読書とネットショッピング。


休日は家でのんびり過ごすことが多く、たまに友達と買い物に出かける程度。


大きな夢があったわけでもないし、これといって特別な才能があったわけでもない。


仕事で大きな失敗をすることもなければ、目覚ましい成果を上げることもない。


毎月のお給料で生活して、少しずつ貯金をして。


そんな平凡な人生だった。


ただ一つだけ。


どうしても心残りがあった。


それは、二十五年間一度も彼氏ができなかったことだ。


別に、恋愛に興味がなかったわけじゃない。


むしろ、かなり興味はあった。


学生時代には恋愛小説を読み漁ったし、社会人になってからも恋愛ドラマを見ては、画面の向こうの二人に胸をときめかせていた。


いつか私にも、こんな恋が訪れるのかな。


そう思っていた。


……思っていただけで、二十五年が過ぎた。


好きな人ができても告白する勇気はなく、誰かから告白されることもなかった。


友達が次々と恋人を作り、結婚していく中、私は今日も一人でコンビニ弁当を買っていた。


それでも、まだ時間はあると思っていたのだ。


二十五歳なんて人生これからじゃない。


いつかきっと素敵な人に出会える。


そう信じていたのに。


「…………」


視界がぼやけていく。


痛みも、少しずつ感じなくなってきた。


もっと旅行に行けばよかった。


美味しいものも、もっと食べたかった。


お母さんとお父さんにも、ちゃんと親孝行しておけばよかった。


いろんな後悔が頭に浮かんでは消えていく。


でも、最後に強く思ったのはやっぱりあのことだった。


一度くらい、誰かを本気で好きになって。


その人にも好きになってもらって。


手をつないで、デートをして。


できれば、キスなんかもしてみたかった。


贅沢は言わない。


たった一度でいいから、好きな人と幸せな恋をしてみたかった。


そんな未練を抱えたまま、私の意識は暗闇に沈んでいった。


◇


「……かわいそうに」


誰かの声がした。


優しくて、透き通るような女性の声。


「こんなにも愛に憧れていたのに、一度も恋を知らずに終わってしまうなんて……」


……誰?


「しかも、最後の願いがキスだなんて。なんて慎ましい子なのかしら」


いや、待って!


それはあまり大きな声で言わないでほしい。


「せめて一度くらい、素敵な恋をさせてあげたいわねぇ」


……え?


私はゆっくりと目を開けた。


そこには、見覚えのない景色が広がっていた。


真っ白な床。


真っ白な壁。


どこまでも続く、光に満ちた不思議な空間。


そして、目の前には一人の女性が立っていた。


長い桃色の髪。


宝石のように輝く瞳。


白と淡い桃色を基調とした、美しいドレス。


その姿は、まるで絵本に登場する女神様そのものだった。


「……あの」


私が声をかけると、女性は嬉しそうに微笑んだ。


「あら、目が覚めたのね。こんにちは、結衣ちゃん!」


「こ、こんにちは……?」


「私はアモリア。 愛を司る女神よ」


「…………」


愛を司る女神。


……なるほど。


「……私、死んだんですよね?」


「ええ。残念だけれど、あなたの人生は終わってしまったわ」


……やっぱり。


事故に遭ったことも、最後に何を考えていたのかも、ちゃんと覚えている。


それにしても、死んだら本当に女神様に会えるなんて。


「それでね、結衣ちゃん」


アモリア様は、なぜか私の両手を握ってきた。


「あなたの人生を見せてもらったのだけれど……本当に、本当にかわいそうだったわ!」


「えっ」


「二十五年間、彼氏が一人もいないなんて!」


「ちょ、ちょっと!?」


「初恋も実らず、告白もできず、手をつないだことさえないなんて!」


「や、やめてください!」


「それなのに、最後まで恋を諦めていなかったのね……!」


アモリア様の目には、うっすらと涙が浮かんでいた。


……なんだろう。


女神様に同情されている。


それも、ものすごく。


いや、確かに恋愛経験はゼロだったけど。


私の人生、そこまで悲惨だったかな?


「決めたわ!」


突然、アモリア様が立ち上がった。


「結衣ちゃん。あなたに、もう一度人生をおくらせてあげましょう!」


「……はい?」


「異世界に転生させてあげるの!」


「異世界……転生?」


思わず聞き返してしまった。


異世界転生。


もちろん、その言葉は知っている。


小説や漫画で何度も見たことがあるし、私だって好きなジャンルの一つだ。


でも、まさか自分が経験することになるなんて。


「本当に、そんなことができるんですか!?」


「もちろんよ! 私、女神だもの!」


アモリア様は胸を張った。


……女神様って、ずいぶん気軽に異世界転生させてくれるんだなぁ。


「転生先は、魔法とスキルが存在する世界よ。人々は基本的に、一人一つの固有スキルを持って生まれるの」


「スキル……!?」


思わず身を乗り出してしまった。


異世界。


魔法。


スキル。


これって、もしかして。


私、すごい冒険ができちゃったりするのでは?


……いやいや、待って。


そもそも私、運動神経はあまりよくない。


学生時代の体育だって得意だったとは言えない。


魔獣とかいう恐ろしい生き物に襲われたら、きっと真っ先に逃げ出す自信がある。


「安心して。危険なことをする必要はないわ。好きなように第二の人生を楽しめばいいのよ」


「そ、そうですか……」


「それに、今回は特別に、あなたの希望を聞いてスキルを授けてあげる!」


「えっ!? 本当ですか!?」


「ええ! 何でも言ってちょうだい!」


……何でも、かぁ。


普通なら、最強の攻撃魔法とか、無限にお金が手に入る能力とか、そういうものをお願いするのかもしれない。


でも。


私が本当に欲しかったものは、そんなものじゃない。


「……あの、女神様」


「なあに?」


「私、今度こそ恋がしたいです」


口に出してみると、少し恥ずかしかった。


でも、これだけは譲れない。


「今度こそ、好きな人と出会って、その人にも好きになってもらいたいんです!」


「うんうん!」


「それで、できれば……その人を守れるような力が欲しいです……」


「守れる力?」


「はい。せっかく好きな人ができても、その人がいなくなっちゃったら悲しいじゃないですか!」


自分でも、少し欲張りなお願いだとは思う。


運命の相手に出会えるだけでも十分すぎるのに、その人を守れる力まで欲しいなんて……


でも、アモリア様は私の言葉を聞くと、ぱぁっと表情を明るくした。


「なんて素敵なの!」


「えっ?」


「自分が愛されることだけじゃなくて、相手の幸せまで願うなんて!」


「い、いえ、そんな大げさな……」


「いいわ! お姉さん、頑張っちゃう!」


……お姉さん?


女神様って、年齢いくつなんだろう。


そんな疑問が頭をよぎったけれど、もちろん口には出さなかった。


アモリア様は両手を胸の前で合わせ、目を閉じた。


すると、周囲に淡い桃色の光が広がっていく。


光は小さな粒となって集まり、やがて一つの輝く球体を形作った。


「よし、できたわ!」


「は、早いですね!?」


「ふふんっ。愛の力を甘く見ないでちょうだい!」


アモリア様は得意げに微笑んだ。


「あなたのためだけに作った、世界に一つしかない特別なスキルよ!」


「世界に一つ……!?」


すごい。


なんだか、本当にすごそうだ。


「それで、どんなスキルなんですか?」


「名前は《不落の運命守護》よ!」


「ふらくの、うんめいしゅご……?」


聞き慣れない名前だった。


でも、なんだか格好いい。


「効果はね……!」


私は期待に胸を膨らませた。


女神様がわざわざ作ってくれた、特別なスキル。


いったい、どんな能力なんだろう。


「運命の人には必ず出会えるし、その人を守れるわ!」


「…………」


私は続きを待った。


けれど、アモリア様はにこにこと微笑んでいるだけだった。


「……あの、それだけですか?」


「ええ!」


「どうやって守るんですか?」


「ちゃんと守れるわよ!」


「いや、そうじゃなくて……」


「大丈夫! 私が保証するわ!」


ものすごい自信だった。


でも、説明にはなっていない。


「あの、例えば回復魔法とか、防御魔法とか……」


「そのときになればわかるわ!」


「そのとき!?」


なんだか、すごく不安になってきた。


でも、女神様が保証してくれるんだから、きっと大丈夫……なのかな?


「それじゃあ、そろそろ行きましょうか!」


「えっ、もうですか!?」


「大丈夫よ。向こうの言葉も読み書きも、問題なくできるようにしておくから!」


「そ、それは助かりますけど……!」


「それと、転生先では今の姿のままよ。記憶もそのままだから安心してね!」


どうやら、赤ちゃんから人生をやり直すわけではないらしい。


それはありがたい。


正直、今からもう一度学校に通うのは遠慮したかった。


「さあ、結衣ちゃん!」


アモリア様が両手を広げる。


すると、私の足元に大きな魔法陣のような光の模様が浮かび上がった。


「今度こそ、素敵な恋をしてきてね!」


「は、はい!」


「そして、幸せになってちょうだい!」


その言葉を聞いた瞬間、胸の奥がじんわりと温かくなった。


……そっか。


私、もう一度生きられるんだ。


今度は、ちゃんと自分の人生を楽しもう。


仕事も、趣味も、そして恋愛も。


前世でできなかったことを、たくさん経験してみたい。


「ありがとうございます、アモリア様!」


心からそう言うと、女神様は嬉しそうに微笑んだ。


「ふふっ。どういたしまして!」


次の瞬間、まばゆい光が私を包み込んだ。


視界が真っ白に染まっていく。


そして、意識が遠のく直前。


アモリア様の声が聞こえた。


「大丈夫。あなたの運命の人は、きっと素敵な人よ!」


私は小さく笑った。


今度こそ、恋ができる。


好きな人と手をつないで、デートをして。


そして、いつかは……。


「……キス、できるといいなぁ」


そんな期待を胸に、私は新しい世界へと旅立った。


このときの私は、まだ何も知らなかった。


愛の女神様が授けてくれた《不落の運命守護》が、いったいどんな力を秘めているのか。


そして、その力によって、私の第二の人生がどれほど大きく変わっていくのかを。


女神様ったら、肝心なことを何一つ説明してくれなかったんだから……

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。