いつも話が逸れていく、それはおそらくはバグ 二
それは見た目は火だった。見た目は。
火というのは様々な物質や酸素を燃焼して熱と光を発生させる現象。
難しく抜けもなく、という説明でもない限り大体はこれで良いと思う。
魔法で火を、炎を出して何かを焼いたりするというのはそこに至る仕組みがどうあれ、先の説明に準じているはずで。
だからこそ物体等を燃焼させるし、魔力を燃料として媒介にし光と熱を出す火そのものを発生させるんだと思われる。
しかし、しかしだ。魔力を全く持たない俺が周囲の大気全体の熱量を代替として発生させた、このライターの火程のそれは光は放っているが熱は放射せず、逆に熱を奪っている。
どういう仕組みや原理でこんな結果が反転する火が発生しているんだ?
「湯呑みの水が全部凍ってしまいましたね」
中の水が氷になってしまったせいか、それとも水触れていたから一緒に湯呑みの熱も奪われたのか。
湯呑みもキンキンに冷えている。
あまりにも冷えていると手の皮膚が貼り付いてとんでもない事にもなるが、そこまでではないらしく長時間持てない程度だ。
「どうしますこれ?全然目的というか本来の用途ですら使えない感じがしないですか?」
レティさんは何も言ってはくれない、それだけ驚いているって事か。こんな現象初めて見たんだ。
架空の話、フィクションのファンタジー世界でも少なからず、俺が知っている限りではこんな熱を奪う火なんて設定聞いた事がない。
俺が寡聞なだけでもしかしたらあるのかもしれないが、これに該当するような物は動物育てるバトルゲームの冷凍ビームと鉄の城なロボットの武装位しか知らない。
どっちもはビーム、レーザーだから光線で火ではないだろうけど親戚みたいな物だろう。
ビームライフルだって熱線砲で火の親戚だろうし。
「モビー、しばらく火を出したままで維持し続けて」
やっと喋ってくれたかと思ったらなんだろう、その要求は。
「いや、まぁ別にそれは良いですけど。それまた何故?」
「モビーが魔法を使うからこの部屋の空気の熱が下がるのか、発動した火の存在が周囲の熱を奪った結果で部屋の温度が下がるのか……」
「どっちなんです?」
「私にも分からない。でも温度が下がるには下がるんだよ、試してみようよ」
「爆発とか、しませんよね?」
「多分。逆に凍て付くかもしれないけど急激に変化は起こらない、はず」
結局危ないんじゃないのそれ?大丈夫?
「どっちにしても危険じゃないですか?最悪死んでも恨みませんけど責任も取れないですよ?」
「大丈夫だよ。さっきまでの流れでこの部屋中の温度が急激に下がったりはしなかったでしょ?火を灯している間は緩やかに温度が下がっていくだけだと思う」
「思うって言われてもそれだと不安要素が大きいというか……」
「多分だけど、「エアコン」みたいになるんじゃないかな?」
「エアコンって、それもムラタさん由来の知識ですか?」
「だと思うよ。モビーの住んでいた世界の技術にそういう物があるんでしょ?」
何でもありか、この人は。
だが、エアコンかぁ。この環境下でそんな事が出来たら夢のようだけど、それって大丈夫なのか?快適さを巡って戦争にまで発展しない?
「あの、結果的にこの冷却能力を巡って国家間戦争とか起きませんか?」
「起きるに決まってるじゃない」
「じゃダメじゃないですか!」
「モビー今更だよそんなの。自分が水も食料もほぼ無限に出せるのを忘れてない?それだけで小さくて国内、大きくなれば国家間どころか世界規模でモビーの取り合いだよ?手に入らないなら殺されちゃう」
正直忘れてはいない、しかしそんなに気にしてはいなかった。
そうか、今更か。それもそうだなぁ。
「加えて今やリルまでいるんだ。私達3人で創生、維持、破壊のサイクルで世界を変えてしまえる規模の特異点だよ」
「世界の循環を司る神を宣う気はないですよ」
「ちなみに創生がリルで維持がモビー、破壊が私だね」
「そんな事訊いてないですって」
「良いから、ほら、ね?」
どうなっても知らないからな、この人は。
結局俺は諦めてエアコンごっこをする事にした。




