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没落王女、お好きにバトる!  作者: タイガー大賀


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第76話 やられたらやり返しますよ

 まさか、私の実力が〝(じん)()()える〟(ほど)(とっ)(しゅつ)していたとは……

 ()()()()人より(すぐ)れてるだけだと思ってたんだけどなぁ……


「何が〝ちょっと〟よ…… 私達3人(ジュリア、ランディ、レイチェル)は、それぞれが100人を相手にしてギリギリだけど勝てる実力を持ってんのよ? ジェニファー(あんた)はその3人を同時に相手して、ほんの数分で全員を倒したのよ? しかも、ランディとレイチェルに(いた)っては、気絶させられたんだからね?」


 ジュリア姉様がクレームを入れるが、そのジュリア姉様ですら片足を引き()り、ヒョコヒョコした歩き方になっている。


「……この歩き方だって、ジェニファー(あんた)の振るった木剣(ぼっけん)(ひざ)を横から直撃…… 魔法医の話だと、(ひざ)半月板(はんげつばん)ってのが(そん)(しょう)してるらしいんだからね!? ……ったく、少しは手加減しなさいよね、実力差は(あき)らかなんだから……!」


 言ってジュリア姉様は診察と治療の為、魔法医の居る野戦病院へと向かったのだった。

 私はジュリア姉様から好き放題(ほうだい)言われた鬱憤(うっぷん)を晴らすが(ごと)く、ストレイフ王国の兵士の腕や(あし)()って()って()(まく)って戦闘不能にしてやった。

 勿論、殺してはいない。

 以前にも説明したと思うが(誰に?)、負傷した兵士は死んだ兵士より厄介(やっかい)なのだ。

 戦えないのに食料や水は消費する。

 その上、治療費も必要で高額になる。

 なにしろ私の()(かた)は、()った瞬間に手首を(ひね)り、筋肉や靭帯(じんたい)()()ぐには()っていないのだ。

 ほんの(わず)かな(ひね)りだが、その(ひね)りの所為(せい)で切断された筋肉組織や靭帯(じんたい)を元通りに修復出来なくしているのだから。


「それを事も無げにやっちゃうってのが、ジェニファー(あんた)の異常な戦闘能力なのよね……」


 ジュリア姉様の言葉に、脳震盪(のうしんとう)の気絶から復活したランディさんとレイチェルさんは、真剣な表情で大きく(うなず)いていた。

 ど~ゆ~意味だ、テメー()…?





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「もうストレイフ王国は虫の息だと言うのか!? だとすると数ヶ月…… いや、数週間以内にジェニベルム王国がアビチェラ王国(我が国)矛先(ほこさき)を向けるのは明らかではないかっ!」


 アビチェラ国王は、対ジェニベルム王国ともの前線から届く報告を聞き、手に持っていたグラスを報告に来た伝令兵に向かって投げ付けながら怒鳴る。

 伝令兵は()(しゅく)し、平伏(へいふく)したまま震えている。


「陛下…… 伝令兵を怒鳴っても、何も好転(こうてん)しませんぞ? やはり…()()アンドレア帝国を倒したジェニベルム王国に対し、(はん)()(ひるがえ)す事は()(ぼう)だったのでは? ジェニベルム王国の(いち)地方として(ちゅう)(せい)を誓い、静かにしていた方が賢明(けんめい)だったのでは? この考えは私だけでなく、多くの貴族や大臣も同意しております……」


 謁見(えっけん)()で伝令兵の報告を聞いた貴族や大臣の(ほとん)どは、沈痛(ちんつう)(おも)()ちで顔を()せていた。

 しかし、アビチェラ王国の国王であるイーヴァン・アビゲイルは、そんな様子を見て逆に激昂(げきこう)


「そんな弱気でどうする! ジェニベルム王国は確かに大きな国だが、(さき)のアンドレア帝国との(いくさ)やストレイフ王国との(いくさ)()(へい)しておろう! 逆にストレイフ王国(我が国)は、アンドレア帝国との(いくさ)では後方支援に(てっ)していたから兵力も物資も充分な(はず)だ! (いっ)気呵(きか)(せい)に攻め込めば、完全勝利とは行かずとも、ある程度の領地は得られるだろう! 全力を持って攻めよ! (おじ)気付(けづ)く者は、この場で(しゅく)(せい)する!」


 イーヴァン・アビゲイル国王の一喝(いっかつ)で、会議に参加していた貴族や大臣達は渋々(しぶしぶ)ながら(したが)い、会議室を(あと)にした。


(これでは(うわさ)に聞いていたアンドレア帝国皇帝と同じではないか……)


 そんな思いを胸に(いだ)きながら……





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「……てな感じで、ストレイフ王国の貴族達や大臣達は、かつてのアンドレア帝国皇帝に対する貴族達や大臣達と似た様な感情をアビチェラ国王に(いだ)いてる様子ですね」


「正直言って、アビチェラ国王に対する貴族達や大臣達の忠誠心は()()ちてるって感じですねぇ…… 適当に相手して、ジェニベルム王国(こちら)との戦力差を見せ付ける…… と言うか、ジェニファー様、ジュリア様、ランディ殿、レイチェル殿の軍で蹴散らせば、すぐに戦意喪失(そうしつ)するんじゃありませんか?」


 アビチェラ王国に潜入し、内情を(さぐ)っていたミハエルさんとミーナさんからの報告を聞き、私は決意を固めた。


「……全力を持って叩き(つぶ)します。ジュリア姉様、ランディさん、レイチェルさん、覚悟は出来てますね…?」


 私は3人に視線を向け、更に彼等の背後に(ひか)える〝軍の指揮官達〟にも(にら)みを()かせる。


「ま、ジェニファーの決意は(かた)いみたいだし、やるしかないでしょ?」


「俺は最後までジェニファー様と共に戦うって決めたからな。今さら(いな)(おう)も無いぜ?」


「私もですわ。まぁ、私に出来る最大限はの事はするつもりですわよ?」


 ジュリア姉様、ランディさん、レイチェルさんが言うと、彼等の背後に(ひか)える〝軍の指揮官達〟も、胸に手を当てながら声を(そろ)えて言う。


「「「「「我々もジェニファー様と命運を共にする覚悟です!」」」」」


 全員の言葉に私は満足し、決意を伝える。


「ならば、今すぐ準備に掛かって下さい! アビチェラ王国(敵国)の準備が(ととの)う前に攻め込みますよ! (すで)にアビチェラ王国と(たい)()している前線部隊には早馬で連絡! アビチェラ王国(敵国)侵攻(しんこう)を食い止める為、()(えん)作戦を徹底する様、伝えて下さい!」


 ジェニファーの(めい)を受け、3人の伝令兵(万が一(とら)えられた場合を考え、複数人数を()(けん))は、それぞれ違うルートで前線へと馬を()けさせたのだった。





 ◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇◆





「なるほど…… では、我々は積極的に戦うのではなく、消耗を(おさ)えつつ敵の足止めに(てっ)すれば良いと?」


「はい、戦意の高い兵は不満に思うでしょうが……」


 アビチェラ王国軍と(たい)()している軍の指揮官達は、伝令兵からの指示を聞いて肩を落とした。


「やはり、我々の戦力ではアビチェラ王国軍を押し返すだけの(ちから)は無いと言う事か…… まぁ、薄々(うすうす)そうではないかと思ってはいたが…… それでもだ! ジェニファー様の期待に完全に(こた)える事は出来なかったが、新たな指示である〝()(えん)作戦〟は成功させようではないかっ! (みな)の者! ジェニファー様は、我等の戦力・戦術ならばアビチェラ王国軍を足止め可能だと信頼して下さっているのだ! ならば、その期待に(こた)えようではないかっ!」


 対アビチェラ王国軍総司令官の(げき)に、兵士達は


「「「「「おぉおおおおおおおっ!!!!」」」」」


 と士気を上げ、死に物狂いと言っても()い必死さでアビチェラ王国軍の侵攻を食い止めていた。

 そんな状態が2週間ばかり続いた頃、ジェニファー達の軍が到着したのだった。





 ─────────────────





「お待ちしておりました、ジェニファー様。そしてジュリア様、ランディ殿、レイチェル殿。ご指示の通り、アビチェラ王国軍は国境を越える事は出来ず、足踏み状態です」


 うん、それは想定の範囲内だな。


「ただ、アビチェラ王国側は、何とかして我等の防衛網(ぼうえいもう)(とっ)()しようと(やっ)()になっている様ですな」


 なるほど……

 てか、それを利用すれば簡単に(一部の軍とは言え)殲滅(せんめつ)出来るだろ……


「では、アビチェラ王国軍(敵軍)(とっ)()したがってる部分の防衛網(ぼうえいもう)()(うす)にしましょう」


 私の提案に、国境の防衛戦を(にな)っているバーテルズ王国の『ミケーレ・バーテルズ国王』は難色をしめす。

 まぁ、気持ちは(わか)らなくもない。

 国境の防衛を()(うす)にすれば、(アビチェラ王国)()(うす)になった部分に集中して攻撃を仕掛けてくるだろうしな。

 しかし、それこそが私の作戦。

 私が作戦を説明すると、バーテルズ国王は勿論、集まっていたバーテルズ王国貴族や大臣達も納得し、行動を開始したのだった。

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