表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

701/701

701 圧倒的



「魔法を使って来るな」

「ですね」

「え?」

 エギエディルス皇子とローレン補佐官の目が鋭くなっていた。

 2人はフェリクス王の立ち姿や、落ちて来るコインばかりに気を取られていた莉奈とは違い、魔力の流れや動きをしっかりと見ていたらしい。

 莉奈が"魔法"という言葉に驚いていると、ちょうど目の端にチラッと赤いモノが見えた。



 どうやら、開始早々にレイが、フェリクス王に向かって火球ファイアボールを放ち、先制攻撃を仕掛けた様だ。



「へぇ、無詠唱とはやるじゃん」

 レイの魔法を見て、エギエディルス皇子が少し感心していた。

 魔法とは基本的に、短長に関わらず、呪文を言葉として出した方が、魔力を溜めやすくイメージ通りに発現出来る……と言われている。

 特に長い詠唱であればある程、集中して魔力を注げ、その威力を高められるとされていた。

 しかし、その反面……魔法を放つまで隙を与える事となる。

 何故なら、相手が何か仕掛けて来るのに、詠唱が終わるまで大人しく待ってくれる者などいないからだ。

 (フェリクス王なら、ワクワクして待っていそうだけど……)



 しかも、大抵の場合は、どんな魔法か言葉にのせて詠唱する為、相手に何をしようとしているのかがバレる……というデメリットまである。

 対魔物ならともかく、対人の戦闘に長い詠唱は不向きであった。



 ただ、魔法使いの手練れならば、短い詠唱はメリットしかない。

 なにせ、相手が魔法だと気付いた瞬間には、放つ事が出来るからである。無詠唱なら尚更だ。

 しかし、たとえ予期せず放たれた火球ファイアボールだとしても、フェリクス王には当たらそうだけど。

 いや、当たっても、何事もなかったかの様に向かって来そうだ。



 だが、そんなフェリクス王相手だとしても、先に放つ事で一瞬隙が生まれる可能性はあるし、踏み止まらせる事が出来る……かもしれない。

 レイもおそらく、本気でやれるとは思っていないハズだ。

 運良くフェリクス王優位の構図を少しでも崩せたら……という考えなのだと想像する。



 だが、世の中とフェリクス王は、そんなには甘くはなかった。

 案の定、レイの左手から放たれた火球ファイアボールは簡単に避けられ、シュゼル皇子の張った結界に一直線。

 エギエディルス皇子とローレン補佐官ですら察知していたのだから、フェリクス王が気付かない訳がない。

 しかし、それはレイとて想定の範囲内。

 ジンが手も足も出なかったフェリクス王が、避けられないとは思っていない。所詮、火球ファイアボールなど猫騙し程度。

 だが、先に放つ事で前方からの攻撃ルートを潰し、範囲を狭める事に成功した。



 こうなれば、フェリクス王は左右のどちらかか、上から仕掛けて来るだろう。レイはそう想定し剣を構えた。

 姿が見えた瞬間、今度はこちらから仕掛けられる。そう思うと、剣を持つ手に自然と力が入った。

 だが、フェリクス王が現れたのは上でも左右でもなく……背後だった。

「……っ!?」

 完全に意表を突かれたレイは、咄嗟に右足で地を蹴り、フェリクス王の剣を寸前で躱した。

「なっ!」

 しかし、躱した先にも何故か、フェリクス王の姿がーー



「くっそ!!」

 剣士である以上、フェリクス王の攻撃は剣で受け止めて反撃したい。

 だが、そんな悠長な事を考える余裕など、レイにはまったくなかった。

 風の魔法を使い、別の場所に瞬間移動するのがやっとで、優位に立つ以前の問題だ。

 それどころか、ジン同様に自分の戦うリズムを崩されまくりで、いつも自分が敵とどう戦って来たのか、分からなくなっていた。




「意外と頑張ってますね」

「だな」

 ローレン補佐官が感心している隣で、エギエディルス皇子が鼻を鳴らす。

 たとえ兄王が手加減しようがしまいが、ジンやレイを翻弄させたのは確かだし、モルテグル兵達を黙らせたのも事実だ。

 それが、何だかエギエディルス皇子は誇らしくて嬉しかったのだ。



「でも、時間の問題でしょう」

 1人優雅にイスに座り、紅茶を堪能しているシュゼル皇子がほのほのと言った。

 レイは躱すのに集中せざるを得ず、まったく反撃に転じられない。

 あれでは、体力を削られるだけで、きっと何も出来ないだろう。

 もはや、誰の目から見ても、勝敗の行方は分かりきっていたのであった。








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ