679 国の大事と夫の嘘
「あ゛ぁ、モルガだけ? じゃあ、グルテニアのオッサンは何しにバイツに行ったんだよ」
フェリクス王に詰め寄るアーシェスと違い、エギエディルス皇子は冷静に疑問を投げ掛けていた。
彼の言うグルテニアのオッサンとは、現グルテニアの王を名乗り、アーリャ達を国から追い出したとされる人物。ホルンの叔父でアーシェス兄妹の大叔父にあたる者の事だろう。
確かに、王都の東西に魔物暴走が発生した時、西のバイツに行ったハズ。
しかし、王竜の言う様に、魔物暴走はモルガだけで "バイツ"では発生していないというのであれば、アーリャ達の大叔父は何故そこに向かったのか……という疑問が生まれてくる。
「散歩じゃねぇの?」
「兄上」
散歩な訳がない。
フェリクス王が揶揄する様に鼻で笑えば、シュゼル皇子が軽く諌めつつ苦笑いしていた。
「勘違いって事はねぇよな?」
そう訊いたエギエディルス皇子の声色には、どこか悔しさが滲んでいる。
きっと兄2人のやり取りを見て、自分だけが分かっていない事に気付いたのだろう。
「勘違いで兵を率先する様じゃあ、グルテニアは終わりだな」
確かに魔物暴走は群れでやって来る。それを勘違いや見間違いともなれば、報告者は処罰対象になりそうだし、それを信じた王は嘲笑ものだ。
自分なりに一生懸命考える末弟が可愛くて仕方ないらしく、フェリクス王はエギエディルス皇子の頭をグリグリと撫で回していた。
頭を撫で回されたエギエディルス皇子は、超不機嫌そうだけど。
「え? 何も起きてない場所に向かったって事!?」
「「何のために」」
驚愕するアーシェスの後ろで、アーリャの護衛達が顔を見合わせていた。
魔物暴走が起きていないのであれば、兵を率いて何しに行ったのか。そんな疑問を投げたアーシェスに、シュゼル皇子はほのほのと微笑む。
「そもそも、本当に向かわれたのですかね?」
「「「は?」」」
「いや、大叔父は兵を……」
アーシェスと護衛達は、聞き間違いかと眉根を深く寄せ、アーリャはそんなバカなと目を見張っていた。
「少し言い方を変えましょうか。アドルフはバイツへ"向かった"と言っている様ですが、はたして本当に"行った"のでしょうか」
「「え?」」
「どういう意味だよ?」
シュゼル皇子の謎解きみたいな言葉に、アーシェス兄妹は眉根をさらに顰め、エギエディルス皇子は唸っていた。
だが、何となく分かった莉奈は、思ったままに口にする。
「あぁ! 妻には友達と飲み会だって家を出たけど、実際は愛人宅に行ってました……みたいな事ですか?」
「「「……」」」
どういう例え方をするんだという皆の視線が、一斉に莉奈に降り注ぐ。
国の一大事と、浮気する夫の嘘。
それを同レベルで説明してみせた莉奈に、皆は唖然とする。
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