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聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


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367 俺達の身体は、お酒で出来ている



「お米のお酒って、どんな味なのかしら?」

 玄米茶を飲みながら、ラナ女官長が呟いていた。

 強請るつもりはないが、素直に知らない酒が気になるのである。

「私は飲んだ事はないから味については良く分からないけど、お米から造られたお酒はザックリ言うと、4種類のタイプに分かれているらしいよ?」

 父は出張した時に、小さい酒瓶が何種類も入っている、お試しパックみたいな物を良く買って来た。



 手の平サイズの小瓶で、様々な日本酒の銘柄を飲み比べ出来るのだ。もちろん、ブランデーやウイスキーも、違う産地で色々試せるパックも見つければ買って来たけど。

 大きな酒瓶で買うのは高くて抵抗がある。しかし、その安価な小瓶ならお財布にも優しい。

 それを試飲して、気に入ったら普通の大きいタイプを買えばイイのだ。



 香水も、初めから通常サイズを買うより、お試しの小さいサイズの方がお得だ。安いのはもちろん、その日の気分によって変えられるのがイイ。

 お酒や香水の小瓶は、たまにゲームセンターとかで景品になっていたから、弟とよく取りに行って遊んでた。

 香水の小瓶はオシャレだしインテリアに向いているしで、集めるのはものスゴイ楽しかった。

 弟は取るのが楽しい。莉奈は集めたり見たりするのが楽しい。母は飾ったり飲むのが楽しい。父は飲める事よりお金がなくなるのが悲しい。

 1人だけWin=Winな関係ではないけど、楽しい時間であった。




「4種類?」

 莉奈が思い出に浸っていたら、どことは言わずにワクワクする声が聞こえた。

 皆は飲めるかも分からない新しいお酒に夢中らしい。

「え〜と。確か"薫酒くんしゅ""熟酒じゅくしゅ""爽酒そうしゅ""醇酒じゅんしゅ"の4タイプだったかな?」

 父が以前、どこかで買って来た小さなお酒の小瓶も、そのタイプが入っている飲み比べパックだった様な気がするし、家にあったお酒の本にも、そんな事が書いてあった。



「はぁぁ〜。米の酒にはそんなにタイプがあるのかよ」

「リナは本当に色々と詳しいな」

 リック料理長達は、莉奈のあまりの知識に感嘆していた。

 自分達はお酒は好きでも、そこまで詳しく知らないからだ。いわゆる、ただ飲むのが好きな飲み専である。



「両親がお酒好きってのもあったけど、お母さんが若い頃、居酒屋……じゃなくてカクテルバー? えっと、お酒関係の仕事をしていたから、家に本がいっぱいあったんだよ」

 敷居の高いカクテルバーじゃなくて、居酒屋みたいに入り易いバーだと言っていた気がする。

 カクテルが載った本は、写真付きで綺麗だから、莉奈は小さい頃に絵本代わりに読んでいたと言うから驚きだ。

 特に料理の本は、瞳をキラキラさせヨダレを垂らしながら、見ていたそうだ。

 その話を聞いた時は、自分が食いしん坊過ぎて軽く引いたよ。

 ちなみに、母がそこで働いていたのは2〜3年だか、そのくらいだったと言っていた。

 そこで働いていた理由が、"新作のお酒〈カクテル〉が飲めると思ったから" には驚いたけど。




 ーーで。




 そのカクテルバーに、酒好きの上司に連れられて来たのが父だ。それが、両親の初めての出会いだとか。



 父は接客してくれた母に一目惚れ。それからは、母目当てにカクテルを勉強して、カクテルにもハマってしまった訳だ。

 しかし母は、作るより飲み専だしお客様よりカクテルである。

 その時の母は父より、新作を作って出してくれる店長が気になっていたのだと「内緒よ」と教えてくれた。

 でも、莉奈はそれを聞いて思った。絶対に店長より、彼が作るカクテルが気になっていたんだと思うと。

 花より団子である。



「お酒関係の仕事?」

「酒を造っていたのか?」

 初めて聞いた莉奈の母の話に、リック料理長とラナ女官長が顔を見合わせた。

 家族の事を話したがらない莉奈だったし、それをあえて皆は訊かなかったからだ。

 ツライ事を思い出すのは、誰だって嫌な事である。

 莉奈に家族の事を聞けば、還れない事を思い出すきっかけになるからだ。

 それを逸らさずに、莉奈の方から話してくれたのだ。少しずつ癒されている証拠だと思うと、ラナ女官長は嬉しかった。

 だが逆に、希望が消え諦めてしまったのだと考えると、心が痛む。




「え? あ、違うよ。お酒を造ってたんじゃなくて、えっと……お客さんの前でカクテルを作って出す、お店の店員?」

 さらに詳しくいうと、母はカクテルを作っていた訳じゃなくて、バーテンダーが作るカクテルを提供したり、酒の肴や軽食を作る側、ウェイター兼ホール係だった。



「カクテルの店」

「確かに、これだけの種類があるなら商売は成り立つな」

「あぁ、飲みたいけど、家じゃ作れる種類に限りがあるし」

「俺、カクテルの店を持ちたくなってきた」

「分かる!! 酒好きなんて、そこら中にいるんだし流行るかも!!」

 皆は変な盛り上がりを見せていた。

 カクテルの種類は山程あるし、それを家で作るのは無理だ。

 両親だって、バーカウンターが欲しいと言ってはいたけど、お金が掛かるから我慢していた。

 お酒だって、酒好きの両親への頂き物がほとんどだ。

 自分達が集まる場所を提供してくれる代わりにって、友人達がお酒を置いていくからこそ、色々なお酒を安く楽しめたのだ。




「皆、お酒好きだよねぇ」

 莉奈はしみじみと思った。

 引くくらいに酒好きだからだ。しかも、陽気になる酔い方だから、見ていて楽しい。




「「「俺達の身体は、酒で出来ているからな!!」」」

 二言目にはコレだもの。

 莉奈は呆れてモノが言えなかったのである。












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