↑ページトップへ
表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
聖女じゃなかったので、王宮でのんびりご飯を作ることにしました  作者: 神山 りお


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

338/715

338 あぁァァーっ!!!!



 王竜が強請るリノベーションは、他の竜より簡単で小1時間程で出来た。

 漆黒の布を壁紙みたいにピシッと皺なく貼ると、堅苦しい気がするので、あくまでも皺が適度に残るように貼った。

 星空を眺めたいと言っていたので、天窓は他の竜よりも大きめに、入り口にはカーテンを備え付けた。

 意外と器用だから、必要なら自由に開け閉めするだろう。

 もちろん、枕代わりの台とクッションも用意したよ。

 全部真っ黒ではと思ったので、黒に近いグレーの布を使用してみた。



 藁入りのクッションは侍女達に手伝って貰い、天窓は近衛師団兵にお願いした。

 お礼だと、それぞれに王竜の鱗を手渡したところ、侍女達はいらないと近衛師団に譲っていた。その代わりに何かお菓子を作って欲しいと、莉奈に頼んできた。

 近衛師団兵は、それを兵の財源として倉庫に保管しておくらしい。

 莉奈は万が一の備えとして、アメリアは記念に部屋に飾ると、ものスゴく嬉しそうに笑っていた。

 アンナは……鱗を1枚あげたら、ケラケラ笑いながら街に出て行ったままだけど。





 ーーそんな、すったもんだがあった翌朝。





「リナーーっ!!」

 またしても、ラナ女官長に呼ばれた莉奈は、引き摺られて銀海宮の食堂に来た。

 まだ日も昇っておらず、起きているのは侍女数名、料理人、夜勤の警備兵くらいなものだ。

 とうとう、安眠にも支障が出るとは。莉奈は眠い頭と格闘していた。

 そして、連れて来られた先には、超が付く程ご機嫌の真珠姫の姿があった。

 真珠姫の周りには、なんだか花がたくさん咲いている様に見える。

 その内に、莉奈の住む碧月宮へきげつきゅうに直接顔を出すに違いない。




「遅い目覚めですね。リナ」

「すみません?」

 と謝罪したものの、日が昇っていませんけど? と莉奈は思う。

「部屋を見ました」

「はい」

「天井から掛かるレースと言うモノが、私のように繊細で綺麗です。花を模したリボンなるモノも可愛い。良くやりました」

 自分で繊細とか言っちゃうんだ。

 真珠姫はウットリと満足そうに言うと、ピュルル〜とご機嫌な声を出した。

 人間で言うところの鼻歌に近いのか、ものスゴくご機嫌な時でないとしない行動らしい。



「手伝ってくれた2人にも、伝えておきますね」

 真珠姫から直接の方がと言ったんだけど、名前を聞いても顔が分からないと言うので、莉奈は自分から伝えておくと言った。

 特にアメリアなんて、嬉しくて泣いちゃうだろう。

 まぁ、アンナには何一つ響かないと思う。



「コレは私からの気持ちです」

 そう言って窓から顔を出した真珠姫は、手を差し出し莉奈に何かを手渡した。

「ん? ありがとうございます?」

 貰ったモノはズシリと重かった。




 ーーなんだコレ? 




 色は赤っぽくて、大きさ的にも形的にもラグビーボールのよう。外見はアーモンドみたいなシワがある。

 軽く叩いてみると、表皮はコンコンとものスゴく硬く、何かの種か実の様な感じがした。

「あの?」

 真珠姫、コレは何ですか? と訊こうとしたのだが、すでに空に溶けて行った後だった。



「……」

 説明して〜真珠姫。本っ当に自由だよね、竜ってば。

 莉奈は空笑いが漏れていた。



「何を貰ったの?」

 真珠姫が去り、落ち着いたラナ女官長が歩み寄って来た。

 その種か実はなんなのだと。莉奈の持つモノを不思議そうに見ていた。

「知らない。何コレ?」

「「さぁ?」」

 皆に見せて訊いてみたところ、誰も見た事がない様子だった。

 ならばと、莉奈は【鑑定】をかけて視た。




 【テオブロマ・カカ王】


 神の食べ物とも呼ばれ、主に熱帯地域の森にひっそり生息する、アオギリギリ科の常緑樹の種子。




 ーーは? 神の食べ物!?




 なんだソレはと、莉奈はさらに詳しく鑑定を掛けて視た。





 【テオブロマ・カカ王】


 神の食べ物とも呼ばれ、主に熱帯地域の森に生息する、アオギリギリ科の常緑樹の種子。

 


 〈用途〉


 種子をそのまま粉砕し服用すれば、胃腸薬。

 マナの葉と混ぜ精製するか、ポーションと混ぜると疲労回復剤。

 種子を発酵、焙煎した後、精製し砂糖を加えると甘いお菓子になる。


 〈その他〉

 

 食用である。

 クリオロ、フォラステロ、トリニタニオ等、色々な種があるが、秘境に生るフロバニー種が特に美味。

 



 うっわぁ〜 "甘いお菓子"。




 んん? 甘いお菓子でカカ王?




 カカオウ。




 カカオ……ウ。




「……」

 莉奈は鑑定した途端にゴトンと、その種子を床に落とした。

 カカ王なんてものスゴく偉そうな名称だけど、発酵や焙煎して精製なんて書いてあるし、絶対カカオじゃんコレ。

 なんてモノをくれるんだよ真珠姫。

 恩を仇で返すなんてヒドイよ。



「「リナ?」」

 皆が心配しながらも、眉を寄せていた。

 莉奈が種子らしきモノをガン見した後、硬直して動かなくなったと思えば、今度は半泣きである。

 鑑定したに違いないとは思うが、ソレがなんだったのか。

 莉奈が衝撃を受けるくらいのモノだった、という事しか分からない。




「皆サン、コレハ見ナカッタ事ニ」

 首をギギと動かして、皆に仄暗い笑みを浮かべた。

 こんなモノ、シュゼル皇子に見せる……いや、バレた日には、地獄しかない。皆のためでもあるのだ。

 莉奈はその【テオブロマ・カカ王】をそっと魔法鞄マジックバッグにしまった。

「「ひぃっ!!」」

 ラナ女官長と侍女モニカの、引き攣った声が聞こえた。

 莉奈の表情が、異様に怖かったのだ。

「な、なんなのよ。ソレ」

 ラナ女官長が、怖さより好奇心が勝り、つい訊いてしまった。

「ラナもモニカも皆、地獄を見たくなかったら……ね?」

「な、な、なんだか分からないけど、分かったわ!!」

「「よ、良く分からないけど、分かった!!」」

 莉奈のタダならぬ雰囲気に、皆は圧倒されーー。

 口を噤むと約束したのであった。




 








評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。